ブリヂストンは2020年へ向けて、パラアスリートへのサポートをおこなっています。
その一環として、オートバイで新たな挑戦を始めた「SIDE STAND PROJECT」を応援していきます。

Vol.2 凱旋


2019年6月24日 袖ヶ浦フォレストスピードウェイ
梅雨空から強い雨が吹き込むピットで宣篤と治親は、早朝からシェイクダウンに向け入念にマシン整備を行っていた。
ほどなくして拓磨が到着、車椅子でマシンの廻りを一回りすると新品のリアタイヤに目をやった後、
雨脚がさらに強くなりレインタイヤでもおかしくない路面コンディションに眉をひそめながら、
「新品だから皮むきしてきてよ」とマシンの暖気を始めた治親に言う。
「最新のRS10は新品でも大丈夫なんだよ」とすかさず宣篤が返すと「ほんと?」と苦笑い。

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真新しい特注のセパレートスーツに着替え、クリートが装着されたブーツを履いた拓磨が
二人のアシストでCBR1000RR SP2に跨がり、ブーツをステップにロックしポジションの確認を行う
ワークショップで何度も試行錯誤した甲斐もあり、ポジションを気に入った拓磨の様子に安堵する二人。
シフターのスイッチよりも最新型レースベース車のプログラムモードに興味津々な様子で、
一通りマシンのレクチャーを受けると、いつでも走行出来る様にヘルメットを被りコンセントレートする。
小雨になった瞬間、拓磨がグローブのアジャスターをきつく締め直した。
阿吽の呼吸で治親がレーシングスタンドを外し、宣篤に支えられたマシンはあっけなくピットロードを滑り出す。
染み付いた習慣なのか貸し切りで他の走行車両はなくとも、自然に左手を出し後続にコースインの合図を送る。

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レインコンディションの中、タイヤの感触を確かめる様にゆっくりと確実にラップを重ねる。
「心配だけど思わず笑みがこぼれる」そんな複雑な表情をしながらピットレーンで見守る兄弟。
ストレートエンドのブレーキングポイントが奥になって来た頃には、曇天の空から太陽がのぞき始めた。
さらにペースは上がり兄弟の待つピットへ戻って来た時には走行開始から30分以上が経過していた。

開口一番「ラインは濡れてるけどタイヤは問題無い、ただフロントサスの接地感が乏しいね」と拓磨。
22年前の現役時代となんら変わらぬクールなコメントにピットは爆笑に包まれる。
『SIDE STAND PROJECT』が走り出した瞬間だった。

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2019年7月9日 鈴鹿サーキット
鈴鹿8時間耐久ロードレース公開合同テスト初日。
沢山の報道陣が集まり信じがたい様子で見守る中、兄弟に支えられたマシンはコースインする。
トレードマークの赤いバンダナをなびかせた拓磨が22年ぶりに鈴鹿のストレートを全開で駆け抜けた。

いよいよ夏の鈴鹿に拓磨が帰って来る
"Takuma Rides Again"

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