2019年、2020年にTEAM IMPULでカルソニック IMPUL GT-Rを走らせた佐々木大樹選手が、ブリヂストンタイヤ装着チームにカムバック。三宅淳詞選手と組んで3号車、Niterra MOTUL Zで戦います。毎シーズン最終戦までタイトル争いを演じている勢いのあるチームだけに、佐々木選手の加入でさらなる躍進が期待されます。

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――2013年からSUPER GTに参戦し続け、今年はNISMOに移籍しチームもパートナーも変わって心機一転、改めてGT500に挑むことになりました。テストを重ねて開幕を控えた今の率直な気持ちをお聞かせください。
佐々木大樹選手(以下、佐々木):GT300で1年走った後で再びGT500に戻ってきたことはもちろん、こうして再びブリヂストンと一緒に戦えることがすごく嬉しいです。レーシングカートの時代から僕はずっとブリヂストンのお世話になり、タイヤ開発にも携わってきました。ブリヂストンに育てられたと言っても過言ではないほどで、SUPER GTの現場スタッフもほとんど顔見知りです。そのブリヂストンと共に、自分自身まだ取ったことのないタイトルを目指す環境にあることを、とても嬉しく思っています。今のGT500は、本当にちょっとしたことで状況が変わるシビアな戦いで、天候や路面コンディションといった僅かな違いで順位がガラッと入れ替わる超接戦ですが、セパンテストでも走り出せばパッとタイムは出ましたし、十分に走り込みもできました。ただ、同じブリヂストンタイヤを履くマシンが12台もいる中でどう戦っていくのかは簡単ではないと思っています。
――3号車はここ数年、コンスタントにタイトル争いに絡んでいる注目を集める存在です。
佐々木選手:ええ。外から見ていても3号車はいい結果を残していますし、実際に加わってみて、テストプランの組み立て方やブリヂストンとのコミュニケーションの取り方、そこからどうレースに繋げていくかなど、やはりトップ3にいるチームだと言うことを実感しています。そういう意味でも本当に3号車のシートに収まったのは良かったと思います。
――三宅選手との関係はいかがでしょう? 車両の開発やセットアップなど、ドライバーとしての主軸はどちらになるのでしょうか?
佐々木選手:どちらがメインという感じはあまりないですね。僕ももう10年GT500に乗っていますし、お互いに速さもほぼ一緒で、それぞれにいい所、悪い所を確かめ合っている段階です。三宅選手とはそれこそレーシングカートの頃からずっと一緒、というか彼が小さい頃は僕が教えていたぐらいの本当に古くからの関係で、仲がいいというか、いい意味で気を遣うことなくレースに集中できると思います。

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――他メーカーのタイヤでもGT500を走らせてきた佐々木選手から見て、タイヤメーカー同士の開発競争はどのように映っていますか?
佐々木選手:タイヤメーカーにはそれぞれ得意なポイントがありますが、ブリヂストンはどこか一点を追求するのではなく、全方位に性能を高めようとしているというのが変わらない方針だと思います。メーカーによっては、特定の状況下で高いピークグリップを狙うこともあって、これは実際、予選ではとても有効です。それに対してブリヂストンはしっかりピークグリップを上げつつも、さらに決勝のロングランペースを維持しています。ただここ数年のブリヂストンには、「ポールポジションも取るぞ!」という意気込みを感じます。大事なのは決勝レースなんだと分かってはいても、やはりポールポジションというのは圧倒的に最速で、ポールを取った瞬間、パッと輝くわけじゃないですか。タイヤメーカーとしても、そこはライバルに取られたくないという気持ちの表れだと思います。
――そもそものタイヤのキャラクターについてはいかがですか?
佐々木:どんな状況でも懐が深い、ですね。ドライでもウェットでも、寒くても暑くても、どんな時でもオールマイティにポテンシャルを発揮する懐の深さが、いちばんの強さではないでしょうか。特にSUPER GTでは持ち込みタイヤを決める段階ではレースウイークの気温も分からないし、レース時間も長いからスタートとゴールで気温や路面温度も変わってくる。どんなタイヤメーカーも、温度域が決まっていれば、そこに合わせ込んで尖ったタイヤを作ることはできますが、実際には決め打ちはできないので、幅を持たせた中でポテンシャルを高めなければならない。ブリヂストンタイヤの懐の深さは、ドライバーとしてもとても乗りやすいというか、使いやすいというか、とても安心感があります。一方でブリヂストンに勝つために、ライバルメーカーはもっともっと尖ったタイヤを作ってくるかもしれないし、そこが開発競争の面白いところでもありますが、勝負はタイヤだけで決まるものではありません。ブリヂストンと密なコミュニケーションを取りながらクルマを合わせ込んで、ドライバーもタイヤのウォームアップやロングランなど、使い方を工夫しなければなりません。チームとドライバーと、そしてタイヤ。この3者の関係がうまくいった時に優勝に手が届くのだろうと思います。

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――その中で、ご自身の経験であるとかドライビングスタイルであるとか、特にどの部分を武器に戦っていきますか?
佐々木:僕は基本的に一発のタイムに自信があって、セパンのテストでもトップタイムを出しています。でもSUPER GTではロングランがとても重要で、特に最近はレース距離も長くなっていますし、CNFの影響なのか決勝中の路面状況の変化も大きくなっているようで、決勝への合わせ込みが何より大切です。一発の速さは三宅選手も僕も自信はあるので、あとは決勝に強いクルマ作りとタイヤ選択だと考えています。
――今のお話と重なる質問になるかもしれませんが、3号車全体として今シーズン、どのような戦いをイメージしていますか?
佐々木:武器になるのはレースペースです、去年のチャンピオンである1号車も同じブリヂストンタイヤを履いていますが、やはり決勝で強かった。もちろん予選の速さも大事ですが、サクセスウェイトがあるのでどうしても予選で上を狙えない時もある。そうなった時の強みはやはりロングランペースになります。とにかく僕たちは今、ロングランに注視してマシンのセットアップとタイヤ選択に取り組んでいるところです。
――ありがとうございます。最後に今シーズンに向けての意気込みをお聞かせください。
佐々木:10年GT500をやった後に1年間GT300で走っての復帰ですから、僕としては本当に勝負の年で、今年はチャンピオンを狙うしかありません。三宅選手も同じ気持ちです。3号車としてもタイトル争いに絡みながら届かないシーズンが続いているので、全員がタイトルを取りたいという気持ちで、すごく集中して取り組んでいます。タイトルを取りに、どんな時でもフルプッシュで戦う姿を応援して欲しいと思います。
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