著者:山田弘樹 写真:和田清志

AT車でも参加できるスポーツ走行、「ポテンザ サーキット チャレンジ」がスタート

4人のプロドライバーが2022年に始まる新イベント「ポテンザ サーキット チャレンジ」をひと足先に体感してみました。

■ブリヂストンが2022年に新たな参加型走行イベントをスタート
これまでさまざまなイベントや映像を通して、クルマとモータースポーツの楽しさを伝えてきたブリヂストンが、2022年から新たな試みをスタート。「ポテンザ サーキット チャレンジ」と題して年間3回(予定)、アマチュアドライバーに向けたイベントを開催するといいます。
そして今回はこの「ポテンザ サーキット チャレンジ」を、ポテンザタイヤの開発ドライバーである佐々木雅弘選手を中心に、さまざまなレースで活躍するポテンザドライバーの井口卓人選手、堤優威選手、そして全日本ジムカーナドライバーであるユウ選手の4人が実演。
スポーツタイヤ「POTENZA RE-71RS」を装着したクルマで、1日たっぷりサーキットを走って、その楽しさと魅力について語ってくれました。
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ポテンザ サーキット チャレンジには、プロドライバーも思わず笑顔がこぼれてしまう魅力がありました。


ポテンザ サーキット チャレンジのコンセプトは、ずばり「モータースポーツへの第一歩」を、アマチュアドライバーに提供することです。これまでも入門編のモータースポーツといえば、ジムカーナやポテンザ サーキット ミーティングなどのタイムアタックイベントがありました。しかし、一般的な目線から見るとその両者も、まだまだビギナーには敷居が高いというのが現状だからです。
 たとえばジムカーナは、レースやサーキット走行に比べてコストこそかからないものの、競技としてはその長い歴史から、かなり競技内容が専門化されています。そして高いスキルが必要なイメージもあります。また、タイムアタックも同様で、ビギナーにとっては「他の車両と一緒になって走ることすらハードルが高い」という声があります。加えてチューニングレベルが高くないと「参加しても楽しめないんじゃないのか?」と思ってしまうユーザーも少なくありません。
 そこでブリヂストンは、このジムカーナとタイムアタックの“いいとこ取り”を提案。具体的にはミニサーキットを舞台にパイロンを置いて、高速コーナーではアベレージスピードを絶妙に抑え、低中速コーナーではハンドリングを楽しめるテクニカルセクションを盛り込んだのです。
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ジムカーナでは走行前に「完熟歩行」が行なわれ、実際に歩いてコースやレイアウトを確認しています。


このコース設定をしてくれたのは、ジムカーナドライバーであるユウ選手です。ユウ選手は当日ツインリンクもてぎ 北ショートコースを使ってメインストレートや裏ストレートにパイロンを設置。スタート地点にはストレートとスラロームを2本作り、ショートカット部には複合コーナー、最終セクションにはS字区間を用意して、サイドブレーキを使わないでも楽しめる魅力的なコースを作成してくれました。
 また今回は、参加車両もバラエティに富んでいました。コンパクトスポーツ代表は、軽快なハンドリングが楽しい「コペンGRスポーツ」。FR車はトヨタの新型「GR86」の18インチモデル「RZ」をチョイス。さらにFF車はハイブリッドカーでもある日産「ノート オーラNISMO」、ミドシップ車にはアルピーヌの「A110」を用意。
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トヨタ「コペンGRスポーツ」(CVT)


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トヨタ「GR86」(6速AT)


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日産「オーラNISMO」

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アルピーヌ「A110」(7速AT)


そしてそのどれもが“オートマチックトランスミッション”を搭載していたのも1つの大きなトピック。それはAT車の2ペダルでも、このポテンザ サーキット チャレンジが楽しめることを証明するためだといいます。
なおかつ今回は、佐々木選手がプロデュースするライトチューンのGR86の6MT車も持ち込んで、“ちょっとチューン”のスポーツカーで、ポテンザ RE-71RSの性能がどれだけ引き出せるのかも検証してみました。
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佐々木選手がプロデュースするライトチューンのトヨタ「GR86」(6MT)でもタイヤ性能の検証が行なわれました

■RE-71RSを履かせると何が変わるの!?


