【第106回 INDY500】ついに今週末、決勝! 3度目の栄冠に挑む佐藤琢磨選手に期待!

 モータースポーツの世界三大レースと言われるのがF1モナコGP、ルマン24時間レース、そして、アメリカのインディアナポリス500マイルレース。その中でも第1回開催が1911年と最も歴史が古いのがインディアナポリス500マイルレース、通称インディ500だ。1周2.5マイルのハイスピードオーバル(楕円形)コースを200周して争われる。今年は第106回目の大会が行われており、現地時間5月29日が決勝レースの予定だ。
 インディ500の場合、プラクティスから予選、決勝まで2週間かける長いスケジュールで行われ、今年は5月17日からプラクティスが開始されている。

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 今年もインディ500にはデイル・コイン・レーシング ウィズ リック・ウエア・レーシングから佐藤琢磨選手が出場しており、13回目の出場となる。琢磨選手はF1で7年間活動した後、アメリカに渡り2010年からインディカーシリーズに出場している。インディ500では2017年に日本人として初優勝を挙げ、2020年には2勝目を達成。インディ500で2勝以上挙げているウイナーは世界で20名しかいない。
 ベテランの琢磨選手だが、そのインディ500のマシンセッティング能力とレース戦略のうまさには定評がある。

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 今年はデイル・コインに移籍してから初のインディ500となるが、17日から始まったプラクティスでは好調を維持。
 初日は小さなトラブルがあったものの、午後にコースに戻って走行を始めてから、前車のトゥ(マシンの後方に流れる気流を利用してスピード上げる)をうまく使い、228.939mphをマークしてトップタイムを叩き出した。それでも琢磨選手は、「初日は最初にトラブルが出てどうなることかと思ったが、トゥを使ってタイムを出すことが出来た。まだマシンのセッティングは満足していない」と慎重なコメントだった。
 
 翌日18日のプラクティスは、雨天のためキャンセルとなった。オーバルレースの場合、雨天になると走行しない。
 プラクティス3日目となった19日も、グループランと呼ばれる隊列走行の中で、マシンのハンドリングを確かめつつ、またもやトップタイムを出し、ライバル勢を驚かせた。「2日目のプラクティスがキャンセルとなり、データを見直していたので、一段高いレベルで走り始める事ができた。マシンのハンドリングもだいぶん改善されて、チームメイトのデイビット・マルーカスのペースも良くいい1日だった」とチームのマシンのセッティングが順調に進んでいる様子を語った。
 プラクティス4日目からはマシンのターボブースト圧が上がり、エンジンの出力がおよそ100馬力近く上がると言われ、予選を想定したセッティングになる。
 ここでも琢磨選手は最後のアタックで、232.789mphをマークして逆転し、トップに立った。この結果、プラクティス3日間すべてトップで終えたのだ。「今日は強風で難しいコンディションでしたが、トップに立てたのは素直にうれしい。チームが長い時間かけて準備して来た賜物だと思う。予選はどんなコンディションになるかわからないですが、トップを狙えるスピードはある」と自信に満ち溢れていた。インディ500において、予選前のプラクティスをすべてトップで終えたという例は、ここ近年では聞いた事がない。

 そして、ポールポジションをかけて5月21日と22日には予選が行われた。インディ500の予選は、4周の計測タイムのアベレージスピードで競われるため、1周の速さと共にスピードを落とさないラップタイムも必要になってくる。「予選の場合、タイヤのグリップを落とさないようにいかに4周のスピードを保つかが重要になります。そこでマシンのダウンフォースをつけるか、削るかが大きなセッティングの分かれ目になります」と予選の秘訣を語っていた琢磨選手。残念ながらトップ12予選で10番手となり、ファスト6には一歩及ばなかった。それでも、「予選10位という結果はやや不本意なものですが、レースはまったく異なる展開となるはずです。いま、僕たちはとてもワクワクしています。」と意気込む。決勝での追い上げに期待したい。

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 また長い500マイルのレースでは、レース戦略も重要なファクターだ。レースではイエローコーションの回数にもよるが、5回から6回のピットインでタイヤ交換、給油が基本となる。琢磨選手は、2020年の勝因を「燃費を抑えながらタイヤを労ってマネージメントして、ピットインした時にウイングを調整したり、交換するタイヤの内圧を調整していました。レースの最後の2スティントはマシンが万全の状態だった」と語っていた。
 500マイル、約800kmの長丁場をアベレージスピード220マイル以上で駆け抜けるダイナミックなレースだが、反面コンディションに合わせた微妙なセッティングが大きく結果を左右するレースでもあるのだ。

 今週末に控えたインディ500マイルの決勝で、佐藤琢磨選手はどんなレースを見せてくれるのだろうか。そして、3度目の栄冠に輝くことは出来るのか。期待は膨らむばかりだ。

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