今シーズンもブリヂストンタイヤとともに、GR86/BRZ Cupのプロフェッショナルシリーズに挑むドライバーたち。
後半に紹介する5名は、チーム体制の変化や地元との連携を力に変える存在、安定したロング性能に加えて予選での一発の速さを追い求めるドライバー──。
共通しているのは、進化したRE-10Dをどう使いこなすか、という問いに真剣に向き合う姿勢。
それぞれの走りが導く“タイヤと戦うレース”のリアルが、ここから浮かび上がる。






#88 東京スバル BS BRZ(チーム:Team Takuty)
東京スバル BS BRZ


井口 卓人(いぐちたくと)選手井口 卓人(いぐちたくと)選手
TOYOTA GR86/BRZ Cupのほか、SUPER GTではSUBARU BRZ(R&D SPORT)をドライブし、シリーズを代表する86/BRZスペシャリストの一人。SUPER耐久やニュルブルクリンク24時間レースにもSUBARU車で参戦し、SUBARUを代表するドライバーとして多くのカテゴリーで長年活躍している。2023年からは自身のチームを立ち上げ、GR86/BRZ Cupにもチームオーナー兼ドライバーとして挑戦。参戦初年度にシリーズチャンピオンを獲得するなど、確かな実力と統率力を発揮している。彼の地元・福岡県柳川市の観光大使も務め、地域とのつながりも大切にしている。


【Driver comment】
まだまだ進化できる感触、RE-10Dの伸び代を武器に変える

「今シーズンは新しいRE-10Dが登場したこともあり、ブリヂストンユーザーで予選の上位を固めて、「打倒・菅波選手」を目指して戦っていきたいと思っています。
チーム体制としては、第2戦からプロクラスにチームから3台目のマシンが参戦します。これまで活動の形をいろいろと模索していたなかで、レースにも理解がある栃木スバルさんとのご縁をいただき、3台目のBRZを走らせることになりました。チーム、千葉スバル、そして東京スバルでの取り組みがきっかけで、全国のスバルディーラーに私たちのレース活動が少しずつ認知されてきた実感があります。簡単にできる環境ではないからこそ、こうした動きがさらに広がっていくことを願っています。
RE-10Dについては、開発段階から走行させてもらっていて、ピークのグリップ感は明確に向上していると感じています。実はテストに入った段階では、タイヤの方向性はある程度決まっていたのですが、それでもレースウィーク中に比較対象となる他社タイヤの情報や印象は都度伝えていて、それが最終的な仕上がりにも活かされたのかなと感じています。テストで最初に乗ったときのグリップの高さには本当に驚きました。まだオートポリスでのテストができていないなど、詰める余地はありますが、今シーズンを戦っていく上で、非常に期待できるタイヤになっていると思います」






#121 tomica ネッツ兵庫 BS GR86(チーム:ネッツ兵庫レーシングチーム)
tomica ネッツ兵庫 BS GR86


蒲生 尚弥(がもうなおや)選手蒲生 尚弥(がもうなおや)選手
SUPER GTやスーパー耐久でメルセデスAMG GT3をドライブし、GTカテゴリーで実績を重ねる実力派ドライバー。2018年にはSUPER GT・GT300クラスでシリーズチャンピオンを獲得し、現在もLEON RACINGの一員としてステアリングを託されている。キャリア初期からブリヂストンタイヤとの関係も深く、F3や現在のGTカーでも同社のタイヤを使用。ポテンザサーキットミーティングでは講師としてアマチュアドライバーの指導にもあたっており、実戦と育成の両面でシリーズを支える存在だ。


