Vol.33 2024年シーズン NEWブリヂストンドライバー紹介 PART6 野中誠太選手

ディフェンディングチャンピオンとして2024シーズンを迎える#52 Green Brave GR Supra GT。エースを務める吉田広樹選手のパートナーとして野中誠太選手を迎え入れ、開幕戦からのスタートダッシュが期待されます。昨年チャンピオン獲得した吉田選手も同席のもと、昨年の振り返りから新しいパートナーである野中選手にもフォーカスしました。


「気持ちは挑戦者。1戦1戦を精一杯戦っていく」
吉田広樹選手

「チャンピオンチームで走る意味を受け止め、タイトルを狙う」
野中誠太選手

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――昨シーズンは2勝を挙げ、見事GT300王座に輝きました。ディフェンディングチャンピオンとして新たなシーズンを迎えるにあたり、どのように準備を進めてきましたか?
吉田広樹選手(以下、吉田):もちろん連覇を目指しています。ただ個人的にはチャンピオンだからやり方を変えるとか、そういったことはないと思います。どちらかと言えば気持ちは挑戦者。初心を忘れずに、1レース1レースを精一杯戦っていく。もちろんシーズンを戦っていく中で、去年のタイトル争いを通じて体験した「あの時にこういうことがあった」とか「今度はこうしてみよう」といった部分が経験として生きてくることもあると思いますが、ディフェンディングという言葉が示すような「守る」という気持ちではなく、挑戦者として戦っていくつもりです。
――2020年にGR Supra GTを投入していきなりのデビューウィン。あの年もシーズン2勝を挙げてランキング2位で、以来、待ち望んでいたタイトルでした。
吉田:あの年はちょうどコロナが蔓延したときで、スープラが得意とする富士スピードウェイで4戦開催という変則的なシーズンでした。それもあって最終戦までタイトル争いに絡むことができましたが、正直なところ本当にタイトル争いを演じることができたのは去年が初めでだと思っています。タイトルを取るには取りこぼしのないレースをすることが大事ですが、毎年毎年そうやってレースしてきて、去年は1戦トラブルがあった以外は上位フィニッシュでき、ポイント的に有利な状況で最終戦を迎えることができました。今年もそういう状況にしなければと思っています。ただ、デビューからずっと同じマシンを使っているので、どうしてもこれまで出なかったトラブルが出るようになっています。細かいアップデートは繰り返していますし、メカニックも原因を探って経験を積みながら、ただ修理するのではなく補強なども意識しながらアップデートしてくれているので、そういう意味ではマシンは去年よりも進化していると思っていますし、その進化が楽しみです。――野中選手は去年のオートポリスではサードドライバーとして参加、今年はチャンピオンチームに迎え入れられることになりましたね。
野中誠太選手(以下、野中):去年までHOPPY team TSUCHIYAに在籍していましたが、8月の富士のレースでそのマシンが燃えてしまい、シートを失っていました。そのタイミングでお誘いをいただいたわけです。吉田選手と昔から関係があったのも大きな理由のひとつで、僕のことを推薦いただいて埼玉Green Braveに繋がった、そういう経緯です。
――実際に52号車を走らせたのはいつですか?
野中:タイトルを決めた最終戦もてぎの翌日にカーボンニュートラルフューエルでのテストがあり、その時に初めて乗らせていただきました。そこからしばらく間が空いて、岡山国際サーキットの公式テストが二度目の走行です。
――クルマやタイヤ、それにチームの雰囲気など印象的なことを教えていただけますか?
野中:たくさんあります。クルマとしては去年も乗っていた同じスープラですので、それほど大きな違いはありませんが、JAF-GT300車両は空力がとても重要な要素になるので、チームによってエアロダイナミクスの考え方や、高速コーナーでのクルマの挙動の違いは大きいと思います。タイヤに関して言えば、ロングランでのパフォーマンスやピークグリップといった特性も全く違いますね。チームの雰囲気としても埼玉Green Braveは、埼玉トヨペットという大きな企業が運営するチームですから関わる人の数も多いですし、ドライバーとしての責任感も、また違った風に感じています。埼玉Green Braveは、レース戦略についてもしっかりとしたベースがある、という印象です。52号車は同じクルマを継続して走らせているから戦略の引き出しというか、幅が広い。それぞれのチームで異なることを経験できていると思います。

