第14回 CART/IRLの現場から
浜村一之 (ファイアストンCART/IRLテクニカルマネージャー)
高木虎之介が初めて参加したCARTの合同テストでトップからわずかコンマ2秒落ちという好タイムを記録し、遅れて参加した中野信治選手も1日の走行で同タイムを記録。今年のCARTはこの2人の日本人の活躍でさらに盛り上がるといいなと思っています。「CART/IRLの現場から」の後編は引き続きファイアストンの米国技術センターで奮闘を続ける浜村さんのお話です。
さて、前回お話した旋回外側のタイヤの径を大きくするスタガーですが、これはオーバルコースのマシンがリアにディファレンシャルを持っていないため実に有効なコーナリング手段となります。直進のとき曲がらないようにカウンターを当てながら走るといいましたが、その量はごくわずかで、タイヤが偏磨耗を起こす心配はありません。それどころかオーバルでは非常に磨耗量が少ないのが特徴となっています。ただし、外側となる右側のタイヤに常時大きな荷重がかかるので、構造、コンパウンドを硬くし、さらに使用空気圧も高く設定しています。オーバルが、インターミディエイト、スーパースピードと高速になるにつれ、さらにハード側にシフトしていきます。去年のスーパースピードでは、とうとう平均速度が388.5kmに到達してしまいました。レースを見ているというよりタイヤが高速試験で試されるのを見ているようです。非常に胃に良くないですね(笑)。またスタガーは、よりアメリカンなIRLのほうがCARTより大きな差を好む傾向があり、チームやドライバーの嗜好も影響することをご存知でしたでしょうか?
その他に、タイヤに関するセッティングではキャンバーの向きが特徴的です。ロードコース等では左右ともネガティブになっていて、マシンの前や後ろから見ると左右のタイヤがちょうど「ハ」の字のように見えます。しかし、オーバルでは、内側になる左がポジティブになり、結果として「左右とも内側」に傾いていることになります。オートバイで左に曲がるときに車体を左に傾けるのと同じイメージです。
以上のように、CARTはひとつのカテゴリーの中にいくつものカテゴリーがあるようなものなので、そのどれも満足させるというところが、難しさであり、また面白さでもあるといえます。先週のレースがオーバルコースで今週がロードコースなどというときは頭が混乱しそうになります、正直なところ。
ところで「難しい」こととしては、日本人とアメリカ人の共同作業というところにもあります。おやっ!?と思うようなところで考え方が食い違ったりすることがあります。たとえば、マージンに関する考え方。日本人は何かとマージンを取ろうと考える一方、アメリカ人はゼロはゼロとして割り切ってしまう。磨耗であれば、100kmの寿命が必要なところで、100kmちょうどで磨り減ったとすると、日本人ならそれに少し余裕を持たそうと考えがちですが、アメリカ人の場合100kmもったからよし、と。
また、個人の担当と責任がはっきりしているアメリカ人からするとそれらの境界があいまいな日本人は理解しにくいようです。どこが言っているというのではなく、誰が言っているのかという感覚です。
CART/IRLはファイアストンブランドとしてのプログラムですが、ブリヂストンのプログラムでもあるわけです。私としては日本、アメリカ双方のエンジニアのベクトルを合わせるために、客観的に判断して時には日本人の、また時にはアメリカ人の主張を取り上げる必要があります。それぞれの長所がまた短所にもなっていたりして、文化人類学を勉強しているようです。
もうひとつ、CART/IRL独特のタイヤに関する面白いウラ話があるのでまた次回お話します。お楽しみに!