 まず最初のテストでは、コペン GRスポーツを堤選手とユウ選手がドライブ。標準タイヤ(ブリヂストン ECOPIA NH100 サイズ:165/50R16)で1回目の走行を行ない、次にPOTENZA RE-71RSへと履き替えてその違いを比べてみました。
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 ジムカーナドライバーであるユウ選手は「普段エコピアをこういう場面で走らせることってないんですけれど、このコンディションが悪いなかでも安心してコーナーに飛び込めて驚いています。旋回中のブレーキも危なげなく減速ができて、とてもいいタイヤですね」とコメント。純正タイヤのウェット性能と、トータルバランスのよさを指摘していました。そしてこれをRE-71RSへと履き替えたあとは「RE-71RSはすごいですね! エコピアではアンダーステアが出ていた場面でもグリップが保たれていて、さらにオーバーステアの挙動まで持ち込めます。明らかに『モータースポーツをしている!』という操縦感に変わります」と、驚きながらその違いをコメント。その評価にもグッと深みが増していました。


RE-71RSの使用感を教えてくれた堤選手
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 堤選手もRE-71RSに履き替えたあとは「まったく別のクルマになりますね」とその第一印象を鋭く評価。続けて「ハンドルを切った瞬間の応答性が上がったり、ブレーキのリリースでクルマの動きを感じやすくなります。またタイヤのグリップが上がったことで、スラロームなどの切り返しで応答性が上がっています。グリップが上がった分だけロールスピードも速くなっていますが、それを利用して素早く向きを変えることができます。その時でもグリップが高くクルマは安定しているので、ノーマル車でも、不安なく走れますね」とRE-71RSの懐の深さをわかりやすく分析してくれました。
 ユウ選手には、ポテンザ サーキット チャレンジのコース設定についてもインタビュー。その特徴を尋ねると「ジムカーナだとコースを覚えることがまず必要になるのですが、このポテンザ サーキット チャレンジではそれが難しくなりすぎないようにしました。パイロンもスラロームの入り口やコーナーの曲率が分かるように目印として置くなど、なるべく参加者がクルマの運転に集中できるようなコース造りを心がけました」とコメントしてくれました。

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新品のPOTENZA RE-71RS


走行後のタイヤの表面を見るとウェット路面でもしっかりグリップしていたことが分かる
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新品のPOTENZA RE-71RS
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WET路面走行後のPOTENZA RE-71RS

■RE-71RS装着GR86(AT) vs RE-71RS装着ライトチューンGR86(MT)
 2回目のテストでは、POTENZA RE-71RSを履いた2台のGR86が走行。1台はノーマル車両(6AT)で、もう1台は佐々木選手がプロデュースするライトチューン仕様(6MT)。このテストの目的は、ライトチューンでどれだけRE-71RSのポテンシャルが引き出せるかを確認することです。
「足まわりには純正ダンパーにマッチングさせたHAL製のローダウンスプリングが装着され、タイヤは18インチのまま純正の215幅から235幅へと、少しだけサイズをアップしたPOTENZA RE-71RSを装着、フルエアロを装着して、フジツボ製の車検対応マフラーを装着しているだけの、本当にライトな仕様です。これらのパーツはボクがプロデュースしている『GROW』(グロウ)というブランドで、全国のGRガレージでも発売を予定しています。愉しみにしていてください」と、佐々木選手はその仕様を説明してくれました。
『GROW』公式サイト https://grow-motorsports.com/
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佐々木選手がプロデュースするライトチューン仕様のGR86は6MT


そんな佐々木選手は、朝方の雨でまだ濡れている路面でも、GR86を華麗にスライドコントロールしたこれにはプロドライバーである3人も思わず驚きの声を上げていました。
また、このGR86を走らせた井口選手も「イメージ通りにクルマが動いてくれる感覚が増えますね! 特にこのGR86は足周りの追従性が良いから、乗りやすいんです」と、ライトチューンとRE-71RSのマッチングを高く評価していました。この井口選手のインプレッションについて佐々木選手は「無駄な動きが少なくなるから」と説明してくれました。
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加えて佐々木選手は「ノーマル車両は、タイヤチェーンを装着したり、4人乗った状態で乗り心地を確保するところまで想定しています。スポーツドライビングを考えるとまず乗車定員は1人ですし、ストロークを少なくした方がキビキビとしたハンドリングが得られます。むしろスポーツドライビングという観点では、こうした無駄を少なくしてあげることで、運転しやすさが増すんです。チューニングというとタイムアップのための手法とばかり思われがちですが、ノーマルから少し手を加えてあげることで、乗りやすさも向上できるんです」と、ライトチューンのよさを説明。それはまさにPOTENZAタイヤとGR86の両方を開発した佐々木選手だからこそ、作り出せたバランスだと言えるでしょう。
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ウェット路面でも高いグリップ性能を発揮するRE-71RS
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自らがプロヂュースするGR86にPOTENZA RE-71RSを履かせ、タイヤの乗り味についてコメントしていた佐々木選手

■最新2ペダルマシンでタイムアタック大会も実施
 そして最後は、今回用意された4台のAT車両でタイムアタック大会を開催。ポテンザ・サーキット・チャレンジをプロドライバーが実際に体験しました。ルールはシンプルで、アタックは1本勝負! 失敗しても“泣きのもう1本はナシ”です。ということでさっそくタイムアタック開始!


