Vol.44 2026年シーズン NEWブリヂストンドライバー紹介 PART4 新田守男選手/高木真一選手

GT300クラス最多の22勝をマークしている新田選手を軸に、旧知の高木選手とのベテランコンビで、巧みな戦略と走りでコンスタントに活躍するK-tunes Racing。改めてブリヂストンタイヤを履く今シーズン、タイトル獲得を目標にさらなる躍進が期待されています。

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ーーK-tunes Racing2018年から一貫してLEXUS RC FGT300に参戦していますが、再びブリヂストンタイヤを履くことになった今シーズンに向けて、テストの進捗などをお聞かせください。
新田守男(以下、新田):若手のエンジニアスタッフに変更がありましたが、チームの根本的な部分はあまり変わっていません。やはりいちばん大きな変更はタイヤです。K-tunes Racingは最初の2シーズン、2018年と2019年はブリヂストンタイヤで走っていましたから、それ以降のタイヤの進化を確かめながら、基本的なセッティング出しを進めているところです。仕上がりも悪くないですし、ここまで順調です。
高木真一(以下、高木):僕にとってはLEXUS RC F GT3とブリヂストンタイヤの組み合わせは初めてになりますが、新田選手から聞いていたとおりのフィーリングで、富士スピードウェイでの初テストの第一印象も、とてもクルマとマッチしているというものでした。岡山国際サーキットでのテストは路面温度や気温が想定よりかなり低い状況になりましたが、それでもしっかりとパフォーマンスを発揮するタイヤを用意していただきましたし、その一方で、より高い気温を想定した硬めのタイヤもテストしました。とても充実したテストを進められていると思っています。
新田:ブリヂストンタイヤを履くということも踏まえて今年はシャシーを一新しました。フレームを入れ替えてクルマの剛性を確保してタイヤのパフォーマンスをしっかりと引き出すためです。その上で今のブリヂストンタイヤの特性を把握して、どういう使い方、どういう戦略が立てられるのかについて、懸命に「引き出し作り」をしている最中です。
高木:僕たちとしては、まずは当時履いていた時のパフォーマンスを維持できたらと思っていたのですが、パフォーマンスはしっかり維持しつつも、さらに新しい考え方に基づいて開発されたタイヤも登場していて、タイヤの進化を実感しているところです。
新田:確かに、テストしていて大きく進化していると感じますね。

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ーーそれは、具体的にはどのように?
新田:疲れます。でも、速くていい。LEXUS RC F GT3は基本的にフロントヘビーなクルマで、他のGT3車両と比べて正直そこが苦労する部分でもあります。ある意味ではタイヤメーカーさん泣かせの車両だと思いますが、ブリヂストンタイヤはそこを支えてくれる。だからドライバーは今まで見ることのなかった領域に踏み込むことができるのですが、車重のあるマシンでそれをやるとかなり身体に負担なんですよ。僕らふたりの老体にはちょっと……(笑)。テストが続くとしっかり身体のケアをしなければならないほどパフォーマンスは高いですね。
ーー高木選手はその辺り、体力には自信があるかと?
高木:いやいや。どう見ても僕の方が体力ないでしょう? 新田選手の身体つき、見てくださいよ!もう少し身体を鍛える必要があると痛感しているところです。まだあまりロングランテストは走っていないのですが、ホント、休まる時がないというか、走れば走るだけタイヤから「もっと速く走れ!」と言われているようでサボることができません。
新田:疲れるタイヤって表現しちゃいましたけど、乗っていて楽しいんですよ。こんなに走ることが楽しいと思わせてくれるタイヤとまた一緒にレースができる、という気持ちと同時に、だからこそ優勝や表彰台を狙えるタイヤだと思うので、そのパフォーマンスを生かしていい成績を残すシーズンにしたいと思います。

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――どのようなシーズンをイメージされていますか?
新田:理想を言えばもう、全戦勝ちたい。もちろんLEXUS RC F GT3が不得意とするサーキットもありますし、路面状況が想定外に変化したり、あるいはアクシデントに巻き込まれて自分たちのパフォーマンスを生かしきれない時もあると思いますが、悪い時でも常に6番手前後をしっかりキープするレースをすることが、まずはいちばん重要だと思っています。そして、最終戦までシリーズチャンピオン争いにしっかり絡んでいく。
高木:やっぱり僕たちふたりのコンビでタイトルを取りたいですし、それが第一目標です。そのためにも優勝も含めて表彰台の常連でいなければと思っています。クルマ作りはもちろん、チームのすべてをしっかり整えていかなければと思います。
――新田選手でしたらGT300クラス最多勝記録保持者ですし、高木選手もポールポジション最多記録を狙えることころにいます。もう何度も何度も質問されていることでしょうが、改めてそれぞれの思いをお聞かせください。
新田:ずっとそう言われ続けて自分ではあまり気にしないようにしてきましたが、最近はさすがにちょっと気になるようになってきたところです。正直に言えば、やはり記録は伸ばしたいと思いますし、真一のポールポジション記録も一緒に伸ばしていきたいと思うし。何よりもそれを常に追い求めるチームでありたいし、ドライバーでいたい。ライバルチームからも「あのオジサンたち、侮れないな。ちょっと怖い存在だな」と思われるようなレースをしていきたいですね。
高木:僕は新田さんと組んでいる限り最多勝記録は無理な話ですしねえ……。ポールポジション記録についても、そういうのはレースウイークの流れというか、天候や持ち込みタイヤとのマッチングなど、色々な要素の流れがいい時は、本当に楽に勝てたりポールポジションが取れたりしますから、その時のタイミングだと思うんですよ。たまたまって言うと聞こえは悪いですけれど、クルマが決まったり、タイヤとのマッチングが良かったりした時など、取れる時にしっかり取ることが大事。そのための準備だけはきちんと整えておこうと思います。

