FIMロードレース世界耐久選手権は、英語でEndurance World Championshipと言うので、通常EWCと呼んでいます。シリーズ戦として、現在年間5戦が行われています。
6時間から24時間までの耐久レースで、ライダーは2名か3名で戦います。12時間以上又は1800km以上の耐久レースの場合は、さらに1名の補欠ライダーが予選走行まで認められ、レースはその中から3人までのライダーを選びます。
エントリーチームは最大70チームと規定されています。

EWCのシーズン

2021_ewc_01.jpg2019-2020シーズンまでは9月開催のボルドール24時間が開幕戦となり、翌年の7月末の鈴鹿8耐が最終戦となる、年を跨ぐシーズンとなっていましたが、2020年の新型コロナウィルス感染拡大の影響によりスケジュールが変更。2021年シーズンは年を跨がないスケジュールとなり、4月のルマン24時間で開幕、7月の鈴鹿8耐は第3戦、10月のポルトガル・エストリル12時間で最終戦を迎えるシーズンとなります。

鈴鹿8耐は、日本の4メーカーが力を入れており、GPライダーやWSBKライダーが参加したりとEWCの中でもレベルの高い耐久レースです。2015年からこの選手権のプロモーターとなっているユーロスポーツが鈴鹿8耐をヨーロッパでライブ放映を行った所、非常に盛り上がったという事で、タイトルが決定する場としてふさわしいとして来場者数も多い以前は鈴鹿8耐がシリーズの最終戦となっていました。

2021年シーズンのスケジュール(1月25日時点)
Rd.1 ルマン 24時間 2021.4.17-18
Rd.2 オシャスレーベン 8時間 2021.5.23
Rd.3 鈴鹿 8時間 2021.7.18
Rd.4 ボルドール24時間 2021.9.18-19
Rd.5 エストリル12時間 202110.16

上記5戦で今シーズンが争われます。

EWCのレギュレーション

EWCのレギュレーションについて、概略の説明をしましょう。

(1)マシン
EWCに参加出来るマシンのカテゴリーは、下記4種類となります。
①Formula EWC(EWC) ②Superstock(SST) ③Supertwin(STW) ④Experimental(EXP)
メインとなるEWCマシンの規則については、JSB(全日本JSB1000クラス)にかなり近いものとなっています。SSTは更に改造範囲が狭く、スタンダードに近いマシンです。欧州ラウンドでは、SSTの参加が多くなっています。STWとEXPは鈴鹿8耐では無いのでなじみが薄いですが、STWは2気筒で750~1350ccのエンジンで改造範囲がEWCより広く、EXPは過給器やハイブリッドシステムも認められた更に改造範囲の広いカテゴリーです。
EWCとJSBの最も大きな違いは、EWCで夜間走行の為のライトが装備されるので、最低車重が少し重くなっています。
このベースマシンはFIMによって認可を受けた、通常公道を走れて普通に購入出来るバイクで、販売価格の上限や、最低生産台数が決められています。
WSB(ワールドスーパーバイク)のレギュレーションと比較すると、ベースマシンは同じながら改造範囲がWSBの方が広くなっています。
EWCとJSB、WSBのレギュレーションを比較したのが下記表です。

2021_ewc_02.jpg

(2)タイヤ
使用するタイヤは、競技専用の公道走行不可(NOT FOR HIGHWAY USE=NHS)のタイヤか、公道走行可の場合は規格に則っている必要がありますが、通常はNHSのタイヤを使用します。トレッドパタンについては規制がありませんが、メーカーが製造したもののみ使用可能で、グルービング等の溝追加加工等は認められません。
ウェットタイヤに関しては、メーカーがグルーブパターンの図面を提出し認められたウェットタイヤのみ使用する事が出来ます。
タイヤ使用本数制限は予選で7本(8時間耐久レースでライダーが2名のチームは5本)となっています。以前は決勝でも本数制限が設けられていましたが、2019‐2020年シーズンからは決勝でのタイヤ使用本数制限は撤廃されました。予選でのタイヤ使用本数制限は具体的にはタイヤのサイドに貼るステッカーが各チームに渡され、予選で走るタイヤには、必ずこのステッカーが貼って無ければいけません。各ライダーが予選でのコースイン/アウトの時に、オフィシャルがタイヤステッカーの確認をします。
フロントタイヤとリアタイヤの区別はないので、どのような組み合わせでも構わなく、フロント2本、リア5本でも良いのです。決勝では使用本数制限が無いとは言え、鈴鹿8耐の場合、上位チームは7回ピットの8スティント走行なので、毎回フロントリア共に交換して8セット使用が一般的な使用で、それ以上タイヤを交換するとピット作業のロスタイムが増えてしまうので不利な状況となってしまいます。
24時間耐久レースでは、上位チームでも26-28回ピットをするので、毎回新品タイヤに交換するか、場合によってはリアのみ交換や前後2スティント使用する等、様々な戦略が出来るようになりました。

(3)ライダー
ライダーは2名か3名で走る事となります。24時間レースに関しては、更に1名の補欠ライダーが認められています。決勝の前に補欠ライダーを含めた中から3人を登録してレースを行います。各ライダーの走行時間に関しては、以前は一人の連続走行時間に制限がありましたが、現在はありません。

