2シーズンのフォーミュラE参戦を経てSUPER GTに復帰したサッシャ・フェネストラズ選手。チームは以前在籍していたTOM’SからSARDに変わりましたが、かつてコンビを組んでいた関口雄飛選手と組み、磐石の体制でSUPER GTに再チャレンジです。この2年間の経験を生かしてどのような活躍を見せてくれるのか? 開幕を目前に控えた今の気持ちを伺いました。
――フォーミュラE世界選手権で2シーズンを戦い、2年ぶりのSUPER GT復帰ですね?
サッシャ・フェネストラズ(以下、SF):フォーミュラEはエキサイティングなカテゴリーで、ドライバーとして多くのことを学び成長した2年間でした。その経験を生かして再び日本でSUPER GTとスーパーフォーミュラを戦うのがとても楽しみです。日本は4年間生活して楽しい思い出がたくさんある、僕にとって特別な国。日本を離れるときにも寂しいって声をもらったし、今回も「おかえり!」ってメッセージをたくさんもらいました。またじっくり腰を落ち着けて日本で戦いたいし、戦うからにはタイトルを狙います。とはいっても2年間のブランクは決して小さくありません。フォーミュラEのマシンはダウンフォースがないからあまりグリップしないし、何よりギヤもありません。SUPER GTとはまったくの別物で、色々なことがまったく違います。1月のセパンテストで2年ぶりにGT500を走らせて、今も少しずつ慣れてきているところですが、ベストパフォーマンスを引き出すにはもう少しがんばらないといけないかな?TOM’S以外のチームでGT500を走るのは初めてですが、これもいい経験になるはずです。SARDも去年から大きく体制が変わっているようで、新しいエンジニアの阿部和也さんと一緒に仕事しているところですが、2台体制のTOM’Sと比べたらチームの規模は小さいかもしれませんが、過去にチャンピオンにもなったチームですから、当たり前の話ですがいい結果を残さなければと思っています。脇阪寿一監督も経験豊富で、多くのアドバイスをもらっていますし、関口選手は2020年のチームメイトで、僕たちはドライビングスタイルがとても似ているので、あの時もいつもセットアップは順調でした。
――2年ぶりに戻ってきて、マシンやタイヤにどんな変化を感じましたか?
SF:セパンテストを走っただけで進化は大きいと実感しました。タイヤのグリップが高くなっているし、とりわけトヨタ車との組み合わせで上げ幅が大きいと思います。レースの本番でタイヤがどう働いてくれるのか、今からとても楽しみです。岡山や富士のテストでは何台かのマシンが30周のロングランをやっていましたが、ラップタイムは驚くほどコンスタントでした。これはライバルメーカーにはない強みになるはずです。
――とはいえ15台中12台がブリヂストンタイヤを履いています。
SF:そうなんですよ! そうなるとSUPER GTでの経験が大きな差になると思います。特にレースで使うタイヤについては、ブリヂストンのエンジニアとのコミュニケーションがとても重要になるでしょう。そう言う意味でも阿部エンジニアや関口選手のような経験豊富な人の存在が大きい。もちろん僕も走るたびに、最適なタイヤのウォームアップはどうすればいいのか、タイヤの動きが大きすぎないか、デグラデーションが悪くないか、ピックアップやグレーニングは? と、とにかくたくさんの情報をフィードバックして、阿部エンジニアや関口選手と一緒にタイヤを決めています。もちろん、そこには脇阪監督もいます。
――関口選手と組んだ2020年は、開幕戦でいきなり2位、続く第2戦も2位と好調な出だしでした。
SF:あの時は開幕から2戦連続で表彰台に上がりましたから、確かににラッキーコンビネーションかもしれませんね。ドライビングスタイルが似ているというのは、とても大きなメリットだと思います。ドライバーによってリヤがルーズなセットアップを好んだり、あるいはスタビリティを重視したりしますが、僕らはふたりとも決勝を考えてちょっとスタビリティ寄りぐらいを好む傾向で、これはタイヤマネージメントにも有効です。また予選のセットも一発のアタックでタイムを出しやすいセットの好みも僕と関口選手は同じですね。
――お話を伺っていて、今から開幕戦がとても楽しみです。
SF:もちろんタイトルを狙っていきます。チーム体制が変わったばかりなので今の段階で大きなことは言えませんが、全員で力強いシーズン争いをしていきます。最後の富士公式テストが終われば、もっと勢力図が見えてくるでしょうし、きっとその頃にはタイトルを見据えたところにいると思います。今はまだ、自分たちのポテンシャルを見極められていないし、ライバルの中でのどの程度の所にいるのかも判断できていませんが、僕も関口選手も、マシンに十分な手ごたえを感じています。