今シーズンも勢力争いに変動なしか! 今回もまた、KEI NAKAMURAが完全勝利のポールtoウイン!
- 開催場所:十勝インターナショナルスピードウェイ クラブコース
- 開催日:2024年05月19日(日) 〜 2024年05月19日(日)
~FR好き諸君、今一度レースフィールドへ!~
今を去ること160年近い昔、1885年から1886年にかけてカール・ベンツやオットー・ダイムラーが世界初のガソリンエンジン自動車を発表したが、それらはエンジンをリアに搭載してそのままチェーンで後輪を駆動する、いわば馬車にエンジンを括り付けたような代物だった。
この未完だった自動車の原型を、現代に通じるクルマに仕立て上げたのはフランスのパナール社だろう。彼らが18991年に発表したクルマは、フロントにガソリンエンジンを搭載し、そこからクラッチ、ミッション、デフを通じて後輪を駆動するというFR車であった。このパナール・ルヴァソールと名付けられたクルマこそが現在にも通じるFR車の初代だったといえるだろう。
つまりFR車こそがクルマの基本形だったのであり、それはレース車両にも踏襲されてきた。近代日本で言えば、KPGC型スカイラインGTRやKB110型サニーGXがその代表であり、続いて登場したのがトヨタのKP61スターレットと、名車の誉れ高いAE86レビン&トレノだった。それらFRの“名車”がアマチュアモーターレース界を支えてきたのである。
そして時代は変わり、トヨタの長年の関係団体に対する交渉が実り、ナンバー付車両によるレースが開催されことになったのは世紀が変わる2000年のことだった。当初はFF車であるヴィッツを当該車両としていたが、トヨタから2シーターFRスポーツとして86、姉妹車としてスバルからBRZが発売されたことから、それを使ったトヨタ系ナンバー付車両レースの最上級クラスとして2013年に「TGR86/BRZ Race」がスタートを切るのである。
クルマの楽しみ方は様々だろうが、その最高峰はモーターレーシングであろう。その車両がFR車なら、その楽しさが倍加することは言うまでもあるまい。十勝でのTS-86/BRZレースは旧型ZN6&ZC6型に限定され、使用タイヤはブリヂストンのPOTENZA RE-71RSに統一されている。
使う“道具”が同一ならば、勝敗を分けるのは時の運と自身のドライビングテクニックだけであり、誰にでもチャンスはあるのだ。世に多数存在するはずのFR好きの諸兄、ぜひこのレースへの参戦をお勧めしたい。クルマ生活が一変するのは確実なのだから。
~また新たな参戦者が登場!!~
参戦者が固定化しつつあるようなTS-86/BRZレースなのだが、この開幕戦のエントリーリストには見慣れないドライバー名があった。それが#79番の内田朋宏選手である。ほとんどモータースポーツ経験のないまま直前にA級ライセンスを取得し、このレースが完全なデビュー戦なのだそう。
その内田選手、「私は58歳になるんですが、定年も近づいたこの年齢になって、『人生、やり残したことはないか・・・悔いの残らない人生だったか・・』と考えるようになったんですよ。とにかく好きなことをやってみたいと思って出した結論が自動車レース参戦でした。」と言う。幸いにして、数多くのレース車両のメンテナンスを担ってきたステップ・エンジニアリング代表の水田貴之氏と知り合うことができ、程度の良い86レース使用車も手に入ったことで、望みだったレース参戦にこぎつけたのである。
確かにこのクラスの参戦ドライバーの年齢層は高いのは事実。それはFF車が主流となり、若いドライバーにはFR車に乗るチャンスが少なくなってしまったという国内事情もあろう。だからこそ、このTS-86/BRZクラスの存在意義があるのだ。
このクラスでは連戦連勝の絶対的存在であるNAKAMURA選手も、「僕のFR車の乗り方や、レースでのコントロールを公開しようと思います。なんでも聞きに来てください、すべて教えますよ。特に指定タイヤであるBSのRE-71RSは公道でも使えるコストパフォーマンスの高いタイヤですが、だからこそレースでの使い方には工夫が必要です。それらを知ってもらうことでレースのレベルが上がってくれればいいと思っています」と語ってくれた。
高性能FR車になじみのない若いドライバーにはベテランのアドバイスは有効だろうし、FR車の乗り味を忘れていない中年以上のドライバーにも“レースをの楽しさ”を高めるに大切だろう。このクラスをどう盛り上げてゆくか、関係者の努力はこの先も続くだろうし、その成果に期待したいものだ。
~またもNAKAMURA選手が連勝記録を更新!~
汗ばむほどの好天に恵まれた開幕戦、予選開始の頃には路面温度も上昇気味だった。このコンディションから早めのアタックとしたのはKEI NAKAMURA選手。コースインした後、1周でタイヤ温度の上昇を確認してトップタイムをマークする。長年ジムカーナで活躍し、ここ十勝でのサーキットアタックでも好成績を残している小野寺俊選手、一発集中のアタックは得意としているのだが、NAKAMURA選手にコンマ2秒弱の遅れで2番手。「ジムカーナやってましたからね、クラッチミートからの加速には自信があります。2番手グリッドはイン側ですからね、それもラッキだと思いますよ、スタートを楽しみにしてください!」と小野寺選手。
そして決勝、その言葉通り小野寺選手は、コースイン側を一直線に加速し、アウト側から並びかけるNAKAMURA選手の機先を制して見事にホールショットを奪う。ただ、その勢いもそこまで。2コーナーから3コーナーをクリアする頃には、やはりNAKAMURA選手がトップに立っていたのである。
2周目、3周目と上位2台の接近バトルは続いたのだが、それ以降はNAKAMURA選手が徐々にリードを広げてゆき、これまで同様の独走ウインとなる。
チェッカー後、「スタートで先行されるのは想定内でしたから、抜き返してからは普通に走れました」というNAKAMURA選手に、小野寺選手が「約束が違うよ、もう少し俺にも華持たせてくれると思ったのに・・」のクレーム!?に場内爆笑。これまたいつもの光景だったし、デビュー戦だった内田選手も予選タイムを上回るベストラップをマークして見事に完走を果たした。
決勝
- 開催日:2024/05/19
- 天候:Fine
- 路面:Dry
- 決勝出走:5
- 完走:5
- (3.587km x 10laps = 35.865km)
順位 | No | ドライバー | タイヤ | チーム | マシン | シャシー | エンジン | 周回数 | Delay(Lap) | ベストタイム | ベストラップ | タイム |
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1 | 32 | KEI NAKANURA | BS | DICE・ASH・アクレ・86 | 10 | 16:43.691 | ||||||
2 | 34 | 小野寺 俊 | BS | シンシア★SYSTEM-R★86 | 10 | 16:46.780 | ||||||
3 | 360 | 三浦 稔呂 | BS | 三浦としなが歯科クリニック・86 | 10 | 17:03.960 | ||||||
4 | 17 | 陰能 裕一 | BS | ステップ昭和トラックZN6・86 | 10 | 17:05.273 | ||||||
5 | 79 | 内田 朋宏 | BS | STEP with TVC86 | 10 | 17:38.771 |