中立な立場を活かし、F1における | |||
当時:ブリヂストン・モーターホーム ケータリング責任者 カールハインツ・ジマーマン |
F1のパドックには、チームのスタッフはもちろん、サーキットを訪れる多くの人の社交場ともなるモーターホームが建ち並んでいる。その中で、ブリヂストンのモーターホームでケータリングを担当してきたのが、カールハインツ・ジマーマン氏である。世界最高峰のモータースポーツにふさわしい、最高のサービスを提供するという、彼のポリシーにもとづいて運営されてきたブリヂストンのモーターホームは、F1の世界においてどんな役割を果たしてきたのだろうか。
私は、FOM(フォーミュラワン・マネージメント社)のケータリングを担当するなど、長年このスポーツの仕事に携わっています。しかし、正直に言って、ブリヂストンがF1に参戦してきた当時、私はブリヂストンのことをよく知りませんでした。ですから、唐突に彼らの素晴らしい仕事、技術、安定した供給力を目の当たりにしたときは、とても驚いたのを覚えています。
だから、安川(ひろし)さんが我々にケータリングの仕事を依頼してくれたとき、私はすぐに引き受けました。F1の世界で長年にわたって培ってきたものを活かして、ブリヂストンのイメージにぴったりと合致した、上質で高品質なサービスを提供できるのではないか、と私は考えたのです。
最初は、これまでとは違う日本企業との仕事ということで少し身構えましたが、それは取り越し苦労でした。ご存じのようにF1はヨーロッパ発祥の文化で、ここにはヨーロッパの人がたくさん集まります。だから、サービスや食事はヨーロッパに合わせる必要がありますが、もてなしの心は日本を参考にしました。
F1のパドックライフは、とてもスケールが大きいのです。大企業の集まるF1では、あらゆることがパドックで決まります。連絡も、契約もすべてがここでなされていて、特に全チームにタイヤを供給し、中立な立場にあったブリヂストンのモーターホームというのはこうしたことが行われやすい環境にありました。
F1は、世界的なスポーツイベントとしての顔の他に、さまざまな企業や団体のトップが顔を合わせる社交場としての顔も持っています。
ブリヂストンはF1にタイヤを供給するだけでなく、そういった交流の場をも提供することで、世界中のマーケットにおける存在感を高めていったのです。
こんなところからも、ブリヂストンのF1活動は非常に意味のあるものだったと言うことができるのではないかと思います。
これからF1は、開催国もレース数も増えていくことでしょう。もっと多くの人がレースを観戦するようにもなるはずです。
ブリヂストンがF1から去るのにはそれなりの理由があるはずですが、それでも彼らがいなくなってしまうのは本当に悲しいことです。いずれまた、ここに戻ってきてくれる日がやってくればいいと思っています。