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安川ひろしの「F1かく戦へり」

タイヤが一社供給になったことで、クルマやドライバーの競争という面がクローズアップされるようになっただけでなく、FIAの導入した新ルールはレース戦略に深みを与えるものとなった。

安川ひろし「第二十話 F1をサポートするブリヂストンの願い」

安川ひろし (ブリヂストン・モータースポーツ推進室長)

2007年はブリヂストンにとって2度目の単独供給となるシーズンである。1回目は1999年。当時F1を席巻していたグッドイヤーが、我々ブリヂストンが挑戦を開始して僅か3年目に活動を休止したのだ。2年間の単独供給ののち、ブリヂストンにミシュランが挑戦してきた。2001年のことだ。以来6年間に渡って、世界第一位と第二位のタイヤメーカーの激突が、F1グランプリの舞台を借りて繰り広げられた。
ところが、そのミシュランも2006年限りで撤退を発表。残されたブリヂストンは、2007年からF1グランプリへ単独でタイヤを供給することになった。責任は重い。
モータースポーツ推進室を統括する安川ひろしは、ブリヂストン単独供給の初年度である今年のシーズンを、そして数多くのモータースポーツをサポートするブリヂストンの活動をどのように評価したか。序盤3戦を終えた彼に聞いた。(赤井邦彦)

ブリヂストンはヨーロッパやアメリカのオープンホイールレースにタイヤを供給することで、上位カテゴリーをめざす若いドライバーたちへも積極的にサポートを行っていく。

赤井 開幕戦から3レースが終わりました。まず、率直な感想を。

安川 単独供給は大変な面もありますが、引き受けて良かったと思います。というのは、もし、装着するタイヤが無くなってはF1レース自体が成立しなくなってしまいますし、結果としてタイヤが1社のものになりイコールなコンディションとなったことで、クルマの競争、ドライバーの競争がよく見え始めた。これは、ファンにとって素晴らしいことだと思います。それから、レースそのものが面白くなった。我々はふたつのコンパウンドを持ち込んでいるんですが、レースではそのふたつとも使わなければいけないルールをFIAが定め、さらに柔らかいコンパウンドのタイヤの方に印を付けるというアイデアを採用しました。これは、レースを非常に面白くするものだと思います。そのタイヤに付ける印も開幕戦では白い○(ドット)でしたが、第2戦からは溝の一本をペイントで白く塗るようにしました。これで、走っているドライバーがどちらのタイヤを使っているか、観客の皆さんからも明解にわかるんです。

赤井 そうですね。レースに対するチームの考え方や、戦略が分かります。

安川 ええ、ピットインの回数やタイミングで、ドライバーがそのレースをどのように捉えているか分かります。ペイントの付いたタイヤを2回使うと、もう一度ピットインしてペイントの付いていないタイヤ、つまり硬いコンパウンドのタイヤを使わなければいけないということが分かります。

赤井 単独供給になって供給する本数も増えました。スタッフの仕事量もこれまでとは比べものにならないのでは。

安川 これまでは10台だったでしょ。それが今年は22台ですからね。物量も人手も想像を絶する大変さです。例えばスタッフの数も随分増えましたから、飛行機のチケットにしろホテルの部屋にしろ、とにかく多く必要なんです。タイヤの組み付けだって、1800本以上ありますから、大勢のスタッフがかかりっきりになります。

赤井 それにしても、タイヤの溝を白いペイントで塗るアイデアは良いですね。

安川 そうですね。開幕戦のオーストラリアで付けた白い○(ドット)はどうも見えにくかった。あの白い○(ドット)はFIAが決めたんですが、彼らも効果が薄いことを知ったんでしょう。そこで我々に相談があったんですが、観客の皆さんにより分かりやすくしようと白線を提案したんです。


赤井 多くのタイヤを運ばなければいけませんが、フライアウェイ(ヨーロッパ以外で開催されるGP)とコンチネンタル(ヨーロッパで開催されるGP)ではどちらが大変ですか。

安川 それぞれに難しさがありますね。フライアウェイはタイヤは基本的に日本よりサーキットへ直送します。直接レースの行われるサーキットに送り込むんですね。でもコンチネンタルは日本から送られたタイヤを一度イギリスの倉庫に搬入し、そこからトランスポーターで陸路で送り出します。トランスポーターは去年の2倍ほどの数が必要です。純粋に去年ウチが用意した台数にミシュランが用意していた台数を加えたものです。

赤井 本数も重要ですが、質はそれ以上に重要です。

安川 ワンメイク・タイヤだからあまり話題にはならないと思ったんですが、今年はタイヤは絶対に話題になると色んな人が言ってくれます。それはとても素晴らしいことですが、それだけに安全で質の高いタイヤを供給しなければなりません。なにか問題があって話題になるのは嫌ですからね。それに、よく言われるんですが、いまF1のタイヤはブリヂストンしか作れないということです。これは自慢していいことだ、とドイツのテレビ局の人に言われました。それを聞いて、我々はいまやっていることに誇りを持っていいんだ、と思いました。

赤井 ブリヂストンはF1直下のレースであるGP2もサポートしています。

安川 ええ、これもやってよかったと思っています。GP2は若いドライバーを育てるカテゴリーです。現在F1を走っている若手ドライバーにはGP2出身のドライバーがいます。ハミルトン、コバライネン、ロズベルグなどがそうです。中嶋一貴くんもGP2を戦いながらウィリアムズのテストドライバーに抜擢されました。これまでF1ドライバーになるには何をすればいいか曖昧な部分があったと思うんです。それがいまやGP2がF1への道として確固たるポジションを獲得しました。始まって3年ですが、タイヤを供給してきて良かったと思っています。GP2のチームを作りたいという人も多いと聞きました。ますます門戸は開かれていくでしょう。

赤井 ブリヂストンはオープンホイールのレースには積極的にタイヤ供給をしています。

安川 何もかもやる、というわけにはいきません。ですから我々はオープンホイールのレースに限ってサポートしているんですが、ヨーロッパではGP2からF1、アメリカではインディ・ライツ、インディ、チャンプカーとタイヤを供給しています。これは若手ドライバーを育てながら上位カテゴリーに送り込む良いシステムが出来たと思います。

赤井 はやくもっとたくさんの日本人ドライバーが育てばいいですね。

安川 それは我々の希望でもあります。

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