• 開催場所:鈴鹿サーキット
  • 開催日:2025年08月03日(日) 〜 2025年08月03日(日)
【2025 FIM 世界耐久ロードレース選手権EWC】Rd.3鈴鹿8時間耐久
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2025 FIM EWC第3戦となる鈴鹿8時間耐久は、EWCシリーズとなる以前から合わせると通算46回目となる今大会。今年は例年にも増して、厳しい暑さの中での開催となった。全長距離5.821km、ライダーの手腕が試されるとても難しいコースとして、世界中のライダーが憧れる大会でもある。
公式走行が始まる前の水曜日には、合計5回のテストセッションが行なわれ、木曜日には車検。金曜日の午前から、公式スケジュールのフリープラクティスが始まった。このフリープラクティスでは、#76 AutoRace Ube Racing Team(BMW,BS)が2’04.993を記録、予選前、2分4秒台を記録した唯一のチームだった。フリープラクティスの午前中、既に気温は高く、転倒、赤旗中断が4回という過酷なセッションとなった。



予選


金曜日の午後12時からは予選1回目が行なわれ、2~3名のライダーがそれぞれ20分ずつの予選でラップタイムを競い合った。EWCでは、2回行なわれる予選で、各チーム速いラップタイムを記録した上位2名のライダーの平均によって、予選順位が決まる。更に鈴鹿8耐に限り、予選上位10チームの中でトップ2のタイムを記録した2名のライダーにより、コース上を単独走行でラップタイムを競うトップ10トライアルが行なわれる。予選順位トップ5にはポイントも加算されるため、EWCへシリーズ参戦しているチームにとっては、予選も大切なポイント獲得のチャンスとなる。


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予選1回目、最も速いラップタイムを記録したのは#30 HRC黄腕章ライダーのヨハン・ザルコ2’05.023。青腕章ライダートップは、午前のフリープラクティスでもトップタイムを記録した#76 AutoRace Ubeの浦本修充で2’05.367。赤腕章ライダーのトップは#17 Astemo Pro Honda SI Racing(Honda,BS)山中琉聖で2’05.910だった。予選1回目が行なわれた午後12時からの時間帯は、日差しも強く、気温も路面温度も高い過酷なコンディションでの戦いとなり、転倒も多く、赤旗中断もあった。予選1回目の総合結果では、#30 HRCがトップ、2番手#76 AutoRace Ube、3番手#21 Yamaha Racing Team(Yamaha,BS)の順で平均タイムが速かった。


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ピットウォークを挟み、午後15時30分から始まった予選2回目。1回目に比べ、日差しも傾いたものの、気温はまだ36度という状況で始まった。その中でも、#76 AutoRace Ubeの浦本は2’04.796の予選コースレコードを叩き出し、予選2回目の総合トップタイムを記録。2番手タイムを記録したのは#30 HRCのザルコで2’04.820、黄腕章ライダートップだった。赤腕章ライダートップの#21 YRTアンドレア・ロカテッリ2’05.262は総合3番手タイムだった。予選2回目でも、転倒、赤旗中断があった。


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予選を終えた時点での総合結果は、1番手#30 HRC、2番手#76 AutoRace Ube、3番手#21 YRT。以下もトップ10トライアル出場権を獲得した全10チームは、全てブリヂストンサポートチーム!金曜日には、18時30分からナイトフリープラクティスも開催され、ライト点灯の夜間走行まで堪能できる1日となった。

トップ10トライアル


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土曜日は、午前からトライアルバイクのデモンストレーションやライダートークショー、ピットウォークなど、走行以外でも楽しめる催しが鈴鹿サーキットでは数多く行なわれた。来場した観客はそれぞれが好きな場所を思い思いに楽しんでいた。14時15分からはフリー走行2が行なわれ、この走行では#21 YRTが2’04.720を記録。予選で#76 AutoRace Ubeが記録したコースレコードを更新した。今大会に入り、転倒や赤旗中断が多かったが、このセッションでは転倒も少なく、赤旗中断もなかった。


トップ10トライアルでは、気温36度、路面温度は60度を超えると言われた過酷な環境でスタート。予選10位までの各チーム2名のライダー達は、5.821kmのコースを単独でタイムアタックするという喜びとプレッシャーの中、極上のバトルを観客に披露した。トップ10トライアル前半では、予選6位から10位までのチームが走行し、#73 SDG Team HARC-PRO. Honda(Honda,BS)國井勇輝が2’05.477を記録してトップタイムだった。