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――改めて、タイヤの特徴やブリヂストンへの要望など、ドライバーとしてのご意見をお聞かせください。
吉田:ブリヂストンのタイヤがあったからこそ僕らはチャンピオンになることができた。間違いなく、そう思っています。今年も同じパッケージで戦えるので、これは大きな武器です。去年、同じブリヂストンタイヤを履くJAF-GT300車両のチームとタイトル争いをしたように、今年も多分同じブリヂストンタイヤ勢が強力なライバルになるでしょうし、僕らとしても負けるわけにはいきません。今年の大きな変更のひとつに予選方式があります。Q1とQ2を同じ1セットのタイヤで走ることになりましたが、これは率直に言ってブリヂストンがいる限り、僕らにとっては強みになると思いますし、そのまま決勝スタートするというのもアドバンテージになります。とはいえ、Q1でしっかりタイムを出して上位グループに入ってからQ2に繋げなければいけないので、そこはタイヤ選びを間違えないようにしなければいけない。タイヤの持ち込みセット数が減りましたから、今までのように安全パイで、簡単に言うとソフト側とハード側を2種類用意するようなことが、レースにもよりますが多分できず、持ち込みタイヤを1種類に絞らなければいけないシチュエーションが出てくると思います。実際に戦ってみなければわかりませんが、ブリヂストンタイヤが強みになる部分は絶対にあると思います。ブリヂストンが持っている膨大なデータを見てもそうですし、僕らもタイヤテストでエンジニアさんから的確なアドバイスをもらっているので、今年のレギュレーションでより有利になる面があると期待しています。
野中:吉田選手と同じ印象です。ワンセットでQ1もQ2もアタックするというこのレギュレーションは有利に働くと思います。決勝レースでは長い距離を走ったときのペースが大きな強みになると思いますし、レース戦略も色々と考えることができる。チームとして引き出しを増やせるので、安定した結果を出しやすいと思っています。今年も長い距離のレースがありますし、夏場に向けてはさらにその差が出てくると思うので、ある意味楽しみです。公式テストではレインタイヤも走りましたが、とにかく雨量が増えた時に安定感がありました。雨量が多いとハイドロプレーニングしやすくなりますが、水の膜に乗ってマシンをコントロールできない状況はレーシングドライバーにとっても恐怖ですし、ある意味、どうしてもリスクを背負わないといけない部分でもあります。でもブリヂストンタイヤはその領域で安心感がある。雨量が増えてもまったくパフォーマンスが落ちないというのがブリヂストンの秀でた点だと思います。
――嬉しいお言葉です。予選の話に戻りますが、Q1とQ2、2回アタックして決勝スタートまで1セットのタイヤを履くことになりますが、例えばQ2を考えてQ1は「少しだけ抑えてアタックする」といった微妙なさじ加減もあるのでしょうか?
吉田:僕の感覚では完全にフルアタックです。多分そこがライバルメーカーに対するブリヂストンのメリットだと思います。それに最初のフルアタックと、2回目のフルアタックの落ち幅が少ないこともアドバンテージになると思います。仮に自分がQ1を担当するとして、本来なら2周目にアタックして3周目はピットに戻る予定だったとしても、3周目のセクタータイムを見てまだいけそうだったら「もう1周やるよ!」と無線で伝えてアタックするつもりです。ブリヂストンに関しては、1周多くに走ったからといってQ2のタイムがそれほど落ちるとは思っていません。
――タイヤのキャラクターに合わせてドライバーとして、何か気を使うとか走り方を変えることもありますか?
野中:まだブリヂストンタイヤでの経験は浅いのですが、現段階で感じている中で大きいのはフロントタイヤの印象で、ステアリングを切った時のタイヤの動きのリニアさです。ステアリングを切ったとおりにタイヤが動いてくれて、何というか尖ったような動きをすることがないなと感じています。ブリヂストンタイヤはそこが安定しているのでドライバーは毎周、同じような走り方をしやすいと思います。それと、タイヤに荷重を載せやすいという点もロングランの強みになってくると思います。構造とゴムのバランスが整っているという印象です。
――逆に、ブリヂストンタイヤを履くうえで気をつけていることはありますか?
吉田:これまでの印象で言うとアウトラップ、でしょうか。これは寒い時期に限った話ですが、ロングランのペースに優れる分、それと比例してアウトラップではウォームアップに気を付けないといけない。ただこれは、例えば決勝に向けて皮剥きしておくなど、工夫でカバーしています。決勝で使うタイヤを皮剥きするのはもったいないとも思いますが、ロングランの強さはレースの強みですから、ここは何としても生かしたい。皮剥きにしろドライビングにしろ、チームやドライバーの工夫でカバーしていけばいいと考えています。幸いここ数年、それだけ寒い状況のレースはありませんけどね。
野中:アウトラップでのタイヤの熱の入り方に関しては少し時間が掛かる部分はあります。それとピックアップを拾ったときの対応も。岡山のテストでは新品タイヤを履いたときにピックアップに悩みました。しっかりと皮を剥いて熱が入ってくると本当に高いパフォーマンスを発揮してくれますが、レース終盤などコース上にピックアップが増えたときにはちょっと気をつけなければと思っています。

