ジムカーナドライバーのレース以外の部分が垣間見られるリレーインタビュー第5回は前回の小林選手が、「全日本ジムカーナにも若い人いるって事を伝えたい」という事でSHUN選手です。今回もブリヂストンのWEB会議システムを使ってインタビューを実施していきます。

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小林選手(以下、小林):なかなかかしこまって話す事が無いので難しいですね。
SHUN選手(以下、SHUN):かしこまって話すのは緊張しますね。
小林:さっそくですがSHUN君の事を聞いたことなかったので色々教えてください。まずジムカーナをやりはじめたきっかけは?
SHUN:クルマの世界に入ったのは大学生の時からなんです。高校生までは野球一筋10年くらいやっていたんですが、怪我をしてしまって肩もひじもボロボロになっていて、大学で野球をやろうかなとは思っていたんですけどそれが中々難しい状況でした。そこでなにか新しく挑戦できることを始めたいなと思った時に、たまたま大学の新人歓迎イベントの中で自動車部がある事を知りました。最初のイメージは自分で整備をしてクルマをつくって…というメカニック的な事ばかりをやる部活だと思っていたんですけれど、実際には自分で整備もするんですけど、クルマでサーキット走れるというのが売り文句だったので、それはおもしろそうだなと思って、クルマには詳しくなかったんですけど直感で自動車部の世界に飛び込んだんですね。
小林:という事は子供の頃からはクルマに興味がなかったの?
SHUN:まったく興味が無かったわけではなくて、3-4歳の時に第1次クルマブームがあったらしくて、ただ自分ではほとんど記憶は無いんですけど、ミニカーをたくさん買ってもらった記憶は確かにあって、当時のスポーツカーとかトミカにあるクルマの名前はほぼ憶えていて、街中で走っているクルマの名前を言えたらしいですけど。
小林:らしいって(笑)
SHUN:大学生のときはほぼ全部忘れていたんですけど。全く嫌いだったわけでは無かったので、大学でまたクルマが好きになる事にも抵抗は無かったです。
小林:小学生から高校生まではクルマとは離れた感じ?
SHUN:小学生に入ってからは野球を始めたので、そこからはクルマを忘れて野球一筋、という生活でした。なのでクルマとはほとんど縁が無い生活が続いていたんですけど、一つだけクルマと接点があって、通学路が一緒だった同級生にクルマ好きの子がいて、その子がひたすらクルマの話をしてくれたんですね。ゲームも一緒にやったりして。その時にグランツーリスモ4を買って、ちょっとですけどレースゲームはやっていました。
小林:そこから大学生になって、自動車部にはいってクルマにのめり込んでいくんだね。
SHUN:そうなんです。、でも実は最初の頃インテグラというクルマすらあまり良く知らなかったですよね。
小林:グランツーリスモやっていたのに?
SHUN:(ゲームの中の)FF車ってちょっと物足りなくて、やっぱり乗るなら後輪駆動でしょ!くらいに思っていたのでFF車にはほとんど関心無かったんです。
小林:そうなんだ(笑) という事は一番最初に買った実車はFRなの?
SHUN:NAのロードスターを大学1年の終わりに当時のOBの人に安く譲ってもらったのが最初のクルマですね。
1_NAの写真.jpg 購入したロードスター(NA)


小林:ロードスターで色々競技をやり始めたの?
SHUN:いえ、ジムカーナはそのロードスターではほとんどやらなかったんです。なぜかと言うと、ロードスターに乗り始めた直後にジムカーナにどっぷりハマってしまって、ジムカーナを本気でやるなら大学の競技で使う部車がインテグラなので、同じ車両にのった方が良いと思って、すぐにインテグラに乗り換えてしまったんです。
2_初代DC2.JPG 最初に購入したインテグラ(DC2)


小林:自分のインテグラと部車を走らせてレベルアップしていったんだ。
SHUN:ちょうど2013年くらいなんですけど、当時は最初に買ったインテグラに乗っていて、同時期にニュートンランドに出会い、ユウ選手とも出会って、世の中には凄い上手い人がいるんだなぁって思いましたね。ジムカーナを始めた最初のときはJAF戦の世界を知らなくて、学生のジムカーナ選手権の中でのレベルしか知らなかったので衝撃でした。学生よりもっと上手い、こういう世界があるんだと知って更にどっぷりハマった瞬間ですね。
小林:学生と社会人のレベル差ってあるの?
SHUN:免許取れるのが18歳で、基本的には長くてもでも免許取得4年目くらいまでの人達がやるのでやはり差はありますよね。当時の自分が走っている動画を振り返って見たりするんですけど、当時、学生団体日本一にもなったんですけど、今の方がもっと上手く走れるなぁって思いますね(笑)
小林:ユウくんに刺激をもらいつつステップアップしてきた感じだね?
SHUN:そうですね、なのでユウ選手がインテグラから86に乗り換えたとき(2014年)は、ちょっとショックでしたね。
小林:ユウくんのマシン買ったのにショックだったの?
SHUN:いえ実は直接買ったわけでは無いんですよ、ユウ選手が降りてから2年間は、別のニュートンランドのチーム員の方が乗っていて、僕が2016年のシーズン前にその方が手放すという事で、ニュートンランドの佐藤社長から「インテグラ出るけどどうする?」とお話を頂いて、「じゃあ乗り換えます!」と言って乗り換えを決めたんです。で、その年から全日本に出ました。
小林:凄いね!いきなり全日本?
SHUN:はい、勢いで。佐藤社長からも「いつか出たいと思っているなら、迷っているくらいなら出ちゃいな!」と言われまして2016年開幕戦岡山に出たって感じですね。
小林:地区戦とかは追いかけてないんだ?
SHUN:初めて公式戦に出たのは2015年で、チャンピオン戦(ミドル戦)にインテグラ+Sタイヤで出られるクラスがあったので、浅間台スポーツランドで開催された大会に1回だけ出て、優勝しっちゃったんですね、次はレベルを上げて関東の地区戦に出てんですが、地区戦はレベル高くてコテンパにやられて4位が最上位でその年は終わりました。その時はまだ最初に買ったインテグラに乗っていたので、その年末に今乗っているインテグラの話をもらって乗り換えのついでに全日本に行っちゃえという感じでした。
小林:全日本に始めて出た最初のイメージはどうだったの?
3_岡山.JPG 2016年開幕戦岡山での写真