【Driver comment】
さらに引き上げられたグリップ特性を味方に、安定した走りで確実に仕掛ける

「昨年は、優勝とポールポジションを目標にしていたんですが、どちらも達成できませんでした。それでも、これまで以上に安定した成績を残せたと思っています。毎戦トップ集団の中でレースができていたことは、自分の中でも大きな手応えでした。今年はその戦い方をさらに深めてまずは1勝したい。それに向けて、しっかりと準備をして戦っていきたいと思っています。
チームについては、特別な立ち位置や役割を意識しているわけではなく、とにかく「みんなで結果を出す」ことが一番。スタッフや仲間とともに努力して、ひとつの結果をつかむことができたときの達成感や充実感は、何にも代えがたいものです。そういう意味でも、結果にはこだわっていきたいですね。
今シーズンから新しくなったRE-10Dは、昨年のモデルに比べて一発のタイムも出しやすくなり、ロングランの安定感も高まった印象があります。全体として「正常進化」という言葉がぴったりで、ドライバーとして信頼して走れるタイヤに仕上がっていると感じます。
とくに印象的なのは、縦と横のグリップの“中間”と言えるような、斜め方向のグリップの粘り感です。コーナリング中にしっかりと踏ん張ってくれる感触があって、たとえばハンドルを深く切ったときの旋回性能が高くなっている。クルマがしっかり曲がってくれる、そんな印象を持っています。
ホイール「POTENZA RW007」との相性も非常に良く、全体のパッケージとしての完成度は非常に高いと思います。安心して攻められる足元があるというのは、ドライバーにとっては大きな武器ですね」






#160 GRG浦和美園 IDI BS GR86(チーム:GR Garage浦和美園 with GB)
GRG浦和美園 IDI BS GR86


吉田 広樹(よしだひろき)選手吉田 広樹(よしだひろき)選手
埼玉トヨペットGreen Braveに所属し、SUPER GTやスーパー耐久など国内トップカテゴリーで活躍を続ける実力派。GTと並行して2020年からGR86/BRZ Cupにも参戦し、常に上位を争う存在として注目を集めている。2023年はスーパー耐久ST-Zクラス、SUPER GT GT300クラスの両シリーズでチャンピオンを獲得し、キャリア初のダブルタイトルを達成。GR86/BRZ Cupでもブリヂストンタイヤを武器に、鋭い走りと高い安定感でライバルから一目置かれる存在だ。熊本県出身で、現在はオートポリスのアンバサダーも務めている。


【Driver comment】
新タイヤの特性を見極め、予選・決勝両面で上位を狙う

「昨シーズンは、納得のいくレースが少なく、全体的には悔しさの残るシーズンでした。レースでは後半にペースを上げて追い上げる展開が多かったのですが、やはり予選で前にいないと勝負にならないという現実をあらためて痛感しました。今シーズンは、新しくなったブリヂストンタイヤの性能を活かして、予選からしっかり前に出ることを意識したいと思っています。レースで強いだけでなく、トータルで戦える体制を整えて、チャンピオン争いに絡んでいけるような一年にしたいですね。
RE-10Dは、フロントの入りが良くなった感触があります。予選で前に行くことの重要性が高まっている今、まずは上位グリッドを確実に取りにいく方向でセットアップを詰めていきたいです。
エントリーは今年も個人で行っていますが、体制としては変わらず埼玉トヨペット GR Garage 浦和美園さんにメンテナンスをお願いし、地元・熊本のGR Garage 熊本中央、そしてユナイテッドトヨタ熊本さんからメカニックを派遣していただいています。今年は地元からのサポートがさらに厚くなっており、開幕戦がオートポリスということもあって、ピットツアーに来てくださる方々もいて、地元とのつながりを感じながら走れるシーズンスタートとなりました。昨年始めたこのプロジェクトに対する認知や応援も少しずつ広がってきていて、自分自身のモチベーションにもつながっています」






#293 ネッツトヨタ南国BSGR86(チーム:KSM)
ネッツトヨタ南国BSGR86


岡本 大地(おかもとだいち)選手岡本 大地(おかもとだいち)選手
2021年に鈴鹿・岡山両シリーズでスーパーフォーミュラ・ジュニア(S-FJ)二冠を達成し、2024年には日本一決定戦で初優勝。予選からファイナルまで一度もトップを譲らない完璧なレースで、その実力を証明した。現在はGR86/BRZ Cupプロフェッショナルシリーズやスーパー耐久シリーズにも参戦し、確かな経験を重ねながら成長を続けている。磨き上げた走りで、次世代ドライバーの“壁”として立ちはだかる存在を目指す。