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――先ほど戦略という言葉がありましたが、チームに加入してオフシーズンのテストの段階から早くも戦略を見据えたプログラムを進めているのが印象的でした。チームの一員として戦っていくにあたり、吉田選手からも具体的にアドバイスを?
吉田:例えば雨の日はコース上で気をつけなければいけないポイントを伝えるとか、その程度ですよ。野中選手も経験がないわけではないし、他のクラスで活躍してきたドライバーなので、まずは彼なりに走ってもらっています。岡山のテストではニュータイヤのアタックもしてもらいましたし、気になることがあれば二人で話し合って、という感じです。こちらからどんどん伝えるというよりは、例えば雨のテストでクラッシュすると取り返しが付かないのでそれは避けようとか、本当に抑えておきたい重要なポイントをドライバーとして共有するぐらいです。走行後のコメントを聞いても、概ね自分と同じように感じているようです。ニュータイヤでのアタックでは細かい失敗もあったと思いますが、最終的にはうまくアジャストして好タイムをマークしてくれました。ただレースに向けてロングランでの走り込みはまだできていないので、そこはシーズンを戦いながらの課題になります。
――最後に野中選手、新しいチームでの役割やご自身のドライビングなど、どういうお気持ちでシーズンを戦っていきますか?
野中:まずはチャンピオンチームに迎えられたことの意味をしっかり受け止めています。それだけ高いレベルのことがドライバーに求められると思います。残念ながらこれまでSUPER GTで上位争いを演じたことはありませんが、上位になるほど戦い方は違ってくると思います。そこでしっかりと落ち着いて自分のパフォーマンスを引き出し、安定した結果を残してチャンピオンを狙います。大ベテランである吉田選手からアドバイスをいただきながら、確実に戦っていきたいと思います。
吉田:目標は間違いなくタイトル連覇です。口に出そうが出すまいがこれは変わりません。野中選手が速いのはチームも僕も十分に分かっていますから、変なプレッシャーをかけることもない。去年、僕らがやっていて良かったのは、攻めるべきポイントと抑えるべきポイントをうまくコントロールできたということ。シーズンを戦っていれば、無理しないでポイントを稼いでおくべきレースも多分出てきます。そういう認識をチームの中でしっかりと共有しておくこと。無理してでも絶対に行かなければいけないという大事な局面も、タイトル争いする中では出てくると思いますが、そこは思う存分に攻めてもらいたいですし、そうでないところでは、例えばメカニックが作業でカバーしたり、僕も走りでカバーする。あまりプレッシャーは感じずに、のびのびと、でも精一杯やってもらえたらと思います。