初レースの川植祐輝が見せた大逆転のドラマ
- 開催場所:岡山国際サーキット
- 開催日:2024年06月30日(日) 〜 2024年06月30日(日)
6月30日、岡山国際サーキットで2024年の「OKAYAMAチャレンジカップレース」シリーズの第5戦が開催された。ブリヂストンのポテンザRE71-RSをワンメイク指定タイヤとする「Nゼロ-86」のクラス1にとってはシーズン3戦目となるが、実は2月の第1戦以来のレース成立となった。あいにくの梅雨空のもと、開幕戦を制した日野皓介が予選では圧倒。10ラップの決勝もそのまま逃げ切るかと思いきや、中盤から今回が初参戦の川植祐輝が背後に急接近。 8周目のヘアピンで逆転に成功し、表彰台の頂点に立った。
2024年の岡山チャレンジカップレースは2月に開幕し、最終の第7戦は12月1日にフィニッシュ予定だ。NゼロとN1の86については年間4戦のシリーズなので、2月18日/3月24日/6月30日/10月13日という日程が組まれている。ただ3月24日のシリーズ第2戦だけは決勝が“2時間耐久レース”としての開催。ナンバー付きのNゼロ86にとっては少し負担が大きいために、近年は台数が減る傾向にあり、ついに今年は不成立となってしまった。
つまり今回のレースが実質では2戦目となり、シーズンを折り返す重要な節目の戦いとなる。開幕戦を鮮やかなデビューウインで飾った♯24の日野皓介はもちろんエントリー。さらに♯27の川植祐輝と♯456の西村宏樹という3名での戦いとなった。西村は昨年フル参戦してシリーズ2位という成績を残したが、今季は初参戦。さらに川植に至っては今回が公式戦デビューとのこと。ベテランとルーキーが、開幕 2連勝を狙っている日野にどう挑んでいくかに興味が集まるところだ。
■予選
この日の岡山は典型的な梅雨の1日となった。前夜来の雨で朝方の路面は濡れていたが、空模様はかなり気まぐれ。10時10分から15分間で行われた公式予選前のコンディションは気温25.4℃/路面温度26.1℃で、湿度は実質100%に近いMAX。ただ予選の間の天候は曇りで、徐々にではあるが路面が改善される傾向だった。今回も予選・決勝ともN1の86、同じくN1のNAロードスターの各5台ずつとの混走となり、合計で13台がアタックに入った。N1の86勢はレース専用タイヤのため、この日の予選は溝のあるレインを全車が選択。ロードスターは市販ラジアルの新品が晴雨兼用でマストという規定だ。この日のようなウエットになると、ポテンザRE71-RSの実力がまさに威力を発揮する舞台になる。序盤から日野が総合トップの座をずーっとキープ。実は日野が、昨年を含めて過去3回もN1でチャンピオンに輝いている♯86佐藤俊介を従えて走っていたのだが、その差が全然詰まらないのだ。
ほぼ全車が終盤にベストラップを更新していく状況でも、日野の最上段は変わらないかと思った最後に、N1勢の♯365藤井大温が2分1秒916を叩き出して総合トップの座が交代。日野も2分3秒668まで削って、これは堂々の予選総合2位。さらに佐藤が2分6秒848で続いたが、予選総合4位の座は2分7秒295を記録した川植が獲得。さらに西村も差のない2分8秒344で、予選は総合6位。つまり、コース内側のグリッド1列目から3列目の3台が、ナンバー付きの Nゼロ86のマシンとなった。
■決勝
この日のサーキットは先の読めない天候が続いたが、雨は止んでいる時間の方が長かった。そのため、最終レースとなったNゼロとN1の86/NAロードスターの決勝は公式発表こそウエットだったが、徐々にハーフウエットからドライに近いサーフェスでのレースとなった。コンディションは気温27.0℃/路面温度30.1℃で、湿度は予選時と同じMAX。予定より30分近くディレイして、16時03分に10ラップの決勝がスタートした。
