- 開催場所:Paul Ricard
- 開催日:2023年09月14日(木) 〜 2023年09月17日(日)
2023年のFIM 世界耐久ロードレース選手権 EWCは年4戦のスケジュールの第4戦となるボルドール24時間。今シーズンは開幕戦のル・マン、第2戦のスパ、そして今回のボルドールで3回目の24時間レースが開催となる。
最終戦となるこのレースはフランス南部の都市、マルセイユから東へ40kmほどに位置するポール・リカールサーキットが舞台。約1.8kmの長いバックストレート「ミストラル」では風向きによっては最高速が340km/hを超え、全開時間が長い事から、エンジンへの負担が大きく、例年マシントラブルでリタイヤするマシンが多発し、24時間レースの最後まで走り切れないチームが多い。
今シーズンのEWC最終戦、ボルドール24時間までのポイントランキング争いはブリヂストンサポートチームである#1 F.C.C. TSR Honda Franceと#7 YART YAMAHA OFFICIAL EWC TEAMが13ポイント差。トップから38ポイント差で#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM(DL)、同じく61ポイント差でブリヂストンサポートチームの#12 YOSHIMURA SERT MOTULとなっている。
予選・8時間経過時・16時間経過時に得られるボーナスポイントと、最終戦により1.5倍となる決勝結果ポイントの合計で、最大85ポイント獲得が可能だが、現実的には4位までチームにチャンピオン獲得のチャンスがあると言える。
レースウィークの火曜日に走行枠が設けられ、参戦するチームのほとんどが走行を開始。水曜日は車検やミーティングで走行は無く、公式スケジュールは木曜午後からのフリープラクティスが最初のセッションとなる。この走行では#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMがトップタイムをマークし、#7 YART YAMAHA OFFICIAL EWC TEAMが2番手、#1 F.C.C. TSR Honda Franceが3番手とタイトルを争うチームが1-3位を占めた。
続いて予選1回目が行われ、青・黄・赤・緑(リザーブライダー)の腕章を付けた各ライダーが20分の予選でタイムアタックが行われた。
3人の別とタイムの中から速い2人の平均タイムで予選順位が決まり、初日の予選暫定結果では#12 YOSHIMURA SERT MOTULが唯一2名のライダーが1分51秒台を記録してトップ。2番手に#1 F.C.C. TSR Honda France、3番手に#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM、4番手に#7 YART YAMAHA OFFICIAL EWC TEAMとなる。
翌日金曜日は朝9時から予選2回目が開始。前日の予選1回目のタイムを上回るライダーも多く、予選総合トップとなったのは、3人のライダー全員が前日のタイムを更新した#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM。予選1回目に暫定トップだった#12 YOSHIMURA SERT MOTULは僅か0.007秒差で2番手。3番手は#1 F.C.C. TSR Honda Franceとなり、4番手に#7 YART YAMAHA OFFICIAL EWC TEAMとタイトル争いの4台が予選上位を占めた。
迎えた決勝日当日。天気予報では雨が降る可能性があり、それが何時頃に降るのかが気になるところ。通常決勝スタート当日の朝に45分間のウォームアップ走行が設けられているが、今大会ではこのセッションは排除され、14時からスタート進行が始まり、15時に決勝スタートのスケジュールとなっている。
スタートまで3時間を切った頃、天気予報通りポツポツと雨が降り始め、徐々に強い雨となった。スタート進行前には雨は上がるが、路面はWet。しかし天気は急激に回復し、路面は徐々に乾き始め、スタート時のタイヤ選択が難しくなってしまった。
4時間の決勝レースは予定通り15時にスタート。ホールショットはBS勢の#12 Yoshimura SERT Motulとポールスタートの#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMが同時に1コーナーへ進入する。
コース上の所々が濡れたDumpコンディションの中、序盤はこの2台が後続を引き離すが、Wetタイヤでスタートしていた為、徐々に乾いてくる路面にWetタイヤでは耐え切れず、5周ほどでピットインしDryタイヤへ交換。Wetタイヤでスタートしたチームは次々とピットインしてくる。S勢では唯一Dryタイヤでスタートした#7 YART YAMAHAはDryに変化する路面でペースを上げ、トップに立つと後続を引き離していく。路面が完全に乾き、時間と共にトップ争いは絞られ、BS勢の3台に#37 BMWが加わった4台が約1分~1分30秒の中で走行。ピットインのタイミング違いでトップが入れ替わる展開が長い時間続く展開となる。
20時頃から徐々に暗くなり、夜間走行に入っても上位勢の展開は変わらず。タイトルを争う#1 F.C.C. TSR Honda Franceは数回トップを走行するが、確実にチャンピオンを獲る為にリスクを冒さず、上位のポジションを維持。