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――おふたりはコンビを組んで長いという以上に、本当にお互いのことを信頼していると感じます。これは以前からお伺いたかったのですが、お互いに「ここは敵わない」と思う部分はどんなところでしょう?
新田:難しいなあ。そんなこと感じたことがない(笑)。僕が真一に信頼を置いているのは、速さとかセッティング能力とかそういうことではなくて、ある状況の中で、今その時に自分がやるべきことを理解して正しく実行するってことですね。その状況を理解するのが早いから、まさに阿吽の呼吸です。そういう能力は今の中堅や若い子たちにはなかなかないでしょう。
高木:新田さんは体力があること、それと何と言っても開発能力です。今回久しぶりにコンビを組んでテストを進めていますが、エンジニアさんにお話するコメントがもうずば抜けているというか、すごく細かいところまでしっかりと伝えています。人によって使う言葉やニュアンスがあって、その立ち位置によって言葉って変わっちゃうじゃないですか。それを、誰でも正しく理解できる形で一生懸命に話していく。相手がどう捉えているのかを分析しながら、言葉を変えながら伝えて、もう僕の10倍もコメントしています。クルマ作りでもタイヤ開発でも、巧みな言葉使いとセッティング能力が素晴らしい。
――貴重なお話をありがとうございます。ところで、SUPER GT2027年からタイヤがワンメインク化されます。複数のタイヤメーカーが競い合うこともSUPER GTの魅力のひとつだとは思いますが、GT300クラスに長年参戦されてきたお二人から、GT300クラスとタイヤコンペティションについてお聞かせいただけますか?
新田:世界のいろいろなクルマが走るGT300クラスは、性能調整のBOPを含めて意外と複雑です。そこにタイヤ競争が絡んでさらに複雑になる、これがGT300クラスの大きな魅力だと思います。例えば勝つために5つの要素が必要だとしたら、そのうちの1つでも欠けてしまうと絶対に勝てない。5つの歯車をすべてかっちり合わせなければダメという難しさがあり、これはGT500クラスとは違う難しさです。この複雑さをもっとオープンに、観ている人に伝えたいといつも思っています。逆に言うとタイヤのコンペティションって今では世界でも珍しいものになっていますけれど、僕はそこにレースの魅力があると思います。もちろん、ワンメイクになればなったでタイヤメーカーさんの技術が試される面もあると思いますが、これだけ異なる車種が走るレースで公平性を保つのはかなり難しいことだと思います。
高木:僕は率直に、ワンメイク化される前にブリヂストンタイヤに戻って来られたのが嬉しいですね。
――先ほど、チャンピオンを狙う戦いをしていきたいというお言葉をいただきました。とはいえ、ライバルチームも同じように考え準備をしている中で、非常にコンペティティブな戦いが繰り広げられると思います。そのような状況において、おふたりの強みや#96 K-tunes RC F GT3の強みをどう生かしてシリーズ争いを戦っていくのか。応援する方々へのメッセージも込めてお願いします。
新田:僕たちのいちばんの強みというか、強みにしていかなければいけない部分は、先ほど言った阿吽の呼吸です。チームの中でお互いが自分たちの仕事をしっかり把握して、最短時間で最大のパフォーマンスを引き出すこと。それに、チームの雰囲気作りも肝心です。レースの現場ではいろいろな状況でいい時、悪い時があると思いますが、そういう時にその瞬間の良さを取って何か大きなミスをするよりも、その瞬間は少し抑えたレースをするとか……表現が難しいですが、要はイケイケドンドンではなく、精神的な部分も含めて総合的にコントロールしながら一戦一戦を戦う。そんな戦い方をイメージしています。
――それはさぞかし、ライバルにとっては嫌なチームでしょうね。
高木:もう、嫌がられたい(笑)。うちのチームには強力なエンジニアもいますし、データエンジニアも揃っています。戦略的な面はチームに任せて、ドライバーが自分たちの仕事をきっちりとこなすことで、しっかり結果を残せる体制作りを進めている真っ最中です。今年はマシンのカラーリングも赤と黒にガラッと変えてイメージを刷新しました。そういった楽しさも含めて、ふたりのおじさんパワーで同じ50代の人を勇気づけられるようにレースを盛り上げていきたいですね。そのためにもしっかり表彰台に乗ってタイトル争いをしていきますから、しっかり応援していただきたいです。