免許をまだ持っていない若者が繰り広げた熱戦から、eモータースポーツの魅力を解き明かす
先日、17歳以下を対象にしたeモータースポーツの競技大会「BRIDGESTONE GT タイムトライアル U17 by TOYOTA GAZOO Racing」が開催されました。大会では12歳以下の部と17歳以下の部の2部門を用意。オンラインのタイムトライアルによる予選を勝ち抜いた、12歳以下の部の上位6名、17歳以下の部の上位12名が、10月2日に「RED° TOKYO TOWER」にて開催されたオフラインの決勝イベントへ出場し、熱戦を繰り広げました。
レースの模様や結果については大会のレポートをご覧いただきたいのですが（詳細はこちら）、免許未取得のエントラントのみなさんが、どのようにeモータースポーツを楽しんでいるのかも気になるところ。そこでこの決勝ラウンドへ勝ち進んだ参加者に話を聞きました。
さらに後編では、実況と解説を担当し大会を大いに盛り上げてくれたeモータースポーツ界のトップ選手、山中智瑛選手、イゴール・フラガ選手のふたりにも大会を振り返ってもらいました。
■“少しでも速くなりたい”その思いはリアルと同じ
まず参加者にeモータースポーツを始めたきっかけを聞いてみると、「コロナ禍でおうち時間が増えたから」「グランツーリスモが好きな父の影響で」「レーシングカートをやっていたので練習のために」などさまざま。共通するのは、どの参加者もすぐに毎日プレイするほど夢中になったそう。そしてオンラインでのレースでは、「速い人がこんなにいるんだと驚きました」という参加者もいました。
また、どの参加者も向上心が高く、「ボイスチャットで教えてもらいながら練習しています」というように、どうやってタイムを削るかを日々考え、真剣に取り組んでいます。「毎夜、いいタイムが出るまでは終われなくなりました」という言葉には、みなさん大きくうなずいていました。レースとなれば相手との駆け引きも重要になりますが、まずはタイムアップのために練習しスキルアップするという、自分との戦いにも楽しさを感じているようです。
■リアルなモータースポーツとつながる世界でもある
現在は、eモータースポーツの出身者がリアルな世界のプロレーシングドライバーになるケースも増えています。今回の17歳以下の部で決勝に進出した石水優夢選手や梅津和志選手も、普段はレーシングカートで腕を磨きながらプロドライバーを目指しています。
「eモータースポーツはアクシデントによって車両を壊すという心配がないので、躊躇なく自分の限界まで攻め込むことができます。実はこの思い切りがレーシングカートでのスキルアップに役立つんです」と梅津選手。さらに、「これまでのカートからフォーミュラにステップアップしてプロドライバーになるという進み方のほかに、eモータースポーツからプロドライバーへという道もできました。こういう大会で実績を残すことは、リアルのレースにおいても大きな糧になると思います」と話してくれました。
■eモータースポーツを盛り上げるために走る
一方、17歳以下の部で優勝した佐々木拓眞選手は、eモータースポーツを少し違う目線から捉えています。佐々木選手はeモータースポーツ歴がわずか1年ながら、すでに数々の大会で実績を残しています。リアルのレースも大好きで、SUPER GTなどを観戦することもあるそうで、駆け引きや心理戦を自身のプレイの参考にしているそうです。
けれど、佐々木選手はeモータースポーツをリアルのレースへチャレンジするためのステップとは考えていません。「ぼくはeモータースポーツをさらに盛り上げたいと常に考えています。ゲームというとどうしてもネガティブな印象を持たれがちですが、そのイメージを払拭したい。実車と同じような魅力があるということを分かってもらいたいんです」と言います。
「eモータースポーツの大会はまだ限られているのですが、今回、BRIDGESTONE GT タイムトライアル U17 by TOYOTA GAZOO Racingで、17歳以下というカテゴリーを作ってもらったことで、モチベーションがとても上がりました」と佐々木選手。「結果を残せたこともうれしいのですが、とにかくeモータースポーツが大好きなんです。ですからこのような楽しいレースがあることを、たくさんの人に知ってもらいたい。僕たちのような若い選手が活躍できる大会を見てeモータースポーツに興味を持ってもらいたいと思っています」。佐々木選手は目を輝かせながら、そう語ってくれました。
【後編へ続く】