4台の上位勢に変化があったのは夜間走行に入った5時間30分が経過した頃。2位を走行していた#12 Yoshimura SERT Motulがコース前半で転倒。しかしダメージはほとんど無く、マシンを起こすとピットインすることなく走行を継続。深夜の時間帯に入ると上位勢の間隔は徐々に拡大し、トップを走行する#12 Yoshimura SERT Motulは2位以下にジリジリと差をつけていく。
8時間が経過した時点で#12 Yoshimura SERT、#7 YART YAMAHA、#1 F.C.C. TSR HondaのBS勢が上位を独占。タイトル争いを展開している#37 BMWは4位を走行。
トップ争いの4台にトラブルが発生したのは9時間半が経過した頃。4位の#37 BMWがピットにマシンを入れ、各部をチェックする。この作業で上位争いから脱落し、順位を落としてしまう。
#12 Yoshimura SERTと#7 YART YAMAHAはピットインのタイミングが違うものの、接近戦を展開しながら周回。少し遅れて#1 F.C.C. TSR Hondaが3位を走行。
レースの半分となる12時間が経過した頃、タイトル争いをリードする#1 F.C.C. TSR Honda Franceにトラブルが発生。ピットに戻るとメカニックたちが原因と修復を開始するが、長い時間を要し順位は落ちて行ってしまう。しかしチームは修復不可能と判断。残念ながら#1 F.C.C. TSR Honda Franceはこの時点でリタイヤとなってしまう。
レースは#12 Yoshimura SERT Motulと#7 YART YAMAHAがトップ争いを繰り広げながら周回を重ねるが徐々にその差は広がり、#12 Yoshimura SERTが1周以上の差を付けて朝を迎える。
上位勢に変化が出たのは17時間が経過する頃。#7 YART YAMAHAがマシンをピットボックスに入れて異常個所をチェック。2分ほど時間を要し、トップとの差が広がる。
その後も#7 YART YAMAHAはピットインの際にマシンをピットボックスに入れる回数が増えてきた。冷却系にトラブルを抱えていると見られ、ラジエターに水を入れる作業を何度か行い、その度に時間をロスしてしまい後続の#333との2位争いになる。
トップを走る#12 Yoshimura SERT Motulに変化が出たのは残り4時間を切った頃。バックストレート後の左高速コーナーで前を走っていた#11 TEAM KAWASAKI WEBIKE TRICKSTARとほぼ同時に転倒。オイルが出ているようで、同じコーナーで次々と転倒が発生し、セーフティーカーが介入する。#12 Yoshimura SERTはマシンをピットに戻し、故障個所を約6分ほどで修復すると、レースに復帰。
レース終盤に入るとマシントラブルでリタイヤしていくマシンが増え始めるが、#12 Yoshimura SERT Motulはトップを維持したまま順調に走行。2位は#333 HONDA VILTAÏS RACING、3位は#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMが順位を挽回してきており、その後ろで冷却系のトラブルを抱えて#7 YART YAMAHAがタイトル獲得に向けて走行。
長く厳しいボルドール24時間は#12 Yoshimura SERT Motulが2度の転倒を乗り越えて、717周を走行しトップでチェッカーを受け、今季初優勝。2位は#333 HONDA VILTAÏS RACING、3位は#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMが表彰台を獲得。
#7 YART YAMAHA OFFICIAL EWC TEAMは4位で24時間を走り切り、2009年以来14年振りにブリヂストンタイヤと共にEWCタイトルを獲得。また優勝した#12 Yoshimura SERT Motulはランキング2位まで浮上した。
ランキングトップで最終戦を迎え、2年連続3度目のチャンピオンを狙った#1 F.C.C. TSR Honda Franceは最終的にランキング4位で今シーズンを終えた。
◆加藤陽平 - Yoshimura SERT Motul チームディレクター
「2023年の締め括りとなる、このボルドール24時間耐久レースで優勝が出来て、本当に素晴らしい気持ちです。濡れた路面コンディションのスタートから始まり、夜間、そして路面温度が上がったチェッカー間際の時間帯においても、ブリヂストンタイヤは常に安定したパフォーマンスで私達を支えてくれました。ヨシムラSERT Motulは、今年成績を残す事に苦労しましたが、最終戦で勝利を得られ、結果としてシリーズ戦も年間2位で終えられました。来季もヨシムラチューンのスズキGSX-R1000Rとブリヂストンタイヤで勝利を目指して戦いますので、引き続きご声援を宜しくお願い致します。」
決勝
- 開催日:2023/09/17
- 決勝出走:47
- 完走:33
- (5.673km x 717laps = 4067.541km)
順位 | No | ドライバー | タイヤ | チーム | マシン | シャシー | エンジン | 周回数 | Delay(Lap) | ベストタイム | ベストラップ | タイム |
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1 | 12 | G.ブラック /S.ギュントーリ/E.マッソン | BS | YOSHIMURA SERT MOTUL | GSX-R1000R | スズキ | 717 | 105 | 1:53.508 | 24:01:35.103 | ||