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後半は、予選5位から1位のチームが走行。最速タイムで走行中の#21 YRTジャック・ミラーが記録を更新途中で転倒というハプニングもあった中、その後に走行した#21 YRTロカテッリが2’04.316の新コースレコードを記録。最終走者となった#30 HRCザルコに注目が集まる中、#30 HRCザルコは2’04.290を記録し、コースレコードを再び更新。#30 HRCがポールポジションを獲得した。グリッド2番手となったのは#21 YRT。3番手#76 AutoRace Ube、予選でトップタイムを記録していた浦本が2’05.001を記録した。

決勝


日曜日は、午前8時30分からウォームアップ走行があり、各チームが最後の調整を行い、決勝へ備えた。スタート前には、今大会を看病のためにキャンセルしたEWCレギュラー参戦ライダーのシルバン・ギュントーリのご子息が大会の期間中に逝去した事に伴う追悼セレモニーも行なわれた。決勝当日もトライアルバイクのデモンストレーションや各ブースのイベント、ピットウォークなどがあり、ホンダとポケモンのコラボモンスターのコライドンが登場するなど、鈴鹿サーキット全体がお祭り騒ぎの中、11時30分に決勝は始まった。


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鈴鹿市出身の歌手、清水美依沙が国歌斉唱を行ない、耐久レース特有のライダーが車両まで走るルマン式スタートで始まった決勝は、ポールポジションの#30 HRCがホールショットを獲得。好スタートの#73 HARC-PRO.が1周目に#30 HRCを捉えてトップを奪った。しかし30分を超えて、バックマーカ―が現れると、#30 HRCは再びトップを奪い返し、そこからペースを上げる。気温は36度、路面温度は最高69度とも言われた状況下で、1周目から転倒も多かった。


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1時間が経過した頃、13番手を走行していた#5 F.C.C. TSR Honda France(Honda,BS)がマシントラブルでピットイン、27周でリタイア。4番手を走行していた#1 Yoshimura SERT Motul(Suzuki,BS)は転倒、マシンに大きなダメージはなく、そのまま走行を続けた。1時間50分ごろ、トップの#30 HRCは50周を超え、2番手#21 YRTとの差は13秒程度だった。3番手には#7 YART-YAMAHA(Yamaha,BS)が上がり、#73 HARC-PRO.と#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM(BMW,BS)の3チームで3番手を争っていた。#17 Astemo Pro Honda SI Racing(Honda,BS)は、ピット作業を続けていたが、64周でリタイア。


2時間を超えて#7 YARTが転倒、1度は4分程のピットインで再スタートしたものの、再びピットイン。30番手まで順位を落とした。3番手に上がった#37 BMWは、速いペースで快走していたものの、2時間30分を超えて、マシントラブルからピットイン、更に外れたパーツが絡まり転倒を喫し、21番手まで順位を落とした。トップは#30 HRCと#21 YRTのワークス2チームが2分7秒台をマークする速くペースでトップ争いを続けた。


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3時間30分を超えると、トップ#30 HRCは100周を超えた。2番手#21 YRTもそれに続く。3時45分前後には、一時4番手まで順位を上げていたEXPクラスの#0 Team Suzuki CN CHALLENGE(Suzuki,BS)が5コーナーで転倒。7番手を走行していた#71 Honda Dream RT SAKURAI HONDA(Honda,BS)も4コーナーで激しい転倒。その後もトップ2は変わらず、3番手が#73 HARC-PRO.で、レース半分を折り返すこの頃になると、序盤に転倒があった#1 Yoshimuraが順位を回復、#73 HARC-PROと3番手争いを始めた。


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折り返して間もなく、転倒から15番手まで順位を回復していた#7 YARTがエンジントラブルからシケインで再び転倒、ピットには戻ったものの111周でリタイア。4時間30分を経過する頃、#95 S-PULSE DREAM RACING(Suzuki,BS)が3コーナーで転倒。5時間を経過すると#21 YRTが140周目に2’06.979のここまでのチーム最速を記録、ペース配分を緻密に行う#30 HRCを追った。トップの#30 HRCは5時間30分を迎える頃には150周を超え、過去最高周回数を上回る可能性のペースで走っていた。

