【2021年全日本モトクロス選手権 Rd.2 中国大会 IA1クラス】山本鯨が劇的な展開でチャンピオンを獲得！ブリヂストンのJMX今季全クラス制覇を確定！

第5戦近畿大会の中止により、全6戦のシリーズとなった今季の全日本モトクロス選手権。その最終戦は、本来なら5月上旬に開催予定だった第2戦中国大会となった。会場は、広島県南東部の山中にある世羅グリーンパーク弘楽園。アップ＆ダウンに富むダイナミックなコースとして知られる。
本来の予定から半年以上も延期されたが、コースは春先だけでなく今大会の前にも土砂を搬入しながら入念な整備が実施されていて、約2年半ぶりの全日本を美しく迎えた。基本のレイアウトは2019年と同じだが、各所に配されたジャンプなどの仕様は変更。名物のラムソンジャンプは、スタート直後の1周目のみ回避する設定とされた。
乾いて締まるとかなりハードパックになる弘楽園だが、各クラスの予選が実施された土曜日に小雨が時々降ったことや、日曜日の早朝に気温が氷点下まで下がって霜が降りたことで、土曜日と日曜日午前中は土が適度に水分を含んだ状態。ただし、日差しと乾いた空気により、日曜日午後は土ボコリが多く発生するほどまで土が乾いた。
今大会に向けてブリヂストンは、IA1およびIA2のランキング上位選手に対して、来年2月発売予定となっている新しいミディアムタイヤのBATTLECROSS X31を、路面状況に応じて先行投入できるよう準備。実際のレースは、予想よりも路面が柔らかめの状態が長く保たれ、基本的にはソフトタイヤのX20を選択するのがふさわしい環境だったが、路面がハード傾向になった日曜日午後には、何名かのライダーがX31を履いてレースに臨んだ。全日本最高峰クラスのIA1は、25分＋1周の2ヒート制。ディフェンディングチャンピオンの#1山本鯨（Honda,BS）は、わずか1点のリードながらポイントリーダーとしてこの最終戦を迎えた。

■決勝ヒート1
#1山本鯨（Honda,BS）がホールショット。富田俊樹（Yamaha,DL）と渡辺祐介（Yamaha,DL）と能塚智寛（Kawasaki,DL）が続くと、レース序盤からこの4台が後続を大きく引き離して、トップグループを形成した。4台の間隔は周回ごとに変化したが、レース中盤まではそれぞれ1～3秒の範囲内。しかし10周目、なおもトップを守っていた山本は、チャンピオンを争う最大のライバルである富田に1秒以内の僅差に迫られて、大きなピンチを迎えた。
それでも一度は富田を離した山本だったが、ラスト3周となった13周目に再び接近を許した。この周、山本と富田の後ろでは能塚が渡辺を抜き、渡辺がやや遅れる一方で能塚は富田に接近。ラスト2周は、山本と富田と能塚による三つ巴の優勝争いが繰り広げられた。そして最終ラップに突入する直前で、山本は2番手後退。しかし最終ラップの前半で、山本が抜き返した。そして最後は、富田をパスした能塚が山本に肉迫。これをわずか0.11秒差で抑え、山本が勝利を収めた。

■決勝ヒート2
年間タイトルを争う#1山本鯨（Honda,BS）と富田俊樹（Yamaha,DL）がスタート直後から激しいトップ争いを繰り広げ、コーナー立ち上がりで富田が山本にアタック。これで山本が転倒を喫した。富田がトップに立った一方で、山本は21番手。富田優勝の場合、山本が王者になる条件は3位以内入賞だった。山本は2周目に12番手、3周目には8番手、4周目には5番手まで浮上。驚異的な追い上げを見せたが、4周目の段階で3番手の能塚智寛（Kawasaki,DL）とは約10秒差だった。
山本は7周目に4番手まで浮上したが、3番手に後退した渡辺祐介（Yamaha,DL）とは約7秒のギャップ。その後、両者の間隔は大きく詰まることなく、山本のタイトル獲得は絶望的な状況だった。ところがラスト3周となった13周目、能塚が富田をパスしてトップに。これで山本のチャンピオン獲得条件は6位以内となった。そしてレースは能塚がそのまま勝利。4位でゴールした山本がタイトル獲得を決めた。
これによりブリヂストンは、今季の全日本モトクロス選手権で全クラス制覇を達成した。

●山本鯨（決勝ヒート1／3位、ヒート2／4位）
「多くの方々に支えられながら1年間を戦い抜いて、何度も噛みしめたくなるような味わい深いシーズンになりました。自分の中で、今季限りでの引退を決意したのは4月ごろ。そこからは自分自身でも鞭を打ったし、いろんな人に鞭を打ってもらい、多くの方々に協力していただきながらみんなで一緒にモチベーションを高めて、チャンピオンに向けて戦ってきました。26年間のレース人生はとても幸せでしたが、その中でもこれまでにない以上、本当に最高のシーズンでした。人生のベストレースを挙げるなら、この最終戦のヒート2。最後まで絶対に諦めないことだけを誓い、自分の力をすべて出すことだけを考えて走ったレースでした。今回、ブリヂストンには新しいミディアムタイヤのBATTLECROSS X31も準備してもらっていましたが、直前に散水される可能性も否定できなかったので、ソフト路面用のX20をチョイス。自分と周りの方々を信じて走り、最後にこういうレースをさせてもらえたことが本当に幸せです。これまでのレース人生を支えてきてくださったすべての方々に感謝しています。ありがとうございました！」