3年振りに開催された2022年の鈴鹿8耐。今年はTeam HRCやWSBKライダーを招集した前大会優勝のKawasaki Racing Team Suzuka 8Hのファクトリーチーム対決に、EWCチャンピオン争いを展開するYoshimura SERT MotulとF.C.C. TSR Honda France、YART - Yamaha Official Team EWCのEWCタイトル争い、全日本RRに参戦するトップチームの参戦など多くの話題があり、そのほとんどのチームはEWCフォーミュラクラスに参戦。
EWCではもう一つのクラスであるSSTクラスがあり、ヨーロッパでは他社タイヤのみ使用可能のワンメイクとなっていますが、鈴鹿8耐でのSSTクラスはどのタイヤメーカーを使用出来るマルチメイクで開催されました。
今年のSSTクラスには13台が参戦し、ブリヂストンタイヤを使用するのは6チーム。その中で事前に行われたテストで結果が好調だった2チーム、#64 Kawasaki Plaza Racing TeamとWGP250クラスチャンピオン、原田哲也氏が監督を務める#806 NCXX RACING with RIDERS CLUB(Ya)の2チームの活躍をご紹介します。
#64 Kawasaki Plaza Racing TeamのマシンはKawasaki ZX10RR。ライダーは全日本RR ST1000クラスに参戦する岩戸亮介、ワールドスーパーバイク選手権で併催されているWSSP300クラスで活躍している岡谷雄太に清末尚樹を加えた3人で参戦。
#806 NCXX RACING with RIDERS CLUBのマシンはYamaha YZF-R1。ライダーはアジアロードレース選手権ASB1000クラスに参戦する伊藤勇樹、全日本RR ST1000クラスに参戦する南本宗一郎、全日本RR ST600クラスに参戦する井手翔太の3名で参戦します。
8/2(火)~3(水)の2日間はテストセッションとして走行枠が設定されました。
初日の走行は5枠、合計6時間15分の走行が設けられ、Kawasaki Plaza Racing Teamはベストタイムは2'09.473で総合11番手、NCXX RACING with RIDERS CLUBのベストタイムは2'09.935で総合15番手。
2日目も同様の走行枠となり、Kawasaki Plaza Racing Teamはタイムを更新。2'09.001で2日間総合結果は全体で13番手。NCXX RACING with RIDERS CLUBはタイム更新はならず、初日のタイムで全体総合20番手となりました。
8/5(木)からは公式スケジュールとなり、2時間のフリー走行、予選1回目・2回目、夜間フリー走行が設定。
注目の予選、EWCのレギュレーションにより3人のライダーの内、ラップタイムの速い2人の平均タイムで予選順位が決定します。しかし第3ライダーとなる赤腕章ライダーの走行時に時折雨が降る不安定な天候となってしまった為にタイムは伸びず。その結果、第1ライダー(青腕章)と第2ライダー(黄腕章)の2人の平均タイムで予選順位が決定。
SSTクラストップはNCXX RACING with RIDERS CLUBで平均タイム2'08.626で総合11番手。もう少しでSSTクラスでのTOP10 TRIAL進出と素晴らしい結果。Kawasaki Plaza Racing Teamは平均タイム 2'08.826で総合14番手。予選1回目で第1ライダーの岩戸亮介は2'07.364とEWCクラスと大差ないタイムを記録。両チームともに決勝レースでは大きな期待が掛かりました。
鈴鹿8耐の決勝日を迎えた8/7(日)。11:30に45台のマシンがグリッドに並び、ストレートの反対側からライダーがマシンに駆け寄りレースがスタートしました。
2周目にスプーンカーブでの転倒によりセーフティカーが介入。波乱の序盤となったレースは上位を有力チームが占める中、1時間が経過した時点でNCXX RACING with RIDERS CLUBはトップから約42秒遅れの10位と好位置を走行。Kawasaki Plaza Racing Teamはトップから1分強の14位と2台はSSTクラスの1ー2位で周回を重ねていきます。
しかし耐久レースの厳しさが好位置を快走するNCXX RACING with RIDERS CLUBを襲います。1時間を過ぎて好調に周回を重ねていましたが、走行中に何かトラブルが発生し緊急ピットイン。チームスタッフはすぐにマシン修復を行います。この作業で時間をロスする事となりますが、修復したマシンでレースに復帰。2時間が経過した時点で30位までポジションを落としてしまいます。
対してKawasaki Plaza Racing Teamは総合19位、SSTクラス2位で2時間を経過。さらに上位を狙って力走を続けます。
SSTクラスではEWCクラスのようにタイヤを素早く交換する機能がなく、時間が掛かってしまいます。EWCクラスに対してピット作業にハンデがあるものの、Kawasaki Plaza Racing Team・NCXX RACING with RIDERS CLUBの両チームはスタッフの努力により少しでも早くピット作業を終わらせるようにライダー同様、タイム短縮を意識して作業に取り組んでいます。
8時間耐久の半分が消化した4時間経過時。Kawasaki Plaza Racing Teamは総合14位、SSTクラスのトップに立っています。順位を落としたNCXX RACING with RIDERS CLUBは総合25位まで順位を上げ、SSTクラス6位。まだ4時間の走行が残っており、最後まで諦めない走りでさらなる順位アップを狙います。
6時間が経過した時点でKawasaki Plaza Racing Teamは総合13位とポジションを上げ、SSTクラストップを維持。NCXX RACING with RIDERS CLUBは総合19位まで順位を回復し、SSTクラス4位を走行。SSTクラス表彰台が視野に入ってきました。
徐々に辺りが暗くなってきた7時間経過時。Kawasaki Plaza Racing Teamは総合13位と順位変動は無く、SSTクラストップの座をキープして走行。NCXX RACING with RIDERS CLUBは総合18位、SSTクラス4位ですが、3位を走行するチームとは同一周回を走行しています。
鈴鹿8耐は残り1時間を切り、夜間走行に入ろうとしていた頃にスプーンカーブで2台が絡む転倒が発生。なんとSSTクラス2位を走行していたブリヂストンユーザーチームである#74 AKENO SPEED.YAMAHAと総合3位を走行していたEWCチームの#7 YART - Yamaha Official Team EWCのBS勢2台。この転倒によりSSTクラス3位に順位を上げていたNCXX RACING with RIDERS CLUBは2位に浮上します。
完全に日が沈んだ19:30。鈴鹿8耐のチェッカーが振られ、総合トップの#33 Team HRCが優勝。
そしてもう一つの鈴鹿8耐カテゴリーであるSSTクラスは#64 Kawasaki Plaza Racing Teamが205周でクラストップでゴール。最後まで諦めなかったNCXX RACING with RIDERS CLUBは202周を周回しクラス2位でチェッカーを受けました。
この結果、鈴鹿8耐はもう一つのカテゴリーSSTクラスでも1-2フィニッシュを達成。総合結果上位が注目される鈴鹿8耐ですが、改造範囲が狭く市販状態に近いマシンで争われるSSTクラスはライダーの努力とマシンを扱うメカニック達。そしてチームの総合力と絶対に諦めない気持ちが今年の鈴鹿8耐 SSTクラスを盛り上げてくれた事と感じました。
そして来年のSSTクラスにも注目して頂き、ブリヂストンタイヤを使用するチームの応援を宜しくお願いします!
*写真提供協力:Kawasaki Plaza Racing Team、NCXX RACING with RIDERS CLUB