マシントラブルや転倒で大きく順位を落とすも執念の走りでF.C.C. TSR Honda Franceが3位獲得、次いで4位にYoshimura SERT MotulのBS勢がランクイン

  • 開催場所:スパ-フランコルシャン
  • 開催日:2022年06月04日(土) 〜 2022年06月05日(日)
2022 FIM EWC Rd.2 スパ24時間:F.C.C. TSR Honda Franceが3位表彰台を獲得!
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FIM EWC 2022シーズンの第2戦はベルギー・スパフランコルシャンサーキット。去年まではEWCの開催地ではなかったが、昨年の冬にランオフエリアの拡大やセーフティーバリアの再配置(コースからの距離を広げる)などコースの安全性を向上させる大規模な改修が行われ、今年EWCを開催する運びとなった。
スパフランコルシャンサーキットは4輪レースではF1ベルキー戦やWECなどの世界選手権が開催される歴史と伝統のあるサーキットで、森の中に広がる全長約7km(6.985km)、高低差104mのEWC最長コースをエンジン全開で走り抜ける高速コース。様々なレースでドラマを生んできたコース前半にあるオー・ルージュからラディオンに続く登りの高速S字コーナーは、テスト走行後に多くのライダーが壁のようだと表現しており非常にエキサイティングなコースレイアウトとなっている。また現地の天候は変わりやすく「スパ・ウェザー」と呼ばれ、レース中にコンディションが変わることも予想され24時間を走り切ることが非常に困難なレースとなる。

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公式スケジュールが開始となる6/2(木)、現地時間10:00(日本時間 17:00 時差+7h)に2時間のフリープラクティスがスタート。天気は晴れ、気温15℃前後のなか走行が開始。各チームがマシンの仕上がりを確認する中、トップタイムはブリヂストンサポートチームの#7 YART-YAMAHA OFFICIAL Team EWC(Ya,BS)、2番手が前戦のルマン24時間で優勝している#1 Yoshimura SERT Motul(Su,BS)、3番手は#5 F.C.C.TSR Honda France(Ho,BS)とブリヂストンサポートチームがトップ3に入り順調な滑り出しとなった。


【予選1回目】
前戦のルマン24時間から速いタイムを記録した2名の平均タイムで予選順位が決定するレギュレーションに変更。暫定トップはF.C.C.TSR Honda France、2番手にYART-YAMAHA OFFICIAL Team EWC、4番手にYoshimura SERT Motulが入り、各チーム順調な仕上がりを見せた。
【予選2回目】
予選1回目よりも各チームがタイムを伸ばす中、YART-YAMAHA OFFICIAL Team EWCのK.ハニカが全体トップとなる2'18.845をマーク。2'18秒台を記録したのはYARTのみ。K.ハニカの活躍もあり総合でもYART-YAMAHA OFFICIAL Team EWCがトップ通過、2番手はストレートでの速さがトップの#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM (BMW, DL)、3番手に総合力が高いYoshimura SERT Motul。F.C.C.TSR Honda Franceは各ライダー3周で予選を切り上げ、無理にタイムアタックを行わない戦法ながらも4位に入った。

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【決勝レース】
現地時間の13:00(日本時間20:00)にレースがスタート。マシンに駆け寄りエンジンをスタートさせる伝統的なルマン式スタートで24時間のレースが始まると、ここからの1時間はスプリントレースのような激しい攻防が繰り広げられる。
Yoshimura SERT Motulがホールショットを取るもF.C.C. TSR Honda France、YART - Yamaha Official Team EWC、BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM(DL)、WEBIKE SRC KAWASAKI FRANCE(DL)がテイルトゥノーズで続き、コーナーで入れ替わったかと思えば、ストレートで抜き返す展開がピットインまで続く。WEBIKE SRC KAWASAKI FRANCEはピットインの前にシケインでバックマーカーと接触、転倒しトップ集団から脱落となった。
3時間終了時点でも、BS勢の3チームはYoshimura SERT Motulをトップに6秒差で追走。現地時間16:10頃YART - Yamaha Official Team EWCがピットインしN.カネパに交代してコースに戻るが、ストレートでスピードが上がらず急遽ピットイン。フロントタイヤのスピードセンサーに不具合が見つかり交換作業のため4分ロスし、5位に後退。トップ3はYoshimura SERT Motul、F.C.C. TSR Honda France、BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMの順となるが、YART - Yamaha Official Team EWCは着実に追い上げ5時間終了時点で4位まで浮上する。


レースが動くのは11時間経過後の現地時間0:00過ぎ。夜間走行でもトップを走るYoshimura SERT Motulにミッショントラブルが発生、ピットに戻り懸命に作業するも26分を要し11位まで順位を落とす。トップはF.C.C. TSR Honda Franceに変わり、2位以下との差を着実に広げていく。しかしトップを走るF.C.C. TSR Honda Franceにも悲劇が起こる。現地時間3:48頃にターン17(Blanchimont)付近で後輪あたりから火花が出るとチェーンが切れそのままストップ。ライダーのG.リアは懸命に動かなくなったバイクを押してピットに向かいメカニック総出で修理に当たる。30分後にコースに戻るが10位まで後退し、トップとは11周差がついてしまった。


長い夜が明けた現地時間7:00。18時間が経過した頃、トップはBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMが走るも夜間走行でペースが上がらずYART - Yamaha Official Team EWCがその背中を捉え、ついにトップに立つ。7:15からは雨が降り始めるもYART - Yamaha Official Team EWCが差を広げていく。しかしその後信じられない事態が、7:35にN.カネパの乗るマシンから白煙が上がりスローダウン。ピットまでマシンを回収するがエンジン故障のためリタイアとなった。その13分後の7:48頃、Yoshimura SERT MotulのG.ブラックがケメルストレートのエンドでのブレーキングでスリップダウンしマシンが大破。別の周にF.C.C. TSR Honda Franceと#777 Wójcik Racing Team STK 777(DL)も転倒し、7:51にセーフティーカーが導入される。セーフティーカーが解除された後は各チーム安全なペースでの走行を選んだが、F.C.C. TSR Honda FranceのM.ディメリオが他より8~10秒早い異次元のペースで走り挽回を図る。Yoshimura SERT Motulもリスクを承知で追随し、21時間が経過した現地時間10:00には3位F.C.C. TSR Honda France、4位Yoshimura SERT Motulとなる。同時間帯に#121 FALCON RACING(Ya, DL)がエンジンブローでオイル漏れが生じ、コース清掃のためレースサスペンドとなり、全チームが指定のピットにマシンを預けしばし休息が訪れる。


大量のオイルが漏れたためコース清掃に時間を要し、残り20分。レース再開がアナウンスされ、セーフティーカーを先頭に周回を重ねる。現地時間12:54にセーフティーカーが解除。ラスト3周のスプリントレースが始まり、同一周回のF.C.C. TSR Honda FranceとYoshimura SERT Motulの一騎打ちに。勝ったチームが表彰台獲得の状況に、耐久レースとは思えないスリリングな抜き合いが行わる。最後はF.C.C. TSR Honda Franceが先にチェッカーを受け24時間のレースを終え、表彰台に上がった。