みなさんはドライビングシミュレータでサーキット走行を楽しんだ経験をお持ちでしょうか。近年はドライビングゲームの世界を極めたのちに実車のレースに挑戦し、めざましい活躍を見せている選手もいます。いまやシミュレータやビデオゲームによるドライビング体験は、本物に似せたものというイメージを超え、わたしたちに新しい刺激と楽しさをもたらしてくれる注目のツールになっています。
ブリヂストンは、「グランツーリスモ 7」によるオンラインレース「BRIDGESTONE GT タイムトライアル U17 by TOYOTA GAZOO Racing」へ、オフィシャルパートナーとして協賛するなど、eモータースポーツへも積極的に取り組んでいます。その一貫として、新たな可能性に着目したのがドライビングシミュレータの活用。シミュレータを用いたレッスンをリアルなスポーツ走行と組み合わせることで、さらに可能性が広がるのではないかと考えたのです。そこでサーキットにおける走行レッスンイベントで新たなプログラムを実施し、イベント参加者に体験してもらいました。
体験の場は、敷居が高いと思われがちなサーキット走行を気軽に楽しめる「POTENZA CIRCUIT MEETING!(PCM!)」。第一線で活躍するレーシングドライバーをインストラクターに迎え、スキルアップにつながる手厚いレッスンが受けられる、気づきの機会の多い人気の走行会イベントで、7月23日(土)にTSタカタサーキットで開催されたラウンド3にドライビングシミュレータが持ち込まれました。
シミュレータレッスンに臨む3名は、サーキット初体験という方もウェルカムな、基本を学びたい方向けの「ポテンザレッスンクラス」に参加した方々。ドライビングポジションなどの基礎講習や座学に始まり、フリー走行中は担当講師が参加者の走りをチェック。その後のドライビング講習では、ひとりひとりにスキルアップのためのアドバイスも行われました。
このレッスンにドライビングシミュレータによる“走り”がプラスされたわけですが、その15分間の走行中は担当講師が傍らからオンタイムでアドバイスを行うのが大きなポイント。操作に慣れるための練習を経て、2回目のフリー走行の前にいよいよシミュレータを使用したレッスンが始まりました。
■シミュレータの走りにプロドライバーがアドバイス
最初の体験者は、月イチくらいのペースでサーキット走行を楽しみ、もっともっとタイムを縮めたいという日産マーチニスモSで参加のOさん。担当講師は、SUPER GTで活躍する蒲生尚弥選手です。まずはOさんがドライビングする様子を、蒲生選手が後ろで確認。すぐにドライビングポジションや目線の位置についてアドバイスが投げかけられました。蒲生選手が途中で運転を交代して見本を示しつつ、ライン取りやブレーキのポイントなどをその場で修正しながらレッスンが進みます。シミュレータの操作に慣れるまでに少し時間を要したものの、ドライビングスタイルの変化が明らかに見てとれました。
体験したOさんは、「アドバイスをもとに操作したら1周ミスなく走れました。シミュレータの映像と実際のコースがまったく同じで、ブレーキポイントの目印などが、実走行でリンクできそうです」と、自身の走りの変えるべきところをしっかり感じ取った様子。
続いては、マツダ ロードスターで参加のHさん。担当講師は主戦場のサーキットだけでなく、全日本ラリーへの参戦など活躍の場を広げている久保凜太郎選手です。Hさんは、まずドライビング講習でアドバイスがあったヘアピンコーナーでのブレーキングについて、改めてシミュレータで学ぶことに。サーキット走行は今回で2度目ということもあり、Hさんの走り方を真似て見せるなど、久保選手は分かりやすいレッスンを心がけながら進めました。
「まるでサーキットコース上で教わっているような感覚で、とても理解しやすかったですね」とHさん。「習ったことを実践して、スピードが乗ったままコーナーを曲がれるか早く試したいです」と、2回目の走行への意欲を見せていました。
最後は三菱ランサーエボリューションⅤで参加のSさん。SUPER GTに参戦する篠原拓朗選手が講師としてサポートします。Sさんはサーキット走行歴が2年とのことでしたが、ドライビングゲームの経験が豊富でシミュレータでの走行に慣れていたこともあり、各コーナーでのブレーキングやギア選びなど、よりタイムアップに繋がるレッスンを実施。 “なぜその操作が必要か”など、篠原選手による具体的かつ論理的な教えで、周回ごとにスキルが上がる様子がうかがえました。
Sさんは、「ゲームと違うのは、わかりやすいアドバイスがもらえたところ。我流になっていた部分を、プロドライバーの指摘によって修正できたのが収穫です。何度も練習できたし、次の課題も見つかりました」と、シミュレータレッスンの効果に大満足の様子でした。
