Vol.45 2026年シーズン NEWブリヂストンドライバー紹介 PART5 小林利徠斗選手

様々なカテゴリーで活躍する小林利徠斗選手が、GT300クラスでの2シーズンを経て遂にGT500クラスにステップアップ。大湯都史樹選手のパートナーとして#38 KeePer CERUMO GR Supraのステアリングを握ります。オフシーズンテストから好タイムをマークし、大きな期待を集めています。

_D7A0455.JPG

―ー満を持してのGT500クラス参戦です。ここまでのテストを通じてGT500クラスの印象をお聞かせください。
小林利徠斗選手(以下、小林):昨年まで2年間GT300クラスに参戦してきましたが、同じSUPER GTとはいえ、GT500クラスは外から観客という視点で見ていました。GT500クラスに乗り始めて、少しずつクルマにもチームにも慣れてきて、ある程度は問題ないと感じています。ただ、やはりGT500クラスは非常にレベルが高いですし、ドライバーの顔ぶれもあまり変わらずみなさん実力も経験も備えた方ばかりですから、自分がその中に入ってどれだけ戦えるかというのは、僕自身の感覚とは別の話になってくると思います。開幕戦に向けてまだまだ成長する必要があると思いますし、ただ速く走ればいいというものではありません。GT300クラスのかわし方とか、タイヤや燃料のマネージメントも考えながらベテラン勢を相手に接近戦を演じるとなると、まだまだ、うん、課題は多いですね。
ーーご自分で想定していた以上に考えるべきことや対応すべきことが多いのでしょうか? あるいは想定はしていたけれど、やはり簡単ではない?
小林:GT300クラスと比べて、やるべきことが極端に大きく変わるというわけではありませんが、クルマのスピードが高いですし、走りながら操作するステアリング系のスイッチ類も多くなります。何より、そういったマネージメント部分で許容されるマージンがより小さく、シビアになります。GT300クラスとは求められるレベルの次元が違います。
ーー純粋にクルマを速く走らせるというドライビングだけに集中するのに加えて、ピットと交信しながら考え、機器類の操作が求められ、しかもより高い精度で、ということでしょうか?
小林:ええ。同時に複数のことを考えなければならないのは事実で、ただ速く走るのとはまた違った頭の使い方が必要になります。これまでもSUPER GTに限らず色々なレースに出場させていただいているので、ある程度はそういった力も身に着けてきたとは思いますが、GT500クラスは速度が高く、その分、並行して多くのことを考えなければなりません。走っているその瞬間瞬間ではひとつのことしか処理できないので、やはり速度が高くなればなるほどシビアになる。何か走り以外のことに一瞬でも意識を移した時に、流れる時間が相対的に速いし、その瞬間に移動する距離も長くなるので、そこに難しさがあると思います。他のカテゴリーでは何かを考えながらでもまだ走りに余裕があったとしても、GT500クラスではその両立というか、どういう割合で神経を使うのかが難しいところです。
ーー現代のレーシングドライバーは、純粋なドライビング以外の部分も求められていると思いますが、そういった点について小林選手はどのように感じていますか?
小林:レーシングドライバーというものは、クルマの運転が上手いのが大前提だと思いますし、それがいちばん大切なことだと思います。もちろん、それ以外の操作もこなしながらレーシングマシンを走らせることになるわけですが、クルマの運転なしにドライバーは語れません。またレースによってその面白さも色々違うと思います。SUPER GTで言えばスプリントっぽさもありながらも23時間走るので短めの耐久レース的な要素もあって、実際のところマネージメントがかなり必要になってきます。そういう意味では、そこも含めてドライバーの技術だという面はあると僕も思います。燃料やタイヤのセーブというのも、そこも含めてドライバーの技術のひとつだと思います。ただ、それ以外の機器類の操作などは……レースはクルマの運転が上手な人が競い合うから成り立つスポーツですし、そこに面白さの根源があると思います。

_D7A0442.JPG

ーーTEAM CERUMOに加入して、立川祐路監督や大湯選手をはじめ、チームの雰囲気はいかがですか?
小林:みなさんが優しく接してくださり、慣れない環境ではありますがコミュニケーションを重ねながらチームに溶け込んできました。開幕戦に向けていい準備ができていると思います。みなさん本当に優しく接してくださるので何というか、無理することなく活動できる。そこは本当にありがたいですね。みなさんがどう思っているかはわかりませんが、僕はGT500クラスというフィールドでは自分はまだ得体の知れない存在だと思っています。GT300クラスでどんな走りをしようとGT500クラスは別モノです。その得体の知れない、若造でもしかしたらポンコツかもしれない人間に最初から優しく接していただいているのは本当にありがたいと思っています。
ーー小林選手は他のカテゴリーでもブリヂストンタイヤを履かれていますが、SUPER GTでは初めてだと思います。タイヤについての印象やご意見をお聞かせください。
小林:正直なところ、現段階でGT500クラスのブリヂストンタイヤについての評価は、自分の中でまだできていません。もっと走りこまないと判断できない部分が大半です。ただ、昨年まで他メーカーのタイヤで走りながらブリヂストンタイヤを見ていましたし、スーパー耐久ではブリヂストンタイヤを履いてきました。そこで感じていたのは、ブリヂストンのタイヤは非常に安定感が高く、絶対に大外しすることはないという安心感です。シリーズを戦うにあたり、どこかの大会で一発速いタイムが出ればいいというわけではないので、その部分はとても安心できるタイヤだと思います。これまで色々なカテゴリーで走ってきましたが、クルマを速くする大切な要素のひとつがタイヤです。そのタイヤについて、予め不安要素をほぼ打ち消すことができるのは大きなアドバンテージですから、ブリヂストンタイヤでSUPER GTに参戦できることは、とてもポジティブなことだと思っています。
ーー既にある程度の距離を走られていますが、スーパーGTのタイヤに感じたことをお聞かせください。
小林:GT500クラスではブリヂストンタイヤしか経験がないので、GT500クラスのマシンとタイヤのパッケージでしか説明できませんが、良くも悪くもクセがない印象です。これまでもブリヂストンタイヤを履いたことはありますが、やはりこれといった印象がありませんでした。それが逆に特徴といえば特徴なのかもしれません。他のメーカーのタイヤは「あの時のタイヤはこうだったな」といった印象が残っていることがあって、例えばこのタイヤは縦が強いからヘアピンコーナーはまっすぐに進入してまっすぐに立ち上がるV字のラインを試してみようかと考えたりするのですが、ブリヂストンのタイヤはカテゴリーを問わずそれがない。常に安定していてクセがないのが特徴かもしれません。

