2025年シーズンもブリヂストンタイヤとともに、GR86/BRZ Cupのプロフェッショナルシリーズに挑むドライバーたち。
今回紹介する5名は、プロに挑むアマチュア、開発ドライバーとしての責任を背負う選手、そしてブリヂストン勢を牽引する存在──。
それぞれのドライバーを今シーズンの展望とともに紹介していきます。






#5 レストアパーツBSまんさくGR86(チーム:まんさく自動車)
レストアパーツBSまんさくGR86


井上 尚志(いのうえたかし)選手井上 尚志(いのうえたかし)選手
初年度(2013年)のGR86/BRZ Cup(当時:GAZOO Racing 86/BRZ Race)から全戦に出場し、プロドライバーに挑戦し続けるアマチュアドライバー。岐阜県の「まんさく自動車」の代表としてサーキット仕様のチューニングやサポートにも精通し、86系イベントではブース出展をするなど、サーキットでその姿を見かけたファンも多いはず。レースだけでなく音楽活動にも力を注ぎ、NHK「オヤジバトル」全国大会で準グランプリを受賞するなど、多彩な才能を持つ。


【Driver comment】
RE-10Dの進化を探りながら、13年目の挑戦を続ける

「若い世代、勢いのあるドライバーたちの中に、なんとか食い込んでいきたいですね。
今のところ、ロングではそこそこのところまで持ってこられていて、バランスも整ってきたと思います。ただ、新品タイヤでのタイムがしっかり出せていなくて…。ロングとニューのバランスをしっかり整えて、上位陣についていきたいです。
今シーズンのRE-10Dは、路面に対する反応が良くなった印象で、ロングではそのメリットを感じています。一方で、予選の一発に関しては、まだ特性を掴みきれていない感じですね。グリップのピークも高くなっているので、そこを探っている段階です。
RE-10Dの性能をきちんと引き出すことが、今シーズンの目標の一つです。気づけばこのレースも13年目。ブリヂストンタイヤとともに走り続けてきましたが、今シーズンのタイヤは、これまで以上に自分の感覚にフィットしてきている印象があります。
中〜高速コーナーの多いサーキットが自分には合っているので、そこで当たればラッキー。狙いは鈴鹿ですね」






#7 CABANA BS GR86(チーム:T by Two CABANA Racing)
CABANA BS GR86


堤 優威(つつみゆうい)選手堤 優威(つつみゆうい)選手
2014年にもてぎスーパーFJで四輪レースデビュー。ロードスターパーティレースで初年度にチャンピオンを獲得し、スーパー耐久でも活躍。18年に86/BRZレース第2戦で優勝を果たし、一躍注目を集める。SUPER GT/GT300には2020年にスポット参戦し、その実力が評価され翌2021年からフル参戦。現在はブリヂストンのタイヤ開発にも携わり、豊富な経験を活かして多方面で活躍している実力派ドライバー。


【Driver comment】
開発タイヤで頂点へ、自身の仕上がりが勝負を決める

「今シーズンは、チームとして一台体制になり、より自分に注力する形を取ってもらっています。テストの機会も増えて、チャンピオン獲得に向けた体制をしっかり整えてもらっているので、自分がミスなく走ることができれば、ブリヂストン勢のトップはもちろん、シリーズタイトルも狙っていけると思っています。
僕自身も開発に関わったRE-10Dは、より一発のタイムが出る方向に仕上がっていて、感触は非常にいいです。この勢いで、シーズンを突き進んでいきたいですね。
グリップは全体的に向上していて、特に一発のピークはしっかりとあります。そのぶんセットアップも見直す必要があり、難しさはありますが、そこはドライバーとしてしっかり対応していきたいです。タイヤの性能としては非常に高く、期待通りの成果が出ていると感じています。
ホイール「POTENZA RW007」の剛性の高さもトラクションにプラスに働いていて、縦方向はホイールの剛性を活かして、タイヤのグリップを最大限引き出して、タイムにつなげていきたいと思います」






#18 IBARAKI TOYOPET GR86(チーム:IBARAKI TOYOPET RACING TEAM)
IBARAKI TOYOPET GR86


中山 雄一(なかやまゆういち)選手中山 雄一(なかやまゆういち)選手
TGR-DCの育成ドライバーとしてキャリアを積み、全日本F3選手権クラスでシリーズチャンピオンを獲得。SUPER GTではGT300クラスで通算7勝を挙げた後、GT500へとステップアップし、トップカテゴリーでも実績を残してきた。近年はGR86/BRZ Cupにもフル参戦し、その存在感を高めていたが、2024年シーズンをもってGT500での活動はいったん区切りを迎え、今後は海外レースへの挑戦を主軸に据える方針に。GR86/BRZ Cupも今季はスポット参戦となるが、その豊富な経験と実力で引き続き注目を集める存在だ。


