レクサスのハイブリッドカー、LC500hをベースにオリジナル開発したマシンでGT300を戦うapr。今シーズンは世界耐久選手権でハイパーカーを走らせていたオリバー・ラスムッセン選手を迎えて、さらなる躍進を図ります。同じく今年からチームに加わった小山美姫選手と、サードドライバーとして3シーズン目を迎える根本悠生選手に、新たなシーズンに賭ける意気込みを伺いました。
*オリバー・ラスムッセン選手は怪我の為欠席
――小山選手はFIA F4やF3アジア選手権、それにWシリーズといったフォーミュラレースを中心に活躍し、2023年からはGT300にも参戦しています。まずは今年31号車に乗るようになった経緯をお聞かせください。
小山:今シーズンの活動が決まらない中、ギリギリの段階で声をかけていただきました。正直、今年はSUPER GTのシートはないだろうと思っていたところにフルエントリーということになり、応援してくれているたくさんの人に感謝しています。
――根本選手は3シーズン目ですね?
根本:僕は元々、当時スーパー耐久でライバルとして走っていた嵯峨宏紀選手がaprに引き入れてくれました。その時はレギュラードライバーとして嵯峨選手と小高一斗選手の2名とも決まっていたので、何かイレギュラーなことやトラブルがあった時には乗るという形でサードドライバーに収まって、初年度は表彰台にも上がりましたし、かなり走らせていただきました。今年でもう3年目ですから、ある意味超助っ人ドライバーという感じですね。一応所属はランボルギーニですし、もう28歳なので中堅ですから、サードドライバーとして使っていだけることは嬉しいですし、こうして勉強させてもらっていることに感謝しています。――小山選手は、2年間、ライバルチームとして31号車を見ていたわけですね?
小山:外から見ていたといっても自分のことに精一杯で、他所のチームの状況を意識する余裕はありませんでした。サードドライバーでしたし、私の場合はデビューの年も1レース出ただけ。去年のチームでは3レース走らせてもらいましたが、なんていうか、知れば知るほどわからない部分、疑問に思う部分が増えていくのに、それを実際に走って試す機会がなくて、疑問が疑問のまま残ってそれが不安要素になることも多かったですね。今年はフル参戦できるので、もちろん結果ありきの世界ですから結果も狙いたいですし狙わないといけないとは思っていますが、まずはこれまで疑問に思っていたことをもう少し明確にしていきたい。正しい方向で理解を深めて自分の実力を引き上げていくことが大事だと思っています。その中でチームの目標である優勝はもちろん、自分たちのポイントも取りたいですし、表彰台が視野に入るシーズンにできたらと思います。

――そのわからない部分、というのは例えばどういったことでしょう?
小山:タイヤもそうですしドライビングもそう。全部ですね。例えばセットアップについてもエンジニアとレギュラードライバーが決めたことに対して「どうなりましたか?」と確認することはできますが、実際問題としてそこで自分はマシンを走らせてはいません。仮に自分が走ったとしても、他のドライバーと同じコメントになるのかどうかも疑問ですし、もっと他のセットアップがあってもそれを試せるわけでもない。ドライバーによって走らせ方は違いますし、エンジニアによって仕事の進め方も違います。タイヤも持ち込んだ種類によってその感度は大きく違うと思うので、やはり自分で走らせてみないとなかなか把握できないとことです。
――まさに今シーズン、レギュラードライバーとしてこれから経験を積み学んでいく、ということですね?
小山:そうです。
――ラスムッセン選手のアクシデントは大変残念なことですが、手術は無事成功しているようで何よりです。復帰の目途は立っているのでしょうか?
小山:まだ私たちも聞かされていません。本当に根のいい人で、チームですから助け合うのは普通のことかもしれませんが、彼の場合はそれが義務感ではなく、仮に同じチームでなくても率先して助けてくれるような人だと思います。そうですよね?
