今シーズン、ROOKIE RacingがTEAM ENEOS ROOKIEとしてGT300クラスにMercedes AMG GT3で新規参戦! ベテラン石浦宏明選手と若手の鈴木斗輝哉選手というコンビで#32 ENEOS X PRIME AMG GT3がどのような走りでファンを魅了してくれるのか、大きな期待を集めています。
――まずは石浦選手に。改めてGT300クラス参戦の経緯をお聞かせください。
石浦宏明(以下、石浦):ROOKIE RacingはこれまでもGT500クラスに参戦してきましたが、今年からGT300クラスにも参戦するということで、ドライバーとして新たなチャンスをいただきました。周囲ではトヨタあるいはレクサスでエントリーするといった噂もありましたが、ROOKIE Racingは以前から人材育成を目的にスーパー耐久でMercedes AMG GT3を走らせチャンピオンにもなっていますから、その知見を生かそうと勝手知ったるクルマを選びました。エンジニアもスーパー耐久でタイトル獲得に貢献した小野寺冬真さんにお願いしています。僕自身はGT3車両でのレースは初めてですが、チームもエンジニアも使い慣れたクルマでの参戦ということで、参入のハードルは低かったと感じています。
――もちろん初参戦の苦労がないわけではないでしょうが、テストでも好タイムをマークしていて順調だと思います。
石浦:最初にブリヂストンタイヤを履いてテストに参加したのは2月の富士スピードウェイでしたが、GT300のタイヤはグリップレベルが高いので、ワンメイクレースで使っているタイヤで感じるグリップやGT3で感じるマシンの動きとはやはり別世界でした。どちらかと言えばこれまで走っていたGT500クラスと同じ感覚で走ることができ、逆に違和感がなかったほどです。もちろんクルマの動きは空力で抑えが効くGT500クラスとは比較にならないほど大きいものの、実は僕が若い頃に乗っていたGT500クラスのラップタイムとほぼ一緒なんですよ。今のクルマってすっごく速い。ストレートスピードはかなり差がありますがコーナリングスピードはGT500とそう遜色ありません。久しぶりのGT300なので上手にラインを譲るなど多少は慣れが必要ですが、想像していたよりいい感触はあります。
――鈴木選手にとって、GT300クラスという新たなフィールドはいかがでしょうか?
鈴木斗輝哉(以下、鈴木):GT300クラスのクルマに乗るのは先日の富士スピードウェイでのテストが初めてでしたが、スーパー耐久にも出ていたのでそれほど違和感はありません。ただ、ツーリングカーでこれほどのハイグリップタイヤはこれまで経験したことがなく、その部分ではドライビングの修正も多々あります。これは走行を重ねて、チームとコミュニケーションしながら少しずつ慣れていけばいいことですから、今のところ順調だと思います。GT300クラスのクルマは、ツーリングカーとフォーミュラの中間という感じで、車重があるわりには空力も効きますが、フォーミュラのようにクルマが軽快に動くわけではないので、これまでの自分の乗り方で走ろうとしてもクルマの限界を引き出すことはできません。ドライビングを分けるという意味ではちょっと特殊で難しかったですね。
石浦:初めて乗った時、何て言ったんだっけ?