SHUN:プレイドライブなどの雑誌で見る人ばっかりだし、ほとんどすべてのクルマがカラーリングしてあって派手だし、場所も岡山国際サーキットだったので、シード選手の人たちはピットにクルマが入っていて、実績の無い僕は向かいの広場にテントを立てたので格差を感じましたね、これが全日本かと圧倒されました(笑) それと、速度域がすごくていきなり使ったことのない4速まで入ってかかなりびっくりしましたね。でも意外と走り出してからの記憶はしっかり覚えていますね。3速全開からのブレーキングってやったことなくて、リアがブレイクしてハーフスピンして終わっちゃたんですけど…。後半は優勝した選手と同じくらいのタイムで走れたので悔しい思いをしたのを覚えています。
小林:悔しい思いをしながらレベルアップしていってるわけだね、色々戦歴あると思うんですけど今まで思い出に残っている大会は?
SHUN:やはり一番思入れがあるのは2018年最終戦鈴鹿で初優勝したときのレースは印象的ですね。
4-2_優勝2.JPG 初優勝後のチームで記念撮影
小林:台風がきて凄い天気で大変だったよね。
SHUN:日曜日の決勝は1本目のみで終了というのが決まっていたので(ジムカーナは日曜日2本走って良い方のタイムで順位を競う)、今までそんな経験なかったので。
小林:自分も初めてだったかな~
SHUN:いつも2本ある余裕というか、2本あるのが当たり前だと思って走っていたので、1本しかないのは結構な緊張感でしたね。そこでタイヤもセッティングもうまくはまって勝てたという事に加えて、皆さん見ててくださったというか、おめでとうと声をかけてもらったのが印象的で、唯一うれしかったレースですね。それ以外のレースは反省すべき点も多く、悔しい状況で帰ることばかりなのであの1戦は特別ですね。
4-1_優勝1.JPG 優勝決定後にニュートンランド佐藤社長、ブリヂストン社員と
小林:逆に苦しかったレースは?
SHUN:苦しかったレースは2018年は全体的にイマイチで。2017年が入賞できるか出来ないかのところをウロウロしていたので、もう一歩なにか変えないとダメだなと思って色々挑戦していたんですが、ことごとく外しまくっていたんです。なので2018年の最終戦で優勝した以外は苦しかった思い出が多いですね。周りからも「走りが大人しい」とか、「守りに入りすぎているよね」とか言われることが多く、そこの時期はスランプと言うか苦しい年でしたね。そこから天候にも恵まれて最終戦で勝ってから2019年になって、スランプから抜け出して、走り方も分かってきて自分の中では手ごたえがありました。2018年の悔しさも今となっては糧になったかなと思ってます。
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小林:その苦しい時に何をして何を改善したとかあるの?
SHUN:地道に仮説を立てて、考えて、試して、解析してというのを繰り返してましたね。
小林:じゃあ基本的には論理的に考えて、一旦仮説を立ててからやるって感じなんだね?
SHUN:そうですね、本来自分はそういうタイプではないと思っていたんですけど、ジムカーナという競技をやっていくにあたって、お金も時間も相当かけてやるので、練習もたくさん行けるわけでは無いので、どうやったら少しでも効率よく上達できるかな?っていうのを常に考えるようになりました。これはユウ選手の影響も大きくて、ジムカーナに対する向き合い方がそうなりました。
小林:身近にいる先輩の影響って大きいね。
SHUN:そうですね。
小林:ユウくんなかなかパドックから帰らないもんね(笑) 大概最後だよね?SHUNくんも遅いか(笑) パドック閉まるのにまだテント立ててるよ!って時あるもんね。
SHUN:あはは。主催者に怒られることのないように、時間を意識しつつ今後は気を付けたいと思います(苦笑)




〈編集部〉
SHUN選手のジムカーナを始めたきっかけから現在までを振り返って頂きましたが、インタビュー前編はここで終了です。インタビュー後編はSHUN選手がロードスターに乗り換えた経緯やジムカーナを盛り上げる為にどうすれば良いかを話して頂きました。お楽しみに。




【SHUN プロフィール】
全日本ジムカーナ選手権にホンダ・インテグラ(DC2)で参戦。2018年最終戦で全日本初優勝を果たす。2020年からはロードスター(ND)に乗り換えてPN1クラスで参戦。
東京都出身 6月14日生まれ 27歳 若さゆえのアグレッシブさが持ち味。 福島遠征で行く「成駒」さんのソースカツ丼がおススメ。