【2021年全日本モトクロス選手権 Rd.3 関東大会 IA1クラス】山本鯨が今季初優勝＆両ヒート制覇で、シリーズタイトル防衛に逆襲の狼煙を上げる！

第2戦中国大会が新型コロナウイルスの感染拡大による影響で延期され、これが実質的には今季2戦目となった全日本モトクロス選手権シリーズ第3戦関東大会。IA1クラスは、開幕戦で#1山本鯨（Honda,BS）が接触転倒やマシントラブルといったアクシデントに見舞われ、総合5位と出遅れた。さらに山本は、ヒート1で他車に接触された際に左手中指を骨折。この影響が心配される状況での参戦となった。
大会の舞台は、荒川と入間川に挟まれた河川敷のフラットな土地に設けられた、埼玉県のウエストポイント オフロードヴィレッジ。これまでも、タイトターンとジャンプが多くてコース幅が狭いスーパークロス風のレイアウトを特徴としてきたが、今大会では仕様変更により昨年よりさらにその傾向が強くなった。飛び出し側の角度が急で速度を落とさせることが目的と思われるジャンプも多く、これがさらに混戦を生む“役者”となった。

乾くと非常に固く締まることでも知られる“オフビ”の路面だが、事前段階でかなり入念に耕しながら水が含ませてあり、土曜日朝の段階ではベストな状態。しかも土日とも曇り空で、決勝日には時々雨が降ったこともあり乾きが抑えられ、最後までほとんどホコリが発生しない良好なコンディションがキープされた。
なお決勝日は、午後になって薄日が差したかと思ったら再び雨粒が落ちてくるなど、変わりやすい天候。最高気温は20～21度程度だった。

■決勝ヒート1
ホールショットを奪ったのは#1山本鯨（Honda,BS）。オープニングラップをトップでクリアすると、2番手の安原志（Kawasaki,DL）が後続を抑えている間にどんどんリードを拡大していった。そして3周目までに、早くも約9秒のアドバンテージを獲得した。4周目、2番手のポジションには地元大会に燃える#8星野優位（Yamaha,BS）が浮上。しかし、山本はこの星野に対しても互角あるいは1周につき1秒程度速く、トップと2番手の距離はさらに拡大していった。また星野は、6周目に富田俊樹（Yamaha,DL）の先行を許して3番手に後退した。
すでに10秒以上のリードを確保していた山本は、その後に富田が1周で最大1秒程度詰めてきても、焦ることなくレースをコントロール。レースが後半に入った11周目以降は、再び山本が少し差を広げる周回もあり、序盤の大量リードをうまく使った山本が20周のレースでトップチェッカーを受けた。レース終盤、一時は3番手単独走行だった星野は小方誠（Honda,DL）の接近を受け、その猛攻をかわし続けていたが、ゴールまで残りわずかというところで転倒。すぐに再スタートできたが、星野は4位となり惜しくも表彰台登壇を逃した。

■決勝ヒート2
前日の予選レースから鋭いスタートを決め続けてきた#1山本鯨（Honda,BS）は、このヒートでもホールショット。オープニングラップをトップでクリアすると、2周目には約1.5秒のリードを奪った。しかし3周目にはトップの山本、2番手の渡辺祐介（Yamaha,DL）、3番手の小方誠（Honda,DL）がそれぞれ約1秒間隔に。しばらく膠着状態が続いたが、6周目あたりから山本と渡辺の距離が縮まり、僅差のトップ争いが勃発した。さらに、小方も僅差で続いたが、こちらは9周目にミスで少し後退。富田俊樹（Yamaha,DL）が3番手に浮上した。
山本は、渡辺の猛攻を受けながらもトップを死守。するとレース後半、一時は3秒ほど差があった渡辺と富田の距離が縮まりはじめた。14周目、池本凌汰（KTM,DL）がジャンプで転倒し、この影響で上位勢がスローダウンを強いられたことで、上位4台の距離は完全に縮まった。17周目に富田はミスで集団から脱落したが、山本と渡辺と小方は最後まで接戦。しかし山本はラストラップとなった20周目まで完璧にポジションを守り抜いた。そして山本がヒート1に続いて優勝。これにより、ポイントランキングでも渡辺と1点差のトップに浮上した。

●山本鯨（決勝ヒート1／優勝、ヒート2／優勝）
「スタート練習は、ヨーロッパを走っていた時代からいつも積極的に取り組んでいます。このコースはいつも以上にスタートが重要となりますが、練習の成果がカタチになったと思います。開幕戦が非常に悔しいレースとなり、なおかつケガを負うという状況だったので、チームとして自分を支えてくれている大勢の方々の支えがなければ、この勝利はなかったと感謝しています。ヒート2は、昼休みにコース整備が入ったことで選手間のラップタイム差がなくなり、後続を引き離せずにいましたが、冷静に走れたと思います。タイヤはソフト路面用を選択しました。事前に入念なコース整備が施され、金曜日の段階で路面はかなり柔らかい状態。とはいえ、埼玉県出身でこのコースをよく知っているので、晴れたらあっという間にハードパック化することもあると注意していました。結果的には、曇りで涼しかったことからそのような状況にはならず、タイヤ選択に悩むことはありませんでした」