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なるほど!レーシングタイヤ

第13回 CART/IRLの現場から

浜村一之 (ファイアストンCART/IRLテクニカルマネージャー)

浜島さんが率いるモータースポーツタイヤ開発部の現場担当者に各カテゴリーでの苦労話などを伺う「なるほど!レーシングタイヤ」。第2回目は「CART/IRLの現場から」。ファイアストンの米国技術センターで奮闘を続ける浜村さんのお話です。

「ファイアストンのモータースポーツ、というよりアメリカ人はレーシングと呼んでこだわりを示すのですが、その開発部門はオハイオ州北東部のアクロンという小都市にあります。気候は、夏は快適ですが冬は寒く、ここ数日は日中も氷点下で、今は雪に覆われています。
デトロイトが自動車産業で名をとどろかせたように、アクロンはタイヤ産業の町として有名で、ファイアストンの他に、グッドイヤー、BFグッドリッチ、ゼネラルと名だたるタイヤメーカーが隆盛を極めました。しかし現在は、ファイアストンとグッドイヤーが残るのみで、そのファイアストンも本社機能はテネシー州のナッシュビルに移っています。日本のブリヂストンになぞらえば、東京京橋の本社がナッシュビル、小平の技術センターがアクロンといったところです。
アクロンの技術センターは総勢600名ほどで、我々レースタイヤデベロップメントには、私を含め、十数名が在籍しています。ちなみに日本人は私一人です。F−1では小平に開発部隊、イギリスには現場の技術サポート部隊がいるわけですが、こちらではその両方を兼務するかたちとなります。
ここアクロンではCART用に加えて、IRL用、インディライツ用タイヤだけを製造しています。そして、東京小平でもCART、IRL用の一部を製造しています。一方、タイヤ倉庫やトレーラーといった物流関係の設備や人員は、多くのチームがファクトリーを構えるインディアナポリスにあります。

レースシーズンはご多分にもれず大忙しです。アメリカは実に広い!国内でも最大3時間の時差があるので体力もエンジニアの要求性能となります。F−1同様全チームに公平にサービスを行うため、実際現場では私も2,3のチームを受け持って応援します。
私の主な仕事は、アクロンでの開発アドバイザーとして、アクロンで作ったタイヤの性能を見届けることと、小平で作ったタイヤの評価をフィードバックすることです。そして、オール ブリヂストン/ファイアストンとして良いタイヤを供給してブランドイメージ向上に貢献するというのが目標というわけです。そのため、小平の技術センターとは毎日のように情報を交換し相乗効果を挙げようとしています。」


「CARTの特徴は、ストリートコースからスーパースピードまで、コースが実に変化に富んでいるということです。その為、使用するタイヤの種類もおのずと多くなります。
F1でストリートを走るのはモナコだけですが、CARTの場合、ロングビーチをはじめ6戦もあります。そこには、構造もコンパウンドも最もソフトなものを投入します。その他のサーキット、(アメリカ人はトラックと呼んでこだわりますが)例えば富士や鈴鹿のようなコースをロードコースと呼んでいますが、中にはクリーブランドのように空港の滑走路を使ったりF1では考えられない「個性的」なコースもあります。ロードコースはストリートよりも速度が速いため、タイヤもハードにするのです。
そして、アメリカンレーシングといえば「オーバルコース」。これも一周1マイル(約1.6km)ほどのショートオーバルから、もてぎに代表される1.5マイル(約2.4km)のインターミディエイト、2マイル(約3.2km)以上のスーパースピードと今では3つに分類しています。ただただ反時計回りにぐるぐる回って、特にショートオーバルなんて一周20秒位ですから、よく目が回らないものですよね。

オーバルコースを走るための車のセッティングの特徴は、何もしないでいると車が勝手に左に曲がっていくようにするのがポイントです。ですから、ストレートでは曲がらないように、カウンターを当てておき、コーナーに差しかかったらハンドルをまっすぐに戻すという非常識が常識になっていて、タイヤも自然と曲がるためのお手伝いをしています。つまり、内側となる左後輪の直径を外側となる右後輪より10mmほど小さく作っているのです。これをスタガーと呼んでいますが、これぞ効率的思考のアメリカ人の知恵ということでしょうか」

とてもわかりやすい浜村さんのお話。さて次回は、スタガーに関するタイヤのノウハウと素朴な疑問からお話をスタートします。お楽しみに!!

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