【Driver comment】
冷静な展開力で勝負、予選強化とロング安定性が鍵

「チーム体制は昨年と変わらず、同じメンバー、同じメカニックで2025年も戦います。昨年は表彰台にも届かず苦しいシーズンでしたが、チーム全体で課題を洗い出してきたので、今年は表彰台、そして優勝、さらにはチャンピオン争いに絡めるように一丸となって取り組んでいます。
RE-10Dに関しては、見た目は従来と変わらないものの、乗ってすぐに「明らかにグリップが上がっている」と感じました。ピークグリップの出しやすさやウォームアップの速さといった面で進化を感じており、昨年よりも“使える幅”が広がった印象です。一方で、クルマとの合わせ込みがまだ完全にはできておらず、正直、自分のなかでも「使いこなせていない」という感覚が残っています。第2戦までにはしっかりタイヤ特性を理解して、100%のパフォーマンスを引き出せるようにしていきたいです。
自分のレーススタイルとしては、決勝で順位を上げていく展開が多く、ロングランの使い方に強みがあります。特にフォーメーション中のタイヤの熱入れには自分なりの方法があり、そこは一つの武器だと思っています。一方で課題はやはり予選の一発。今シーズンはそのショートランのパフォーマンスをしっかり上げて、目標とする結果につなげたいと考えています」






#330 OKINAWA GR86(チーム:オキナワドリームレーシング)
OKINAWA GR86


平良 響(たいらひびき)選手平良 響(たいらひびき)選手
沖縄出身のドライバーとして国内外でキャリアを重ね、2020年にはFIA-F4で圧倒的な強さを見せてチャンピオンを獲得。スーパーフォーミュラ・ライツやSUPER GTでも活躍し、2023年はスーパー耐久シリーズでシリーズタイトルを手にした。SUPER GTでは堤優威選手とコンビを組み、HYPER WATER Racing INGINGをドライブ。さらに、沖縄トヨタを母体とする新チームでGR86/BRZ Cupにもフル参戦し、ブリヂストンタイヤでの知見を深めながら、幅広いカテゴリーで新たな挑戦を続けている。


【Driver comment】
沖縄からの新体制で挑む初年度、焦らず確実に力を引き出す

「今シーズンは、沖縄トヨタを母体とした新チームでの初年度になります。メカニック全員が沖縄から来ており、クルマも沖縄で組み上げて本州へ持ち込んでいるという体制なので、前半戦はまずレースウィークの流れを安定させることを優先したいと考えています。焦らず、シーズン中盤あたりからチームとしてのリズムを掴んで、そこから結果を出していければいいかなと。
今回から初めて使用するRE-10Dは、一発のタイムがしっかり出せるようになったという印象があります。これまで苦手だった予選での勝負にも戦闘力が出てきた感覚があり、冷えた路面でもグリップしてくれる性能に期待を持っています。温度と内圧をきちんと合わせれば、朝イチのコンディションでも十分にポテンシャルを引き出せると思っています。
ホイールは今季から使い始めた高剛性タイプで、走行中にその特性をはっきり感じ取れます。タイヤが潰れていく挙動をしっかり伝えてくれるので、グリップのピークを掴みやすいですし、クルマとの一体感が増しているのを実感しています。
86はロングで3~4秒ラップタイムが落ちる特性がありますが、その中でも焦らず、タイヤに優しい走りを心がければペースを維持できるはずです。自分のドライビングとしては、タイヤが厳しくなった場面でも落ち着いて対応することを意識していきたいですね。
速いドライバーが多い中で、堤選手のようなトップを走る存在の背中を、まずは近くで見られるように、自分のポジションを一つでも上げていけるように頑張ります」