【Driver comment】
海外レースと並行する中でも、限られた参戦で全力勝負

「今シーズンは海外レースの機会が増えていて、スーパーGTの活動は一旦お休みしています。その分、海外での経験を積むプロジェクトが進んでいます。その影響でGR86/BRZ Cupレースは少なくとも2戦の欠場が確定しているので、シリーズをフルに戦って上位を狙うのは難しい状況です。
それでも、この86/BRZレースの高いレベルの中で走ること、そしてブリヂストンのタイヤ開発が日々進んでいく現場に身を置くことは、自分にとって非常にプラスだと感じています。また、茨城トヨペットレーシングから、クラブマンシリーズにもフル参戦するドライバーが増え、チーム全体としてもモチベーションが上がっているので、自分が出られるレースではしっかり取り組んで、少しでもみんなの力になりたいですね。もちろんその中で、自分の持ち味を出していければと思っています。
RE-10Dは昨年から大きくキャラクターが変わった印象です。グリップが大幅に向上していますね。そのぶん、タイヤへの入力がより大きくなり、車両にも今まで以上にGがかかるので、ドライビングでもセットアップでも、その負荷をうまくコントロールしないとタイムにつながらない。そういった難しさがあるのが、やはりこのレースの面白さでもあります」






#34 小倉クラッチ BS OTG GR86(チーム:OTG MOTOR SPORTS)
小倉クラッチ BS OTG GR86


佐々木 雅弘(ささきまさひろ)選手佐々木 雅弘(ささきまさひろ)選手
高いセットアップ能力を武器に、ツーリングカーレースでキャリアを築いてきた実力派ドライバー。2015年より86/BRZレースに本格参戦し、翌2016年にはタイトルを獲得。以降、シリーズを象徴する存在となる。POTENZAタイヤおよびホイールの開発ドライバーを務め、彼が手がけたタイヤでこれまでに3人のシリーズチャンピオンが誕生。技術と実績の両面からシリーズを支えるキープレイヤーである。


【Driver comment】
新たな体制で挑む再スタート、勝てるクルマと共に気持ちも一新

「今シーズンはチームを移籍して、新たなスタートという気持ちでGR86に乗っています。このチームに来て、クルマのポテンシャルが一気に上がった実感があります。やった分だけ返ってくるという手応えがあるので、もう一度モチベーションを立て直して、自分の持ち味を取り戻していきたいですね。クルマに見合う走りができるよう、ドライバーとしてもしっかり調整していく必要があると感じています。
同じチームにはチャンピオン経験者の菅波選手がいるので、ロガーデータを見ながらドライビングスタイルを合わせていけるのも大きなメリット。冷静に状況を見ながら、自分の引き出しを広げていきたいと思っています。
今シーズンのRE-10Dは、一発のタイムでも十分戦えるレベルに来ています。ロングの感触も悪くなく、総合的にかなりいい仕上がりです。
このタイヤの強みはトラクションの良さにあると感じていて、立ち上がりの部分でしっかり前に出せる感触があります。コース特性を見極めながら、その強みを活かしていけば、負けるタイヤではないと思っています。
非常に高剛性で信頼性の高いホイール「POTENZA RW007」は、当初「オーバースペックかも」と感じるほどしっかりしたものを作りましたが、今回のアップグレードされたタイヤ性能に対しても全く負けていません。グリップと剛性がしっかりバランスしていて、開発に関わった立場としても満足しています」






#87 千葉スバル BS BRZ(チーム:Team Takuty)
千葉スバル BS BRZ


久保 凜太郎(くぼりんたろう)選手久保 凜太郎(くぼりんたろう)選手
カートを経て四輪に転向し、Super FJでシリーズチャンピオン、全日本F3では開幕戦でポール・トゥ・ウィンを飾るなど、若くして頭角を現す。さまざまなカテゴリーで経験を重ね、2020年にはSUBARU BRZを駆り、GR86/BRZ Cup(当時のGAZOO Racing 86/BRZ Race)においてBRZ勢として初のシリーズチャンピオンに輝いた。レース経験と確かな技術を武器に、安定したパフォーマンスを発揮し続けている。


【Driver comment】
一発の手応えとロング性能の両立に挑むシーズン

「昨シーズンは、タイヤへの対応やクルマとの合わせ込みに時間がかかってしまい、結果に繋がらず、悔しさが残りました。もう一押しできるはずの部分を活かしきれなかったという思いがあります。
今シーズンのRE-10Dは、全体的なグリップ性能の高さはもちろん、ロングランでもしっかりと性能を保ってくれる印象です。実際に他車よりも多くの周回を重ねた状態でも、ラップタイムの落ちがほとんど見られなかったのには驚きました。
今シーズンも使っているものは大きく変わっていませんが、ブレーキパッドをチームメイトの井口選手と共通化して2台で情報を共有できる体制を整えました。また、現場に来てくれているSUBARUディーラーのメカニック全員と連絡を取り合い、僕とエンジニアとのやりとりを共有できるようにしています。レース現場での即応性を高める取り組みとして、こうした体制面にも力を入れています。
今年は、この新しいタイヤと、昨年足りていなかった部分をしっかり見直して、自分としても納得のいくレースを積み重ねていきたいと考えています。そのための準備は、しっかりと進めてきたつもりです」