■リアルなスポーツ走行で、すぐにその効果を実感
こうしてドライビングシミュレータレッスンを終えると、ほどなくして2回目のフリー走行が実施されましたが、みなさんアドバイスを活かすことを心がけつつタイムアップを目指しました。「1回目のフリー走行とはまったく走り方が変わりました」、「アドバイスの通りに思いっきりブレーキを踏むことができました」、「走ることがもっと楽しくなりました」といった声が聞かれ、驚くほど大幅にタイムアップした参加者もいたほど、シミュレータレッスンを活かした走行が、スキルアップに繋がったことが分かりました。
また、サーキット走行にはタイヤが重要だと実感したという参加者の声もありました。参加者のSさんは、「今回初めてPOTENZA RE-71RSを装着してサーキット走行に臨んだのですが、思いっきりブレーキを踏んだときの優れた縦グリップには驚きました。コーナリングにおける踏ん張りも印象的で、スピードが乗ったままハンドルを切る最終コーナーでも安心感が違いました」とコメント。貴重なプロドライバーのアドバイスをしっかり自分のものにするには、タイヤチョイスも重要かもしれませんね。
なお、今回のプログラムでは担当したレーシングドライバーにも、シミュレータレッスンの印象を聞いてみました。
【蒲生尚弥選手】
シミュレータは私たちも練習に使用し、とても有用だと思います。ただし実際にサーキットを走る車両と、操作感やペダルの踏力などをまったく同じにするのは難しいので、そこに慣れることは必要かもしれません。教える立場からはクセが見つけやすいし、リアルタイムでコミュニケーションがとれるのがいいですね。Oさんは2回目の実走行で1コーナーのブレーキがしっかり踏めていて、1回目の走行より明らかに良くなりましたよ。
【久保凜太郎選手】
なにより、愛車を傷めず、思いっきり練習できるのがいいですね。スキルアップのためのシミュレータの活用では、タイムを追求することに主眼を置くより、苦手なポイントを反復して練習するのがおすすめ。よりコースに慣れることもできますよね。今回のようなマンツーマンのレッスンのほかに、大勢の前でインストラクターが走行の見本を見せるというのも効果がありそう。Hさんは1回目から3秒以上タイムアップして驚きました。トライしている姿も見られてハナマルあげちゃいます。
【篠原拓朗選手】
後ろや横で実際のドライビングを見ながらアドバイスできるので、とても教えやすかったですね。今回のレッスンでも短い時間で修正ポイントをすぐに見つることができました。例えばコーナリングなど苦手な部分に対して、その手前から助言できるのがよかったです。伝わりにくい点を、わかりやすく具体的にアドバイスすることができました。Sさんの2回目の実走行を見ていて、シミュレータでのレッスンを踏まえながらアプローチしている様子がよく伝わってきました。
このようにプロのレーシングドライバーの目線からも、ドライビングシミュレータによるレッスンがリアルなスポーツ走行におけるスキルアップに有効なことがわかりました。ブリヂストンモータースポーツは、モータースポーツの楽しさをよりたくさんの方に知っていただくために、今後もこのプログラムを展開していく予定です。eモータースポーツを通して、バーチャルとリアルがより近しいものとして共存しながら、モータースポーツが盛り上がっていくことはどうやら間違いなさそう。サーキットへハードルの高さを感じていた方は、まずはeモータースポーツに触れてみてはいかがでしょうか。
■「POTENZA CIRCUIT MEETING!(PCM!)」とは?
サーキットラン初心者やよりスキルアップを望む方など、プロドライバーから学んで楽しめる走行会イベント。今年で8年目を迎え、ますますパワーアップしています。2022年度は4回開催予定で、すでに筑波サーキット コース1000、鈴鹿サーキット 南コース、タカタサーキットで実施。最終戦となる第4回目は10月29日(土)に筑波サーキット コース1000で開催されます。
PCM!には、スキルアップのためのプログラムを充実させた「ポテンザレッスンクラス」と、レッスンはもちろんフリー走行も存分に楽しめる「ポテンザフリーランクラス」が用意され、自分のスキルに合わせたクラスを選べるのも魅力のひとつ。講師が1台1台の走りをチェックしてアドバイスをするドライビング講習や同乗走行など充実した学びと体験のほか、プロドライバーがチューニングマシンを駆ってコースを攻め込むデモランなども行われ、サーキットの一日を満喫できます。たくさんのみなさんの参加をお待ちしています。
https://tire.bridgestone.co.jp/potenza/event/pcm.html