POTENZA RE320R。ウィンターラリー用タイヤ。ブロックに刻まれたサイプが氷上での運動性能に寄与する。

POTENZA RE340R。ハードコンパウンドと大きめのブロックによる軟質路でのエッジ効果によりトラクションを発揮。

POTENZA RE360R。ラリー用としてBS初の非対称パタンで舗装路、硬質ダート路をカバーした商品。

ダートトライアルでは路面にあったタイヤチョイスが重要である。従来ダートトライアルではラリー用タイヤを使用してきたが、ダートトライアル競技人口が増加し、タイヤ開発としてもダートトライアルを重視していくなかで、両者の競技特性の違いが明らかになってきた。そこで路面コンディション別パタンというより、競技特性別パタン、つまりラリーとダートトライアルの競技特性にあった各々のパタンを検討していったのだ。

 近年ダートトライアルでは周囲環境への配慮からコースへの散水が頻繁に行われ、硬質路面上に、湿った砂利が沢山乗るような、通称「浮き砂利」路での競技開催が多くなってきた。これまで「浮き砂利」路を含めたダート路に対しては、砂利を「掻いて掃く」、つまりタイヤのエッジ効果によりグリップ及びトラクションを得ることが主流であったが、これが一変する。1996年に発売された「POTENZA RE370R」は小さくソフトなブロックを採用。剛性を落としたブロックの倒れこみによるタイヤと路面の接地を重視し、狭いトレッドによって接地面圧を高くすることで、タイヤと路面との接地をより効果的にした。砂利の多い不安定な路面を捉えること、つまり接地性を重視したのである。グリップを得るということのファーストステップは、いかに接地面を稼ぐかということに他ならず、ダート路面ではより重要である。この「RE370R」は100分の1秒を争うトライアラーに好評を博し、実戦でも勝利を重ねた。
 一方、その年の5月、約10年に渡りラリースト

に親しまれた「RE46R」の後継として、「POTENZA RE380R」を発売。これは、大型のブロックでトレッド面の接地面積を多くとり、より砂利の少ない路面において、接地面でのタイヤと路面との摩擦力によるグリップを重視、従来の路面を引っ掻くエッジ効果によるグリップとは相反するグリップを得ようとした。また、縦溝を多く取ることで横方向のコントロール性を重視し、コーナリング中のコントロール性向上によるタイムアップを狙った商品である。

競技環境への配慮-「より広く」という
新たなパタン開発の方向性
 不安定なダート路での接地性を重視したパタン設計が主流となり、路面コンディション別に加え、競技特性別にパタンを考えるようになってきた。しかし、各々のコンディションで性能を発揮するパタンの設定=細分化は、ユーザーにとって選択の幅が増える一方で、各々の路面用のタイヤを保有しなければならない負担ともなる。そこで、新たな試みとして、これまで路面コンディション別に細分化してきた商品の優れた部分をまとめていく、つまりより広範囲の路面コンディションで優れた性能を発揮する商品が次に目指すものとなった。各々の状況下での性能追求とは異なり、より広い状況に対応する性能の追求という商品のコンセプトは、その開発を含め、新たなチャレンジであった。

 また競技特性の違いも検討を深めていった。

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