フレッシュな戦いにトッププレイヤーが垣間見たeモータースポーツの未来
大きな盛り上がりを見せた「BRIDGESTONE GT タイムトライアル U17 by TOYOTA GAZOO Racing」(決勝イベントのレポートはこちら)。17歳以下を対象にしたeモータースポーツの競技大会で熱戦の空気感を共有した参加者に話を聞いた前編に続き、eモータースポーツ界のトップ選手にも若者たちの戦いを振り返ってもらいました。
■eモータースポーツはさまざまな可能性を持っている
eモータースポーツの頂点で活躍するプレイヤーの目には、今回のイベントはどのように映ったのでしょうか。話を聞いたのは決勝イベントで実況を務めた山中智瑛選手、解説を務めたイゴール・フラガ選手です。
山中選手は、2021年の「TOYOTA GAZOO Racing GT Cup」ワールドチャンピオン。また、イゴール選手は「FIAグランツーリスモ選手権」の初代王者であり、ニュージーランドで開催されるリアルのフォーミュラレース「カストロール・トヨタ・レーシングシリーズ」でも2020年にチャンピオンを獲得するなど、eモータースポーツとリアルのレースの両者を経験。ふたりともeモータースポーツのトッププレイヤーです。
「若い選手たちが、どういったプレイをするのかとても興味がありました。アグレッシブでありながらクリーンなバトルでしたね。厳しいレギュレーションが設けられている中で、各選手がベストな戦略で戦い、力を出せたのではないでしょうか」と切り出したのは山中選手。イゴール選手は、「熱戦が続きましたね。終始ハラハラしながら面白いレースを楽しみました」とレースを振り返りました。また、「みなさん、私たちの将来のライバルです。楽しみましたが、気が引き締まりますね」とふたりが口を揃えたほど、レベルの高い戦いだったようです。
■リアルとバーチャルの違い、それもまたひとつの魅力
イゴール選手はeモータースポーツとリアルのレースの違いを教えてくれました。「例えば、リアルのレースでは身体中にダイレクトに振動が伝わり、車両のインフォメーションを感じやすいんです。バーチャルの世界では車両の向きやエンジンの回転数について、目で確かめたりとリアルではあまり使わない方法が重要になります」とイゴール選手。
「さらに、eモータースポーツにおけるタイヤの摩耗度合いは、観客が見て楽しめるような設定、つまり摩耗が早く進む設定にすることが多く、厳しいレギュレーションになる場合が多いですね」。そうイゴール選手が話すように、バーチャルではレギュレーションが毎回変わり、それに合わせて戦略を組み立てることも欠かせません。そんなところが頭を使うところで、苦労でもあり魅力なのだとか。
そしてイゴール選手は話を続け、eモータースポーツはリアルのレースに活かせる部分も多いと言います。「eモータースポーツはどんどん進化し、車両の挙動がリアルと近くなっているので、効果的にスキルアップできます。また、練習では車種が自由に選べるので、駆動方法や車両のパフォーマンスに合わせて多彩なドライビングスタイルを身につけられます。これはリアルのドライビングにおける状況変化への対応に役立ちますよ」と教えてくれました。
「eモータースポーツは、同じ車種であれば性能が100%同じ。エンジンの調子が悪いといったこともないのでドライバーの腕と戦略によるガチ勝負で世界一が決まります。そこに魅力を感じますが、eモータースポーツとリアルのモータースポーツそれぞれに違った面白さがあるので、これからも両方を続けていきたいと思っています」とイゴール選手は締めくくりました。
■リアル、バーチャルそれぞれに独自の魅力がある
最後に山中選手はeモータースポーツの将来について、「若い選手たちがeモータースポーツで活躍して、憧れられる存在になってもらいたいですね。そういった視点からも、この大会は大きな意義があったと感じています。このような大会がたくさん開催されることで、eモータースポーツだけではなく、多くの方がモータースポーツに触れるきっかけになったら嬉しいですね」と語ってくれました。
例えばリアルのレースのスキルアップのためにシミュレーターを活用する場合もあれば、eモータースポーツを経てリアルレースの世界に足を踏み入れ活躍しているドライバーもいます。2つのモータースポーツの世界は、その垣根がどんどん低くなり、ある意味シームレスなものとして存在していくかもしれません。しかしそんな未来を感じる中でも、リアルのレース、eモータースポーツそれぞれに、独自の魅力が存在するのもの事実。BRIDGESTONE GT タイムトライアル U17 by TOYOTA GAZOO Racingにおいて、参加者がこれほどまでにみなが熱く戦い抜いたのも、そんな魅力を感じ取っているからなのかもしれません。
山中選手やイゴール選手、さらには運転免許をまだ取得していない若い選手たちも楽しみ、活躍するeモータースポーツ。ブリヂストングループは、これからもeモータースポーツをはじめ、幅広いモータースポーツ活動を通じて、安心・安全で楽しいクルマ文化、モータースポーツ文化の発展に貢献していきます。