この頃になると、#1 Yoshimuraと# 73 HARC-PRO、#40 TeamATJ with docomo Buisiness(Honda,BS)が3番手争いを繰り広げた。その後ろ6番手には、6周目に2’06.918を記録し、前半のベストラップだった#76 AutoRace Ubeが着けた。更には、中盤の転倒で順位を落としていた#37 BMWがこの頃になると7番手#7まで挽回し、6 AutoRace Ubeに迫った。続く8番手には#11 Kawasaki Webike Trickstar(Kawasaki,BS)が続いた。


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トップの#30 HRCは155周目2’06.895を記録、ここまでの決勝レースラップ最速を更新。安定してトップ走行を続けた。6時間が経過して、少し日が傾き出した頃、ヘアピンカーブで激しい転倒があり、今大会初めてのセーフティーカーが導入。トップ2の差が一時2.9秒まで縮まった。6時間20分を過ぎてレースは再開され、#30 HRCはバックマーカーを上手くかわして再び#21 YRTとの差を広げた。176周目には#30 HRCが2’06.670でレース最速ラップを更新。#73 HARC-PRO.と#1 Yoshimuraの3番手争いは、セーフティカーの導入により益々激化。


時刻は18時を超えて、ようやく日が沈み始め、マシンのライトと夕日が美しい時間帯となった。暑い中、観戦を続ける観客にも、日陰ができ、コースサイドも多少過ごしやすい時間となった。再びトップ#30 HRCが独走に近い状態となり始めたが、路面温度が多少下がり出すこの時間帯、#21 YRTが190周目に2’06.604の今大会決勝最速ラップをマークして追った。


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いよいよ残り1時間を切った7時間10分ほど経過した頃に、エアクッションが壊れる程の転倒があり、2回目のセーフティーカーが導入された。#30 HRCはこのタイミングでピットイン。コース上のトップは#21 YRTとなった。10分程度のセーフティーカー走行後、レースは再スタート。残り時間35分ほどで、3番手争いが白熱している#73 HARC-PRO.とトップ走行中の#21 YRTが燃料補給が必要なためピットイン。この間に、トップは再び#30 HRCが奪還し、3番手には#1 Yoshimuraが上がった。


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時刻19時、残り時間30分ごろになると、西日の眩しさもなくなり、グランドスタンドの観客は、赤、2種類の青、緑などのサイリウムを持ち、観覧車も光輝き、鈴鹿ならではの感動的な景色になった。トップを走行する#30 HRCは終始安定した走りで、トップのままチェッカー。過去一番暑かったのではないかと言われる過酷な環境の中、やむを得ず急遽決まったライダー二人体制で217周を走破。鈴鹿8耐4連勝を決めた。


2位は、決勝レース最速ラップを記録した#21 YRT。3位には、序盤の転倒を挽回した#1 Yoshimura。表彰台のインタビューで、#1 Yoshimuraのグレッグ・ブラックは、かつて一緒に#1 Yoshimuraに在籍していたギュントーリの息子、ルカ君にこの表彰台は捧げると話していた。
4位は最後まで表彰台争いを魅せた#73 HARC-PRO.が入った。5位は転倒後、徐々に順位を回復し続けた#37 BMW。6位は予選で速さを披露した#76 AutoRace Ube。7位は#40 TeamATJ docomo Buisiness、8位が#11 KWT。灼熱の今年の鈴鹿8耐決勝は、トップから8位までをブリヂストン勢が独占した。
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表彰台では、二人で8時間を走り切った#30 HRCヨハン・ザルコが昨年に続き、バック転を披露したり、#21 YRTジャック・ミラーらがオーストラリア人ライダー発祥のブーツでシャンパンを飲むシューイを見せたりで盛り上がった。鈴鹿サーキットでは毎年恒例の花火も上がった。


EWCチャンピオンシップは8時間耐久レースでは、トップから30ポイント、2位24ポイント、3位21ポイント、4位19ポイント、5位17ポイント、6位15、7位14、8位13…の順でポイントが加算される。FIM EWC Rd.3鈴鹿8耐の結果を踏まえ、現在トップは88ポイントで#7 YART、2番手87ポイントで#37 BMW。3番手83ポイントで#11 KWT、4番手73ポイントで#1 Yoshimura。6番手#6 ERC ENDURANCE #6(BMW,DL)、7番手に58ポイント#5 TSRとなっている。最終戦ボルドール決勝では、通常の24時間レースの1.5倍ポイントが加算される事もあり、チャンピオンの行方は予想もつかない状態となった。EWC Rd.4ボルドールは9月18日から始まる。

