【2024年全日本モトクロス選手権 Rd.3 HSR九州大会 IA2クラス】厳しいマディコンディションを制して、横澤拓夢が両ヒート優勝を達成！

全日本モトクロス選手権シリーズ第3戦は、熊本県のHSR九州で日曜日のワンデースケジュールにより開催された。当初予定されていた5月の第3戦中国大会が中止となり、その代替措置としてHSR九州大会を土日ダブルヘッダーに変更。前日の土曜日には、この第3戦と同じフォーマットで第2戦が開催され、今大会には全員が4スト250ccマシンでエントリーしたIA2クラスは、どちらの大会も公式練習を兼ねた15分のタイムアタック予選、30分＋1周の決勝ヒート1、15分＋1周の決勝ヒート2が実施された。舞台となったHSR九州は、ホンダの熊本製作所に隣接した複合モータースポーツ＆研修施設で、そのモトクロスコースは阿蘇の外輪山を望むフラットな土地に設けられている。広いコース幅と超ハイスピードレイアウトを特徴としてきたが、2022年の改修によりテクニカル区間が増加。今大会も基本レイアウトは踏襲されたが、全体としてはコース幅が狭くなり、コーナーはフラットにセッティングされた。本来の土質は阿蘇の噴火に由来する黒土だが、近年は山砂を搬入しながらメンテナンス。ただし今大会は、サンド質が目立つ区間はほぼなかった。土曜日の第2戦は、午後から降雨があったものの路面状況はそれほど悪くならず、スリッピーながら最後までドライに近いコンディション。しかし日曜日の第3戦は、タイムアタック予選の終了後あたりから強い雨が降り、その後に強烈な雨量となったことから、一気にマディコンディションと化した。とくに午後のレースは、深いワダチと水たまりが各所に発生し、最後はエンデューロレース状態だった。

■決勝ヒート1
ホールショットを奪ったのは#5 池田凌（Kawasaki,BS）。これに#2 横澤拓夢（Honda,BS）と#13 阿久根芳仁（Kawasaki,BS）が続くと、まずは横澤がトップに立った。阿久根はやや順位を落とし、代わって#6 柳瀬大河（Honda,BS）が5番手。レース序盤、横澤と池田は僅差のトップ争いを展開。しかし池田は4周目に転倒して3番手に後退し、これで横澤は2番手に浮上した鴨田翔（Kawasaki,DL）に対して約8秒のリードを得た。レース中盤、鴨田の後方には池田と5周目に浅井亮太（Yamaha,DL）をパスした柳瀬が迫り、三つ巴の2番手争い。阿久根は単独の7番手走行となった。3番手の池田は鴨田に僅差で迫ったが、9周目からややペースダウン。11周目に柳瀬が逆転した。レース終盤、トップの横澤は鴨田にやや接近されたが、4秒以内には寄せつけず快走。そのまま14周のレースを逃げ切り、横澤が勝利を収めた。池田を振り切った柳瀬が3位、池田が4位。田中淳也（Yamaha,DL）の後退で阿久根が6位となった。

■決勝ヒート2
#2 横澤拓夢（Honda,BS）がスタート直後に4番手。これに続くかと思われた#6 柳瀬大河（Honda,BS）は、1コーナーの進入で転倒して負傷し、そのままリタイアとなった。横澤は、すぐに2番手までポジションアップ。コース前半のタイトターンには、深いワダチのスタックポイントが発生しており、ここで10台以上が遅れた。横澤はオープニングラップを2番手でクリアすると、2周目には佐々木麗（Kawasaki,DL）を抜いてトップに浮上した。#5 池田凌（Kawasaki,BS）は1周目を7番手でクリアすると、2周目には6番手。3周目にも上位勢でスタックが相次ぎ、これで池田はトップの横澤と約5秒差の2番手まで上がった。しかし池田は4周目にミスして10番手後退。これで2番手に浮上した田中淳也（Yamaha,DL）に対し、横澤は約8秒のリードとなった。すると翌周には、横澤が田中よりも約10秒速いラップタイムを記録。これで一気にアドバンテージを拡大した横澤が、7周のレースで勝利を収めた。#12 渡辺陵（Yamaha,BS）が粘り強く走って6位となった。

●横澤拓夢（決勝ヒート1／優勝、ヒート2／優勝）
「開幕戦のタイムアタック予選で転倒したときに痛めた肩の状態が悪く、この第2戦と第3戦が実施されるまでの間、一度も練習することができませんでした。ドライコンディションだった土曜日の第2戦は、ヒート1が5位でヒート2が4位。練習しなくても意外と乗れるものだと驚いた反面、なんとか乗り切らなくてはいけない局面で表彰台に立つことができず、悔しく感じていました。とはいえ日曜日はマディになりそうな天気予報だったので、チャンスはあると思っていました。これは自分にとっては恵みの雨。レーススピードが落ち、事前に予想していたとおりカラダへの負担は大きく減りました。加えて、どちらのヒートもスタートが決まったことで、優勝が狙える展開に。後ろからのプレッシャーも感じていなかったわけではないですが、こういうレースは自分との闘いですから、勝ち切って強さを見せることに全力を注ぎました。タイヤは、フロントは軟質路面用のBATTLECROSS X20、リアはマッド用のBATTLECROSS X10を選択。固い路面のセクションも多く、前日の段階では前後X20も想定していたのですが、予想以上の雨量でシャバシャバになったし、泥が重たい場所もあったので。それにX10は、固い路面も意外とグリップしてくれます。決勝レースも、このタイヤだからといってとくにラインを合わせることなく、路面状況のことだけ考えて走れました」