2 | 333 | F.アルト /S. オデンダー/L. メルカド | PI | HONDA VILTAÏS RACING | CBR1000RR-R | ホンダ | 710 | 7 | 111 | 1:54.686 | 24:03:11.341 | |
3 | 37 | M.レイターバーガー /I. ミハルヒク/J. グアノニ | DL | BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM | M1000RR | BMW | 709 | 8 | 112 | 1:52.898 | 24:01:45.749 | |
4 | 7 | N.カネパ /M.フリッツ/K.ハニカ | BS | YART - YAMAHA | YZF-R1 | ヤマハ | 705 | 12 | 124 | 1:53.612 | 24:03:06.139 | |
5 | 11 | R. ド プニエ /渡辺 一樹/G.ルブラン | PI | Kawasaki Webike Trickstar | ZX-10R | カワサキ | 701 | 16 | 123 | 1:54.130 | 24:03:07.693 | |
6 | 33 | C. ガマリノ /S. サルタレッリ/K. カリア | DL | TEAM 33 LOUIT APRIL MOTO | ZX-10R | カワサキ | 697 | 20 | 166 | 1:56.177 | 24:02:57.548 | |
7 | 18 | E. デ ラ ベガ /A.マウリン/P. スタインメイヤー | DL | TEAM 18 SAPEURS POMPIERS CMS MOTOSTORE | YZF-R1 | ヤマハ | 693 | 24 | 121 | 1:56.622 | 24:02:22.457 | |
8 | 14 | E.ブーロム /B. コバックス/M. ヴグリネック | DL | MACO RACING Team | YZF-R1 | ヤマハ | 693 | 24 | 518 | 1:56.921 | 24:03:08.194 | |
9 | 86 | L. グリュンワルド /M. ペリゾッティ/L. ド ヴレーシューヴェル | DL | PITLANE ENDURANCE - JP3 | YZF-R1 | ヤマハ | 691 | 26 | 111 | 1:56.880 | 24:00:08.725 | |
10 | 90 | D.ヴィンコン /J.パフィー/M.シコペック | PI | Team LRP Poland | M1000RR | BMW | 691 | 26 | 83 | 1:56.472 | 24:01:56.667 | |
11 | 24 | J. ピロ /L. クレソン/K.デニス | DL | BMRT 3D MAXXESS NEVERS | ZX-10R | カワサキ | 691 | 26 | 34 | 1:56.466 | 24:02:50.897 | |
12 | 777 | D.ウェブ /K. クルゼミエン/K.マンフレディ | DL | Wójcik Racing Team STK 777 | YZF-R1 | ヤマハ | 690 | 27 | 533 | 1:56.158 | 24:02:08.748 | |
13 | 36 | M. レノーディン /L. カウチ/A.プランカッサグネ | DL | 3ART BEST OF BIKE | YZF-R1 | ヤマハ | 689 | 28 | 473 | 1:56.736 | 24:02:48.809 | |
14 | 8 | N. トーニ /M. ブレナー/P. N. ロメロ バルボサ | PI | Team Bolliger Switzerland #8 | ZX-10R | カワサキ | 687 | 30 | 357 | 1:55.512 | 24:03:19.670 | |
15 | 96 | C.ペロラリ /R. タンブリーニ/M. グレゴリオ | PI | MOTO AIN | YZF-R1 | ヤマハ | 686 | 31 | 313 | 1:55.114 | 24:02:47.280 | |
16 | 99 | L.マヒアス /F. マリノ/B.マッケルズ | DL | KM99 | YZF-R1 | ヤマハ | 685 | 32 | 110 | 1:54.239 | 24:03:04.609 | |
17 | 55 | S.スチェット /V. スチェット/G. レイモンド | DL | NATIONAL MOTOS HONDA | CBR1000RR-R | ホンダ | 684 | 33 | 50 | 1:56.014 | 24:01:41.340 | |
18 | 27 | T. ワード /T. オリバー/E. ラハティ | DL | TRT 27 / Bazar 2 La Becane | GSX-R1000R | スズキ | 680 | 37 | 37 | 1:57.019 | 24:02:02.244 | |
19 | 65 | C.ナポリ /G.デハーイェ/D. ルービン | PI | Motobox Kremer Racing | YZF-R1 | ヤマハ | 679 | 38 | 97 | 1:57.644 | 24:00:59.856 | |
20 | 30 | E.ダプイ /K. クロワ/P. デュフォー | DL | TEAM GT ENDURANCE | CBR1000RR-R | ホンダ | 679 | 38 | 512 | 1:58.035 | 24:03:25.430 |