モータースポーツタイヤ情報

カート

国内では全日本選手権で使用できるCIK公認のハイグリップタイヤ。2005年から3年にわたって使用されてきたハイグリップタイヤのラインナップが、このたび大きな進化を遂げました。モータースポーツの原点ともいうべきカートのタイヤ開発に込めた想いと、設計のポイントを、開発担当エンジニアの野口洋司が語ります。

―ドライタイヤ YKA・YKB・YKCの開発について

3年ごとに見直されるCIK公認タイヤのホモロゲーションが改定されるにあたり、明確な目標として掲げたのはまず「コンパウンドの改良によるグリップの向上」です。その上で、そのグリップを活かしきるために形状と構造をバランスさせていく、という方法で開発を行っていきました。
具体的にはリアのケース剛性の適正化と新形状によりコーナリング時の接地性を向上。タイヤの変形を抑え、トラクションを確実に伝達するものとしました。
フロントタイヤは、ステアリング切り始めの応答性を高めることでコーナー進入時のレスポンスを高めています。
もちろん、耐摩耗性はレース後半にタレてしまうことのないよう、これまで以上のものを確保。トータルのバランスとしてワンステップ向上したタイヤに仕上げています。

―ウェットタイヤ YKPの開発について

今回は主にコンパウンドの特性をブラッシュアップすることで、性能の向上を図りました。ドライタイヤのテスト時にたまたま降り出した雨を利用したり、コースに散水をして走行したりと、さまざまな路面状況でのテストを行っています。ウェットタイヤの性能というのは、特に「比較」を行わないと本来の性能が見えてこないのです。
フルウェットの状態ですばらしくグリップが良くても、ダンプ路面(半分乾いた路面)ですぐすり減ってしまうのではレースで使うことはできません。テストドライバーやスタッフの協力を得て、何度も走り込みを行うことで、幅広い適応性を持ったタイヤをつくりだすことができました。

―テスト時のエピソード

グリップの向上やレスポンスの向上はもちろん大切ですが、それが安定して発揮されなくてはブリヂストンの製品として送り出すことはできませんから、ロングランのテストも幾度となく行っています。
テストドライバーの方には体力をつけてもらうよう、お願いしました(笑)。
技術陣は自分で走って確かめる、ということがなかなかできませんし、室内で検証できることというのは限られていますから、テストドライバーの方の協力が絶対に欠かせません。結果を見て現状を把握し、仮説を立て、検証する。テストドライバーからのフィードバックを、次なるスペックに反映させる。その繰り返しですね。いいタイヤを開発するには、こうしたコミュニケーションが欠かせないのです。

―カートタイヤ開発にかける想い

今回のタイヤには、F1やSUPER GTなど、他のカテゴリーからの技術もフィードバックされています。F1はワンメイクになってしまいましたが、その中でも世界最高峰のレース用タイヤとして技術の開発は常に行われていますし、SUPER GTのような激しいコンペティションの中からもフィードバックできるものがたくさんあります。逆に、過去には、カートタイヤで実績のある技術をF1タイヤに投入したり、ということもありました。モータースポーツの原点であるカートタイヤと世界最高峰のF1の技術を共有することができるのはブリヂストンならではの強みですし、本当にいいものは、カテゴリーの垣根を超えて採用していきます。それが、我々のタイヤ開発にかける想いです。

GP2からF1へとステップアップし、デビューシーズンからF1のチャンピオン争いを席巻したルイス・ハミルトン選手も、過去にはブリヂストンタイヤでカートのレースを戦っていました。私がカートタイヤの開発に携わることになったのはかれこれ10年近く前ですが、ロバート・クビサ選手やニコ・ロズベルグ選手らとタイヤテストを行ったこともありました。それから時間が流れて、モータースポーツの第一線で活躍する選手たちの姿を見ることができるのは非常に楽しいことですし、なによりも彼らのステップアップをサポートできているのだと、誇らしく思います。
これからも、モータースポーツの原点であるレーシングカートを楽しむドライバー、ステップアップを目指すドライバーたちを、足もとからしっかりと支えていきたいですね。