みなさん、こんにちは!ブリヂストンの山田宏です。
今回は目前に迫ったルマン24時間レースの見所についてお話をしましょう。

ルマン24時間は、鈴鹿8耐と同じく1987年に第1回が開催され、今年40周年を迎えます。

前回EWCの歴史をお話ししましたが、耐久レースの発祥がフランスのためか、現在でもフランスのルマンとボルドールのレースは非常に人気があります。
ちなみに、ルマンはパリから東南約200kmの所にある町です。

1. コースについて

ルマン24時間レースというと、4輪のレースの方が有名ですね。4輪のルマン24時間では、グランプリコースと一般道を使って1周13.6kmという長いコースを使いますが、 EWCでは1周4.185kmのグランプリコースを使用します。

このコースは、MotoGP™でも長年使っているので、我々にとってはEWCの中では鈴鹿に次いで最も良く知っているコースです。

1周4.185kmのコースは、左4、右10ヶ所のコーナーからなり、メインストレートは450mとグランプリコースの中でも最も短い直線と言えます。

中低速コーナーがメインで、1周の平均速度もMotoGP™で160km/hと、MotoGP™開催コースの中では低い方です。(EWCのレコードタイムでは平均156.2km/hです。)
短いストレートの後、右の高速コーナーがあり、その後すぐにシケインがあります。

その後は5、6の右コーナー、左の7コーナー、右の8コーナーとヘアピン状のコーナーが続きます。短いバックストレートの後、S字コーナーがあり、その後も右の11コーナー、左の12コーナーを経て、最終複合コーナーに戻ってきます。

コーナーのカント(路面の傾斜)が少ない所が多く、滑りやすい路面と相まって特にウェット路面では非常に転倒が多いコースです。

ただし路面は今年改修され、3月28-29日の事前合同テストでは、新路面はグリップが上がりラップタイムも速くなりました。
ただ、タイヤの摩耗はやや厳しくなったようなので、この辺りが24時間レースにどう影響を与えるかが気になる所です。

2. タイムスケジュール

前回の「EWCとは?」で書きましたが、4/14金曜日と4/15土曜日に予選が1回ずつあり、土曜15:00にスタートして、4/16日曜日15:00にゴールです。
日本との時差は8時間なので、日本時間では23時がスタート/ゴールです。

ルマンのレースは、今の所テレビ放送では見られないのですが、FIM EWC公式ホームページでライブタイミング(順位とラップタイムが分かります)はご覧になれますのでぜひチェックしてみて下さい。

http://www.fimewc.com/live-timing/

3. 予選の見所

MotoGP™では5月の中旬に開催される事が多かったのですが、EWCは4月の中旬開催。
さらに天候が読めない所です。昨年は開催が1週間早かったのですが、週末の気温は非常に低くなりました。

予選は各ライダー金曜日に1回、土曜日に1回ですが、このように天候がどうなるかわからないので、まず金曜日の予選はタイムアタックをする必要があります。
また通常であれば予選から使用タイヤの本数制限が始まるのですが、レギュレーションによって「新サーキットか路面が全面改修された場合は、タイヤ本数制限は適用しない」となっています。したがって今年はタイヤ本数制限がない事になります。

通常は予選でも新品タイヤの使用は、1回の予選で1セットに抑えると思いますが、今回は何度かアタックする事になるでしょう。路面のグリップが良くなっている事もあり、予選タイムは昨年より大幅に速くなる事が予想されます。

3/28-29ルマンでの合同テストでトップタイムを出したYART 野左根選手の走り

3/28-29ルマンでの合同テストでトップタイムを出したYART 野左根選手の走り

4. 決勝の見所

決勝は予選以上に天候の状況で難しさが左右されるでしょう。
昨年のレースでは、スタート時は気温11℃・ウェットというコンディションでした。
3時間過ぎくらいから路面は乾いたのですが、夜になって気温が10℃以下に低下し、明方には気温4℃、路面3℃と真冬のような寒さになりました。

現在の週間天気予報では、スタートとなる土曜日は降水確率20%となっています。
気温は最低5℃、最高18℃という所で夜中はかなり寒くなるでしょう。

気温が低くてウェット、しかも夜となると本当に難しいコンディションとなり、転倒のリスクが増大します。耐久レースでは、とにかく転倒やトラブルを避けなければならないので、このようなコンディションはライダーにとっては辛いでしょう。

ルマンのグリッドは60台の出走となります。鈴鹿8耐は68台が決勝に臨むのですが、鈴鹿のコースは1周5.8kmあるので、全員がコースに出るとコース上の密度はルマンの方が多くなります。

しかも、ルマンはストレートが短いので、遅いマシンを抜くのはリスクが大きいでしょう。欧州は日が長いと言っても、3分の1以上は暗闇での走行となり、夜間走行でリスクを増やさずにタイムを落とさないかがポイントとなるでしょう。(24時間レースのポイントですね)

昨年は上記のように、スタート時にウェット路面だった事もあり、優勝チームの周回数は819周だったのですが、2015年は833周でした。(何と走行距離は3,486kmです!)
今年、雨が降らなければ、2015年の833周は超えてくるものと思われます。

レースに先立って行われた2日間の事前合同テストでトップに立ったのは、我々が今年からサポートするYARTチームでした!(TSRはテストに参加していません)

YARTチームとは2月末に1度テストを行ったのですが、実質初めて使う我々のタイヤで、主力チームが殆ど参加した合同テストでトップタイムをマークするとは、マシン、チーム、ライダーのポテンシャルの高さが伺えます。タイヤへの評価も非常に良かったので、レースが楽しみです。

もちろん耐久レース、まして24時間は何が起こるか分かりません。

24時間の長丁場を、トラブルやアクシデントを回避しながら、チーム一丸となって戦う伝統ルマン24時間レースにご期待下さい。

2016年3位に入ったF.C.C. TSR Hondaの夜間ピット作業

2016年3位に入ったF.C.C. TSR Hondaの夜間ピット作業