プロドライバー4人の走りは映像で確認できますが、まずコペンGRスポーツでトップタイムをマークしたのは、期待の若手ドライバーである堤優威選手。
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しかしGR86では、3人のレーシングドライバーを押しのけて僅差の勝負でユウ選手が勝利!
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すると日産ノート オーラNISMOでは、微妙な路面状況を感じ取りながらスムーズな走りを披露した井口卓人選手が、断トツの速さでトップを奪いました。
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そして、最後のミドシップ・スポーツカーであるアルピーヌA110では、見事にコントロールしきった佐々木雅弘選手が一番時計を叩き出しました。
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 フタを開ければ全てのドライバーがそれぞれのマシンで勝利を飾るという、まさにプロならではの互角な走りがそこには展開されました。
 しかし、なにより印象的だったのは、ドライバーのみんなが笑顔だったこと。最初は「どうしても真剣勝負になってしまうから、タイムアタックはやめようよ!」なんて声がパドックに飛び交っていましたが、いざ走らせれば全員が、そのコース設定とRE-71RSの走りを愉しんでいたのです。
 こうしてプロドライバーによるポテンザ・サーキット・チャレンジ体験は、無事に終了しました。ちなみに今回は、1回勝負のタイムアタック形式を取りましたが、これはプロドライバーのアトラクション用ルール。実際のポテンザ サーキット チャレンジでは、1台ずつ出走し、1日でおよそ6本程度のタイムアタックができるように考えられています。また当日はポテンザ契約ドライバーも参加しているので、アドバイスを聞いたり、タイヤの知識を深めることができます。
 2022年から始まる、ブリヂストンの新しい試み。「ポテンザ・サーキット・チャレンジ」は、アマチュアドライバーがモータースポーツの楽しさを満喫できる、魅力的なイベントになりそうです。

■ポテンザ サーキット チャレンジを体感してみた4人のドライバーの感想は?


●佐々木 雅弘選手
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「ポテンザ・サーキット・チャレンジのコンセプトには『AT車でも楽しめるイベント』というテーマがあるのですが、もちろんMT車でも出られるし、むしろマニュアルでクルマをコントロールする楽しさを、ストリートだけでなくこうしたコースで体験して欲しいです。また、できればポテンザタイヤを履いて参加してもらいたいですが、そうじゃなくてもまずこのポテンザ・サーキット・チャレンジで、モータースポーツの楽しさを知って欲しい。そうすればなぜ僕らがポテンザをいいと言っているのかも、きっと分かってくれると思いますので参加して、思い切りクルマで遊んで、モータースポーツにチャレンジしてください!」


●井口 卓人選手
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「ポテンザ・サーキット・チャレンジが[SE1] [TY2] 新しく始動したわけですが、とても楽しいイベントになりそうですね! 今回乗った4台は、駆動方式も全部違う幅広い車種が揃いました。しかも全てAT車でしたけれど、全車種のハンドリングが楽しめましたし、本当に運転に集中できました。サーキット走行って少し遠い存在だと思われがちですけれど、このポテンザ・サーキット・チャレンジにトライして頂ければ、その敷居は下がると思いますしクルマの運転を楽しんでいただいて、その先につなげて行ってくれたら嬉しいです!」


●堤 優威選手
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「今日初めてこのポテンザ・サーキット・チャレンジという新しいプログラムに参加させていただいて、これがどんな方でも楽しめる素敵なアイデアだと実感しました。AT車しか持っていなくても、サーキットが初めてでも、誰もがここから始められると思います。モータースポーツに興味があるけれど、何から始めたらいいんだろう? と思っている人には是非参加して欲しいですし、ボクたちのようなプロでも楽しめるイベントです!」


●ユウ選手
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「ジムカーナドライバーとしてコメントすると、まず1台出走ができて他車と混走しないことがポテンザ サーキット チャレンジの大きな特徴だと言えます。もちろんこれはジムカーナでもできることなんですが、ひとつ違うのはサイドターンであったりとか、複雑なパイロン配置がないこと。だからポテンザ・サーキット・チャレンジだと、操作に集中できるんです。コースを覚えることにハードルを感じてジムカーナに参加することを躊躇している人たちには、ぜひ注目して欲しいイベントです」

■2022年ポテンザサーキットチャレンジ開催
 第1回 2022年 8月14日(日) 富士スピードウェイショートコース
 第2回 2022年10月16日(日) 幸田サーキットYRP桐山
 第3回 調整中

 ポテンザサーキットチャレンジ詳細についてはこちらをクリック  
 ※主催者ニュートンランド様のページに飛びます
 軽自動車からスポーツカーまでナンバー付き車両であれば参加可能です。
 ATでもMTでも普通免許があれば参加可能です。
 これからサーキットデビューしたい人からドライビングスキルをあげたい人まで参加お待ちしています。

■ポテンザサーキットチャレンジにプロドライバーが体験してみた動画






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