_D7A0405.JPG

ーーご自身が理想とするドライビングに対して、ブリヂストンタイヤとのマッチングはいかがでしょう?
小林:どちらかというと逆の発想ですが、僕はクルマが変わればそれにピタッと合わせられるドライバーになりたいので、ドライビングに対してタイヤが合う合わないという風にはあまり考えたことがありません。
ーー与えられたものの、その100パーセントを出し切るドライバーということでしょうか?
小林:そうですね。いいクルマを作る上では、もちろんタイヤテストもしますし評価もしますが、それとは別に、その時のクルマやタイヤの特徴を正しく理解して、それに適応する力が大事だと思っています。
ーードライビングで行き詰まった時、ドライバー仲間に相談したりすることも? それともひとりで考えるタイプですか?
小林:どっちかというと後者ですかね。いつも実力が足りていないことを実感しつつも、足りていないと感じているということは、どこを修正すればいいのかはわかっているので、走るたびに常に試行錯誤を続けています。もちろん、色々な方とお話していくうちに、新しい考え方を発見することもありますが、自分の考えに行き詰まることはありません。これまでも、直面した課題を少しずつ潰してきましたが、そうやって自分のレベルが上がれば上がるほど、その上の領域でまた新しい課題がどんどん見えてくるんです。多分一生それは終わらないと思います。常に、自分の実力をもっと向上したい、それだけです。それに、競い合いという面でもやはりレースは楽しいですね。相手とコース上で、お互いをリスペクトしながら競い合う。そのギリギリのラインを常にせめぎ合うことがレースの魅力のひとつだと思います。その時に相手よりもどれだけ多くの引き出しを持っているのかが勝負だと思うので、具体的な相手がいてもいなくても、常に走りを探求しています。そもそも、クルマの運転が好きなので。

_D7A0555.JPG

ーー少し話は変わりますが、小林選手はグランツーリスモでも、2023年のワールドシリーズファイナルネイションズカップで2位に入る活躍を見せています。グランツーリスモと実際のレースはドライビングにおいて、どのように関連しているのでしょうか?
小林:カートを始めたのが小学4年生、10歳ぐらいの時でしたが、その前からグランツーリスモをやっていました。いざ四輪に乗り始めて感じたのは、同じ考え方で走ることができるということです。例えばフロントに荷重をかけた時とか、トラクションのかかり方とか、旋回中の挙動などに対して、自分なりの正しい走らせ方はこういうものだという考え方はグランツーリスモでも確立できましたし、それがそのまま実車にも生きています。
ーーそのように、実車とシミュレーターの双方で経験を積んできた今、ご自身はどんなタイプのドライバーでしょう? どういった部分が強みであるとか?
小林:強みがあるかはわかりませんが、伸び代はたくさんあると思っています。まずはしっかりシーズンを通してレースを戦い切ることが肝心ですし、結果云々については出たこともないのに言えることではないと思います。まずは自分の実力をしっかり出し切ること、それもただ速く走るだけではなく、シーズン全体を通してしっかり戦えるドライバーになりたいと思っています。
ーー開幕も間近に迫ってきましたが、どういった部分をさらに底上げしていきたいと考えていますか?
小林:すべて、ですね。チームは素晴らしい体制だと思いますが、そこに対して僕の実力はまだまだ経験不足なところがあります。少しでもクルマに慣れておくことも必要ですし、合同テストの岡山からGT300クラスとの混走にもなりましたから、レースに向けてやらなければならないことをすべて向上して、開幕戦からしっかりと戦えるように準備しておきたいと思います。
ーー最後に、小林選手の活躍を心待ちにしているファンの方々へメッセージをお願いします。
小林:今年、GT500クラスのドライバーとして参戦できることはとても嬉しいですし、まずは精一杯がんばりたいと思います。僕の存在を以前から知っていただいている方々からご期待をいただく部分もありますが、ルーキーですのでまずはしっかりレースを戦う姿を見ていただければ嬉しいです。初めて挑むGT500クラスでこの1年間、みなさんに注目していただけるような走りができれば嬉しいです。