鈴木:すごいロールが大きくて……。
石浦:マシンから降りてきて、「これ、船ですね」って言ってました。(笑)
鈴木:ブレーキングもそうですし、コーナリング中も。コーナー出口でトラクションをかけるとフロントが浮き上がる。車高が高いのでそれは理解しているつもりですが、市販車よりフォーミュラの動きに近いだろうと思っていた自分の予想とはまったく違いました。
石浦:実は自分も20年ぶりに思い出したんですが、初めてGT300に乗った時、まったく同じことを言ったんですよ。「これ、船です」って。2006年だからMR-Sの時かな? もう、鈴鹿の1コーナーでひっくり返っちゃうんじゃないのって思いましたよ。当時はフォーミュラから乗り換えたばかりだったので。
鈴木:僕は元々カート出身なので、サスペンションもないし、そもそもロールしない。そこからフォーミュラに乗って、ほとんどロールしないクルマばかりでしたから、いきなりFIA GT3に乗ったら正直最初は驚くわけです。今まで感じたことのない動きをするし、そもそも重たい。ただ、クルマの動かし方やドライビングの違いがある中でもすぐに適応はできますし、予想していたほど苦戦はしませんでした。そもそもAMGはフロントエンジン、リヤ駆動という基本的な仕様で非常に乗りやすいクルマなのでコントロールの幅が広いですし、チームが限界を引き出せるクルマを用意してくれていたこともあります。走り出してすぐに全開で攻めることができました。
――なるほど。それにしてもSUPER GTのタイヤはハイグリップなので、もっと足まわりは固めているものだと思っていました。
石浦:GT500クラスではサスペンションの動きを抑えて、空力を安定させることを狙ってマシンを開発しています。なので、クルマの動きよりもタイヤの動きを感じる、そういうクルマです。一方でGT300クラスはクルマ全体を動かすことでタイヤのグリップを引き出す方向ですね。車重も少し重たいですし、クルマの動きも全体的に大きいので、タイヤの動きに加えてクルマも動くので、丁寧に操作しないとグリップをうまく引き出せません。
――そういう意味ではタイヤの使い方や求められる性能も、GT500クラスとGT300クラスではかなり違うのでしょうか?
石浦:まったく違うのかなと想像していましたし、確かにクルマは全然違うんですけれど、走ってみたら結構近いというか、タイヤに求められる部分は意外と共通していることが今回わかりました。ありがたいことに最初のテストから関わらせてもらっていますが、目指していることは共通しているので、去年まで使っていたGT500クラスのタイヤと似た部分があります。
――具体的には?
石浦:GT500クラスでタイヤ開発していた時もそうでしたが、タイヤは動くものなので、その動きとドライバーの操作がリンクしないと予想外の反応が返ってきて使いこなせなくなってしまいます。単純にグリップが出ればいいというものではなく、操作とリンクする動き、予想どおりの動きをしてくれないとダメ。そこからいいものを選んでいって、どんなドライバーが乗っても違和感がないことがいちばん大事な要素でした。GT300クラスではクルマはさらに大きく動きますし、それこそドライバーの技量も大きく異なりますから、この違和感がない、という要素はさらに重要になると思います。例えば一定の速さでハンドルを切っていった時に、あるところでタイヤだけが先にグッと動いて、ドライバーの操作よりも先に向きを変えられるとオーバーステアが出たりするじゃないですか。そのハンドルを切っていく速さとタイヤの動きがうまくリンクしてくれないと、いろいろ想定外の挙動が出てしまいます。高いグリップと、ドライバーの操作にリニアにリンクするタイヤの動き。この2つがどちらも必要で、今のブリヂストンタイヤはGT500クラスでもGT300クラスでも共通してこの点が優れていると思います。
――ありがとうございます。ここまでお話を伺って、石浦選手は当然ですが鈴木選手ももう準備万端、あとは開幕戦を待つのみ、という印象を深めました。
石浦:まあ、F4からいきなりGT300だったら大変だったとは思いますが、鈴木選手は去年12月にSUPER FORMULAのテストで2番手タイムを出しているくらいですからね。あれだけハイパワーでハイダウンフォースのクルマをすぐに乗りこなしているので心配はしていませんし、本人にも何も心配しなくていいからと言っています。ただ、SUPER GTでは異なるクラスのマシンが混走しますし、SUPER GTならではのレギュレーションもありますから、そういったオペレーションを覚えていく必要はあります。速く走ることに関しては何も心配していません。