(4)ピット作業
レース時ピットインした時、ピット前のワーキングエリアでマシン作業することが出来る人は、腕章を付けた特定の4人と決まっています。この点は、昨シーズンまでマシンに直接触らずに補助する人(例えば外したタイヤを受け取るや、メカニックに工具を渡す等)は除外されていましたが、今シーズンからは、この4人は他の人から作業を援助してもらってはならないと決められました。

ですから鈴鹿8耐で、ワークスチーム等では、外したタイヤをメカニックが投げて、他の人が受け取るという事がありましたが、今シーズンからは受け取る人も4人に入ってしまうので、そのような光景は見られなくなりそうです。
マシンをピットボックスに入れた場合は、作業人数の制限はありません。ガソリン給油はピットアウト直前にピットレーンで行い、ガソリン給油中はマシンの作業を行ってはなりません。
又レース中のピット作業に関しては、消火器の準備やピット内保管のガソリンの量、タイヤウォーマー使用法や電源プラグ使用の位置等、又作業員は規格に沿ったヘルメット(自転車用やスノボ用が多い)を着用し、綿製の長袖長ズボンか、耐火服を着用するなど、安全に関する項目が細かく規定されています。

(5)予選
各ライダー20分の計時予選が2回行われます。それぞれのライダーのベストタイムを出し、チーム全員(2名又は3名)の平均タイムがそのチームの予選タイムとなり、グリッドが決定されます。
但し鈴鹿8時間耐久レースでは、恒例のトップ10トライアルが実施されるので、1位から10位までのグリッドはトップ10トライアルの結果が適用されます。上記計時予選後ライダーの平均タイムによる順位で、1位から10位までのチームがトップ10トライアルに出場し、各チーム2名のライダーがトップ10トライアルを走って、そのベストタイム順にグリッドが決定します。

EWCのポイントシステム

EWCではチーム、ライダー、コンストラクターズ(バイクメーカー)にポイントが与えられ、それぞれのランキングが決定します。
EWCのポイントシステムは、レース時間によって変わるし、24時間レースの場合は途中経過順位にもポイントが加算される等、やや複雑なシステムです。
基本ポイントは、1位から20位までに与えられるポイントで、レース時間が8時間以下と8時間を超え12時間以下、12時間を超え24時間までのレースで3段階のポイントとなっています。1位はそれぞれ30点、35点、40点と時間が長いほどポイントが多く、20位が1点となっています。
このポイントは2016-2017シーズンから少し変更され、最終戦では1.5倍になるので、最終戦までタイトルを争うチームには逆転チャンピオンを獲得する可能性が大きくなりました。
次に12時間以上のレースの場合、8時間と16時間経過時の順位にボーナスポイントが加算されます。その時点の1位が10点で、10位が1点となります。ですから24時間レースでは、例えば16時間までトップを走っていたら、その後リタイアしても20点獲得となるのです!
このボーナスポイントは、チームとライダーに与えられるもので、コンストラクターには与えられません。そしてコンストラクターのポイントは、各コンストラクターの上位2チームのポイントが加算されます。
また2018-2019シーズンからは予選上位5チームに予選ポイントが与えられるようになりました。予選順位が1位には5ポイントが与えられ、以降4ポイント、3ポイントと予選5位までのチームに付与されます。
SSTカテゴリーの各ランキングは、ワールドカップという名前になり、鈴鹿8耐の結果は加算されません。

タイヤについて

ewc2018_t.jpgEWCは現在ロードレースの世界選手権で、唯一複数のタイヤメーカータイヤを供給する世界選手権レースです。
これまでブリヂストンはYART-YAMAHAとF.C.C. TSR Honda Franceの2チームにタイヤを供給してきておりましたが、今シーズンからこの2チームに加えてヨシムラSERT Motulにもタイヤを供給。現在ではタイヤメーカー4社がしのぎを削るレースとなっています。
EWCを戦うタイヤはグリップと耐久性が勿論重要ですが、更に幅広いコンディションに対応出来て、乗り易いという事も重要となります。特に24時間耐久レースでは、日中と夜中の気温差が大きく、更に雨が降ったり目まぐるしく条件が変わる事もあります。各サーキットのコースや路面の特徴も違うので、レースには何種類かのコンパウンドを準備するのですが、幅広く対応出来るタイヤでなければなりません。
例えばルマン24時間のレースでは、明け方に路面温度3℃と極寒の状況に対し、真夏の鈴鹿8耐では路面温度が60℃近くなる事もあるのです!
どのレースでもほぼ1時間で給油、ライダー交代の為のピットインをするのですが、24時間レースでは夕方から日没、気温が最も下がる夜中や明け方、日の出時刻になり気温・路面温度が上がり始める早朝等、温度に合わせてタイヤスペックを変更する場合はどちらのスペックが適しているか?と迷う事も多いので、温度に対して幅広くカバー出来て性能が高いタイヤが求められます。もちろん長い時間を安定して走行出来る耐久性は重要、寒い時にはピットアウト直後やセーフティーカー解除後のタイヤの温まりも大事な性能となります。
雨が降った時使用するWETタイヤも雨の量による状況変化に対応出来なければなりません。一度WETタイヤに交換したら、雨が止んで路面が乾きだしても、ある程度走れないと再びピットインしてタイヤ交換をしなくてはならず、タイムロスしてしまうのです。