オールレッドのシグナルが消えた瞬間、鋭いダッシュを見せたのは日野と川植だった。冷え込んでいる状態での性能はもちろん、スタート直後に温まるのが早いのもポテンザRE71-RSの特徴のひとつ。これを活かして日野は堂々とトップに立ち、川植もひとつポジションを上げて総合4位でオープニングラップを通過していく。一方で西村にとっては前が塞がる不運な展開となり、ふたつポジションを落としてしまった。
ただ決勝は予選より格段に早い段階で、路面のグリップが回復していった。となれば、やはり改造範囲の広いN1勢のペースにNゼロが付いていくのは厳しい状況になる。
日野も2周目には藤井と♯19永井良周に進路を譲り、3周目には佐藤にも先行を許す展開になった。その結果、後方にはデビュー戦の川植が続くことになり、徐々にその差が縮まっていく。川植にとって、この追走劇で得たものは大きいはず。8周目のバックストレートでロックオンして前に出た際は、日野もなす術がなかったというのが正直なところだろう。
もちろん残る2周で、日野が勝負を諦めることはなかった。勝負をかけたのはファイナルラップのヘアピン手前。インから並びかけて、抜こうという作戦だ。
ところが、わずかにオーバースピードだったらしく、止まりきれずにアウト側に膨らんで勝負あり。悠々とラインをクロスさせた川植が先頭の座を守り、最後は0.215秒という僅差ながら優勝を成し遂げた。一方で西村はクラス違いの複数台が挟まってしまったため、不完全燃焼の決勝になってしまったが、クリーンなバトルを演じて総合8位で無事に完走。表彰台には笑顔で登壇し、シャンパンファイトも楽しんだ。
殊勲のデビューウインを果たした川植は29歳で、職業は整備士。長年シビックでサーキット走行を楽しんでいたが、1年半ほど前にこの86をゲットしてから、レース参戦に目標を変更。ところが初走行の鈴鹿でクラッシュしての板金修理に数カ月、さらにエンジンとミッションも要交換となって、名付けた車名が「ポンコツレーシング86」。ようやくこの日を迎えたところ、ご両親の前での快挙達成となった。
優勝した川植選手コメント
「18インチの235を履いていたシビックと、16インチの205の86のサーキットでのタイムが変わらないんですよ。パワーの差を考えると、本当に凄いタイヤなんだなぁと痛感しています」
2位の日野選手は「クルマはOKでしたが、自分が弱かったです。出直してきます」と言葉は少なかった。ちなみに日野は累計27ポイントとなって、チャンピオン獲得の可能性が高くなったが、数字の上では川植と開幕戦2位の♯88相原泰佑にもチャンスは残っている。また10月13日のシリーズ最終戦には、開幕戦にエントリーしていた♯456渡部智仁と相原も参戦の意向を明らかにしている。ぜひ、より多くの86/BRZユーザーの挑戦を期待させていただく。
OKAYAMA チャレンジカップ Nゼロ-86 公式ページ
http://www.okayama-international-circuit.jp/hashiru/race/car/cc_ae86.html
決勝
- 開催日:2024/06/30
- 天候:Cloudy
- 路面:Wet
- 決勝出走:3
- 完走:3
- (3.703km x 10laps = 37.03km)
順位 | No | ドライバー | タイヤ | チーム | マシン | シャシー | エンジン | 周回数 | Delay(Lap) | ベストタイム | ベストラップ | タイム |
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1 | 27 | 川植 祐輝 | BS | ポンコツレーシング86 | 10 | 19'22.234 | ||||||
2 | 24 | 日野 皓介 | BS | パルテック GarageN 86 | 10 | 19'22.449 | ||||||
3 | 186 | 西村 宏樹 | BS | 旭モータースHIROKKIE Racing | 10 | 19'42.854 |