レース結果

コース:鈴鹿サーキット

決勝

  • 開催日:2025/08/03
  • 天候:Fine
  • 路面:Dry
  • 決勝出走:55
  • 完走:41
  • (5.821km x 217laps = 1263.157km)
順位 No ドライバー タイヤ チーム マシン シャシー エンジン 周回数 Delay(Lap) ベストタイム ベストラップ タイム
1 30 高橋 巧 /J. ザルコ BS Bridgestone Team HRC CBR1000RR-RSP ホンダ 217 176 02:06.670 8:00:26.580
2 21 中須賀 克行 /J. ミラー/A. ロカッテリ BS Bridgestone YAMAHA RACING TEAM YZF-R1 ヤマハ 217 190 02:06.604 8:01:00.823
3 1 G. ブラック /D. リンフッド/渥美 心 BS Bridgestone YOSHIMURA SERT MOTUL GSX-R1000R スズキ 216 1 3 02:07.426 8:02:21.836
4 73 名越 哲平 /阿部 恵斗/國井 勇輝 BS Bridgestone SDG Team HARC‐PRO. Honda CBR1000RR-R ホンダ 216 1 10 02:07.810 08:02:34.845
5 37 M. レイターバーガー /M.V.D.マーク/S. オデンダー BS Bridgestone BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM M1000RR BMW 215 2 56 02:07.332 8:02:41.731
6 76 浦本 修充 /L. バズ/D. トッド BS Bridgestone AutoRace Ube Racing Team M1000RR BMW 214 3 178 02:06.629 8:01:30.145
7 40 岩田 悟 /鈴木 光来/國峰 琢磨 BS Bridgestone TeamATJ with docomo business CBR1000RR-RSP ホンダ 214 3 6 02:07.715 8:01:56.757
8 11 R. ラモス アルバロ /M.D. メリオ/G. ルブラン BS Bridgestone Kawasaki Webike Trickstar ZX-10R カワサキ 213 4 5 02:08.513 8:01:17.875
9 99 R. ド プニエ /F. マリノ/J. グアノニ DL Elf Marc VDS Racing Team / KM99 YZF-R1 ヤマハ 213 4 83 02:09.124 8:01:56.310
10 88 N. アティラプワバ / A.H. アヌアール/M.Z.ザイディ BS Bridgestone Honda Asia-Dream Racing with Astemo CBR1000RR-R ホンダ 213 4 10 02:09.163 8:02:56.218
11 6 I. ミハルヒク /K. フォレイ/D. チェカ DL ERC Endurance #6 M1000RR BMW 212 5 176 02:08.480 08:01:01.538
12 9 関口 太郎 /亀井 雄大 BS Bridgestone SANMEI Team TARO PLUSONE with SDG M1000RR BMW 211 6 82 02:10.084 8:01:09.670
13 50 児玉 勇太 /菅原 陸/M. スタファー BS Bridgestone MARUMAE Team KODAMA YZF-R1 ヤマハ 211 6 10 02:09.062 08:02:23.657
14 20 K.I. パウィ /青田 魁/杉山 優輝 BS Bridgestone Honda Suzuka Racing Team CBR1000RR-RSP ホンダ 209 8 95 02:09.453 08:02:01.331
15 59 津田 一磨 /前田 恵助/R.ムルハウサー BS Bridgestone Team BabyFace Titanium Power YZF-R1 ヤマハ 209 8 142 02:09.153 08:02:06.761
16 25 大久保 光 /渡辺 一樹/伊藤 元治 DL TEAM ÉTOILE M1000RR BMW 208 9 196 02:10.791 08:02:24.375
17 93 星野 知也 /吉田 愛乃助/L. メルカド DL TONE Team 4413 EVA 02 BMW M1000RR BMW 208 9 193 02:10.689 08:02:45.416
18 49 K. カリア /S. サルタレッリ/F. フェローニ DL Revo-M2 RSV4 アプリリア 206 11 84 02:11.752 08:02:03.640
19 777 J. トレス フェルナンデス /M. パヴェレック/M. モリク DL Wójcik Racing Team #777 SST CBR1000RR-R ホンダ 206 11 163 02:10.931 8:02:15.498
20 75 吉田 光弘 /小島 一浩/大和 颯 DL Honda Kumamoto Racing & Hamamatsu ESCARGOT CBR1000RR-RSP ホンダ 205 12 111 02:12.994 8:02:01.857