根本:ええ。さすがにエンデュランスレースに慣れている感じで、自分のセットアップだけではなく、チームとして前に進んでいくことの大切さをきちんと理解しています。それに複雑なハイパーカーに乗っていたドライバーなのでどんなコンディションにも対応してきますし、SUPER GTの難しさを理解した上で、3人で前に進んで行こうと一緒にやってくれている感じです。すごくいいと思います。
――とはいえラスムッセン選手にしてもSUPER GT初参戦です。
根本:それについては2年間のバックデータもあるので、セットアップは結構僕がやっています。あとエンジニアとの通訳も。
小山:セットアップに関してはまだまだこれからだと思います。この時期のテストは気温やその他のコンディションが本戦とはまったく違いますし、ここから先はレギュラードライバーがコメントして合わせ込んでいかなければ何の意味もありません。根本選手が言っているコメントやフィーリングとやはり私が感じることとは異なってきます。乗りやすいクルマと速いクルマは違いますし、そういうことは誰かが、ではなく皆で合わせていかなければいけない。速いクルマを作るのか? それとも乗りやすいクルマを作った方が引き出せるポテンシャルが高いのか? その時点の自分たちの実力やレベル、立ち位置によっても、何を基準にセットアップしていくのかは絶対に変わってきます。ですので、まさにこれからだと思います。
根本: aprはコンストラクターでもあるので、本当に色々なところを弄ることができるんですよ。どんなクルマにもできるというのがうちの強みであり、難しいところでもある。ドライバーは3人いますが、もちろんレギュラーのふたりでどんなクルマにも作っていける。ただそれと同時にタイヤの開発もしないといけないし、ダンパーなど他の部分の開発もしないといけないので、結果的に今は僕が乗っている時間が長いだけです。シーズンインしてからはこういった作業を、ラスムッセン選手や小山選手がどんどんやっていくことになるでしょう。
――ブリヂストンタイヤの印象や、特性をどう生かしてどう強いクルマを作っていくのか、その辺りをお聞かせください。
根本:第一に、これはタイヤそのものの話ではないかもしれませんが、ブリヂストンの開発スピードがとても速いと思います。チームの意見とタイヤの状況をきちんと分析して、次のレースやテストまでに「ここはこういうコンパウンドにしました」「こういう構造にしましたがどうですか?」というキャッチボールがスピーディーなことに驚きました。僕はヨーロッパで他メーカーのコントロールタイヤや、時には次世代用コントロールタイヤをテストすることもありますが、やはりそれなりの時間はかかります。こんなに短時間でこれだけのことができるのかという、それがいちばんの驚きでした。もうひとつは求めている性能に対して、しっかり目的に合わせたタイヤを作ってくれることですね。もちろんうまくいかないこともありますが、例えばウォームアップを早くしたいとか、前後のバランスをどうしたい、ピークグリップとロングスティントでの落ち具合をどういう風にしたいといった、チーム側からのリクエストに応えてくれる。その上で、開発タイヤらしい圧倒的なグリップとロングライフ。新品のピークグリップから一段階少し落ちて、そこからのロングスティントをあれだけハイペースを維持して飛ばせるタイヤって本当にない。性能と開発力に驚きました。
――小山選手はブリヂストンタイヤについてどんな印象でしょう?
小山:新品タイヤでのアタックはまだ2回経験しただけですが、ピークグリップでの一発の速さは自分の予想以上に限界値が高くてそこまで出しきれなかったほどです。ただ、逆にそこに持っていくまでのウォームアップがポイントで、限られたセット数で試した中ではまだこの先にどれだけのピークグリップがあるのかというのを勉強しているところです。
――今シーズンGT300で戦うにあたり、目指していることをお聞かせください。
小山:冒頭の言葉と被る部分もありますが、GT300では3年目とはいえ初のフル参戦ですから、きっと初めてのことを色々経験すると思います。それらを正しく理解し技量を引き上げていくことが結果に繋がると思うので、自分にできることはチームと協力しつつ、ドライバー同士で吸収できること、学べることをたくさん学んで結果を出すことです。チームとしてはまずは1勝という目標を掲げていますが、自分としては様々なことを学んで技量を上げて、表彰台を狙えるところまでポテンシャルを上げていきたいと思っています。
――体力的な不安はありませんか?
小山:ないですね。フォーミュラカーとツーリングカーは姿勢も違うので使う筋肉も異なりますが、フォーミュラカーの場合は体幹や首、それとパワステがないので腕にきます。SUPER GTでは1トンを超える重さを止めるのでブレーキングでは80kg以上のスクワットを毎回持ち上げるぐらいの力が必要ですが、それはデビューする前から強化しています。大丈夫です。
根本:初年度は表彰台にも乗ることができましたが、ニューマシンということもあってタイヤとのマッチングに苦労してクルマが追いついていない状況でした。2年目はクルマも進化してチャンスもありましたが、取りこぼしてしまったレースが多すぎた。きちんと戦っていればタイトル争いもできたし、もっともっと表彰台にも乗ってないとおかしい1年で、チームとしても悔しい思いをしました。今年はポテンシャル的にもかなり仕上がっていますし、タイヤとのマッチングも問題ありませんし、さらに進化できる新しい武器を開発しているところです。個人的にはもう開幕戦からチャンピオン争いを目標に戦いますと言い切っていい年だと思っています。ただラスムッセン選手も小山選手もチームに加わったばかりですし、GT300は決して甘いチャンピオンシップではありません。まずは取りこぼしのないよう着実に表彰台を重ねていって、どこかで絶対に1勝はしなければ。サードドライバーというもどかしさも少々ありますが、サードドライバーだからこそサポートできる部分もあると思うので、トップ5に常連でいられるようサポートしていく1年にしたいですね。
小山:今年のフル参戦は本当に皆さんのおかげです。関係者の皆さんもそうですし応援してくれている皆さんもそう、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。結果は一旦置いておいて、まずはこのフル参戦というのが本当にありがたいことなので、感謝の気持ちをお伝えしたいです。
根本:31号車はハイブリッド車の開発という位置づけもあり、今年はその部分も相当アップデートしています。実際に市販車と同じ部品が使われていたりもするので、皆さんの目の前で走っているレーシングカーに使われている技術が、実はトヨタのハイブリッド車に転用されていることをもっと知っていただきたいですし、aprはクルマの開発でもがんばっていることをお伝えしたいですね。