モトクロスとは、人工的に作られた丘や起伏に富んだダートコースを、モトクロス専用のオートバイで走行する競技のことであり、その国内最高峰のシリーズが、全日本モトクロス選手権である。

2021_mx_1.jpg もうひとつのオートバイレースであるロードレースとは、オートバイの形もコースもまったく異なる。車高が高く、サスペンションのストロークを長く取ったマシンに、多数の凸ブロックを配置したタイヤを使用する。そんな独特のマシンで、ライダーたちは土や砂の路面、大小や連続するジャンプスポットなどを攻略していくのだ。モトクロスはロードレースと違いコースを疾走するマシンが「滑ったり、飛んだり、跳ねたり」と暴れるマシンの動きを操るライダー達をコースの近くで観戦出来る為、ファンを魅了して止まないレースなのである。スタートも選手たちは横一線に並び、1コーナーへなだれ込んでいく姿は迫力満点!モトクロスは体力的に非常に厳しいスポーツで、ライダー達のスタミナは凄いものがある。レース会場でのパドックエリアはライダー達にも会いやすく、間近でマシンを見る事が出来るオープンな環境。激しいレースを戦うライダー達もパドックではフレンドリーなので、お気に入りのライダーを見つけて応援するのも、楽しい観戦のしかたでもある。

全日本モトクロス選手権には、国内最高峰の「IA1」と、それに続く「IA2」の2クラスがあり、それぞれ国際A級ライセンスを持つライダーが参戦している。またレディースクラスがあり、マシンは小排気量ながら、男性顔負けの走りと激しい争いを、女性選手たちが繰り広げている。各クラスは、マシンのエンジン排気量やタイヤサイズが異なる。IA1は主に4ストローク450cc、IA2は主に4ストローク250cc、レディースクラスは4ストローク150cc又は2ストローク85ccのマシンが使用されている。

いずれのクラスも、決勝レースは1レース30分+1周の2ヒート制(レディースは15分+1周の1ヒート制)。規定時間内で最も周回し、トップチェッカーを受けたライダーが、そのヒートの勝者となる。そして1&2ヒートそれぞれの獲得ポイントを合計し、最も総合ポイントの多かったライダーが、その大会の勝者となる。各ヒートでのポイントを加算して、最終的に年間獲得ポイントの最も多かったライダーがチャンピオンに輝くのは、他のレースと同じだ。今シーズンも全8戦が行われるが、16ヒートの合計得点で年間タイトルが争われるので、終盤までタイトル争いがもつれる事が多い。

タイヤについて

2019_mxt_1.JPG 全日本モトクロス選手権で使用されるオートバイは、レース専用マシン(公道走行不可)ではあるが、基本的には国内4メーカー、海外メーカーが市販している車と同じモデルである。同様に、タイヤも公道を走ることはできないが、競技専用の市販タイヤとして販売されているものを使用する。

使用されるのはブロックタイヤ。より路面に食い込み、さらに路面をかくことができるよう、コンディションに合わせたタイヤが準備される。ぬかるんだ路面のときは泥が詰まらないようにブロックの隙間が大きいものを、逆に路面が固いときは、接地面積を増やすためにブロックの隙間が小さいものを使用するのが一般的で、路面コンディションに応じた、ハード-ミディアム-ソフト-マッド用のパターンがあり、状況によって使い分ける。モトクロスは走行ラインも様々で、ライダーの好みや走り方によってタイヤの選択が分かれる事も多い。
現在のブリヂストンの商品ラインアップは、ハード用:X40、ミディアム用:X30、ソフト用:X20、マッド、サンド用:X10となっている。

モトクロスのタイヤ開発は難しい。EWCや全日本ロードレース選手権といった、サーキットを舞台とするレースと違い、常に変化する路面状況、コンディションで使われる為テストやタイヤ評価も難しい。その上タイヤのグリップやハンドリング性能の良し悪しも、ライダーのライディングスタイルや好みで変わる事が多いので、良いタイヤの定義もしにくいのだ。
ポイントとなるのは、「ライダーのフィーリングにマッチしているか」ということ。モトクロスの場合、路面にグリップさせるだけでなく、意図的にスライドさせて走らせることもある。つまり、いかにライダーの意のままにコントロールできるタイヤであるかということが問われるのだ。

例えばモトクロスのライダーたちは、レースが進むにつれてコースにできる轍(わだち)や、柔らかさが変わったりする路面状況を見ながら、ライン取りや走り方を変える。そんな刻々と変化するライダーの要求にタイヤは応えられなければならない。そこがロードレース用タイヤの開発と最も異なるポイントであり、タイヤメーカーの技術力の見せ所と言える。