鈴木:テストでGT500クラスとの混走も経験していますが、スーパー耐久ST-2クラスで走っている時にGT3のST-Xクラスに抜かれるのとあまり感覚は変わらないので、それほど戸惑いはありません。去年のスーパー耐久の経験が生きていると思います。FCYやスタートの手順もひととおり覚えることができたので、これまでのところ問題ないと思います。
石浦:たしかに新たに参入したチームとしては、とても順調に準備は進んでいます。ただ、そうはいってもSUPER GTはそんな甘いものじゃないってことも、よくわかっています。それにSUPER GTあるあるですが、シーズンオフのテストで好調でも、いざ開幕したら勢力図がガラっと変わっていることも、どちらのクラスでもよくあることです。今は自分たちのテストを粛々と進めているところですが、いざ蓋を開けてみたら全然前にいられないっていう可能性も十分あり得ると想像はしています。そんな中でも、まずはチームのベスト、クルマとタイヤが持っているベストを自分たちがちゃんと引き出してレースをしていけば、サーキットやウエイトによって得意不得意がある中で、必ずどこかでチャンスは来るはずです。それと、自分としてはミスしても全然構わないと思っています。ミスを恐れずにチャレンジしたい。SUPER GTはミスをしても挽回できるレースだと思いますし、まずは精一杯戦って自分たちの立ち位置がどこにあるのかを知りたいですね。
鈴木:チームとしてテストは非常に順調ですし、僕自身もセッションを重ねるごとに少しずつ進歩している部分はあるので、それをレースウイークにどう生かすかが大事になってくると思います。まずはちゃんと完走して次のレースに繋げることが非常に大事だと思います。石浦選手のレースウイークの組み立て方やレース中の出来事に対しての対応などは実際にレースしてみなければわからないので、そういったところは背中を見ながら1年間戦っていきたいと思います。
―改めてタイヤの話に戻りますが、GT300クラスはタイヤメーカーが4社あり車種バラエティも豊富です。そういう状況でタイヤに期待すること、求めることは何でしょう?
鈴木:僕はカートの頃に3年間ブリヂストンタイヤを履いていました。SUPER GTでは決勝は300kmあるいは3時間というレースになります。やはりタイヤライフが長く、タイム落ちの少ないタイヤが非常に強いと思うので、クルマ作りも含めてしっかりと準備したいと思います。昔からロングランに強いというブリヂストンタイヤの特徴はレーシングカートでもスーパー耐久でも変わりませんから、非常に期待しているところがあります。
――石浦選手、タイヤの、特にGT300クラスのタイヤについて、こういう部分を期待するというご意見をお伺いしたいのですが。
石浦:本音を言えば楽に勝たせてもらえたらいちばんいいのですが、タイヤメーカー同士の競争なのでそうはいきません。ただ、僕はタイヤメーカーの競争があるレースが大好きです。みんなで作り上げたものが結果に繋がるというところにやりがいを感じますし、これまでGT500クラスで経験してきたことをGT300クラスでも活かせたら最高だと思っています。今のブリヂストンの素晴らしいところは、「もうちょっとこういうタイヤが欲しい」とか「レンジの違うタイヤが欲しい」とリクエストすると、ちゃんとその欲しいタイヤをレスポンス良く用意してくれることです。この開発力は大きなアドバンテージになっていると思いますし、これまでのGT500クラスでの経験から言ってもタイヤを外すことがないのが強みです。タイヤを外してしまうと一か八かといった状況でレースが破綻し、その週末が台無しになってしまいますが、ブリヂストンタイヤはそういうことがまずないので、そこは安心感を持っています。
――最後に今シーズンの目標とファンへのメッセージをお願いします。
鈴木:僕はまず、ROOKIE Racingというモリゾウさんのチーム、素晴らしい環境でレースさせていただいていることを大変嬉しく思っています。もちろんチャンピオンになりたいという思いはありますが、そのためには最終戦までタイトルを争える位置にいなければなりませんし、それはそう簡単なことではない。シーズンを通じて、ひとつひとつのレースを大事に戦い、自分の今後のレースに生かせるような経験を重ねていきたいと思っています。ファンの方に応援いただいて、それが大きな励みになっていますし、レースでの強みにもなっていると思います。今後とも応援していただけたらと思います。
石浦:勝利を目指して戦うことはもちろん大きな目標のひとつですが、SUPER GT全体を盛り上げたい、ファンの方に喜んでいただきたいという思いがあります。自分達が参戦することで、面白いチームが出てきたなとこれまで以上にGT300クラスにも注目していただけたらと思います。これだけ台数がいるGT300で活躍するのは簡単なことではありませんが、初年度からしっかり目立って上位争いに加わっていきたいと思います。




















