笹原右京/ジュリアーノ・アレジ(Deloitte TOM’S GR Supra/BS)がピットインを遅らせるオーバカット作戦を成功させて12年ぶりのセパン戦を制する
- 開催場所:セパンインターナショナルサーキット(マレーシア)
- 開催日:2025年06月27日(金) 〜 2025年06月28日(土)
今年の第3戦は、マレーシア、セパンインターナショナルサーキットで行われた。コロナ禍で途絶えていた海外戦は、6年ぶり。コロナ禍以前の開催地は、タイのチャンインターナショナルサーキット(ブリーラム)だった。そしてセパンの開催は実に12年ぶり。とはいえGT500クラスは、毎年シーズンオフのウインターテストが行われているが、当地でのレースは初めてのドライバーも多い。セパンでは予選(金曜日)と決勝(土曜日)が、夕方から行われた。4番手グリッドからスタートした笹原右京/ジュリアーノ・アレジ(Deloitte TOM’S GR Supra/BS)は、各車がレースの3分の1あたりでピットインするのに対して3分の2までファーストスティントをひっぱり、暫定トップに立った段階でピットインしてドライバー交代、そのままポジションをキープしてトップでゴールラインを切った。

<予選>木曜日の午後に練習走行1、そして金曜日の午前中に練習走行2が行われ、金曜日午後の予選前の時点で2007年に記録されているGT500クラスのコースレコード、1分54秒306は続々と大幅に短縮されていた。今回の開催までにGT500クラスマシンの進化よってウインターテストの状況からコースレコードは5秒近く更新されるのではないかと予想されていた。現地時間の午後4時30分から予選が開始された。灼熱の地でも夕方に向かって気温、路面温度は下がり始めていた。10分間のQ1でトップタイムを叩き出したのは、国本雄資/阪口晴南(WedsSport ADVAN GR Supra/YH)だった。そして、Q2でも国本/阪口組はタイムを更新してポールポジションを獲得。2番手に野尻智紀/松下信治(ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT/BS)。3番手に伊沢拓也/大草りき(Modulo CIVIC TYPE R-GT/DL)。結果としてGT500クラスの15台全てがQ1でコースレコードを更新していた。練習走行2でトップタイムを叩き出していた関口雄飛/サッシャ・フェネストラズ(DENSO KOBELCO SARD GR Supra/BS)は、Q2開始早々にエンジントラブルが発生してしまいストップ。Q1で記録していたタイムによって10番手から決勝をスタートすることとなった。
<決勝>12年ぶりのセパン決勝。グランドスタンドの大観衆の大歓声とともに55周のレースが始まった。国本/阪口組が最序盤をリードするが、野尻/松下組が9周目にトップに躍り出た。そして、後続では4番手スタートの笹原/アレジ組が3位に、6番手スタートの平峰一貴/ベルトラン・バゲット(TRS IMPUL with SDG Z/BS)。そして、7番手スタートの塚越広大/小出峻( Astemo CIVIC TYPE R-GT/BS)が続々と順位を上げ、ブリヂストン装着車が上位を占めていった。20周を過ぎてピットインするチームが多い中でコースに留まった笹原/アレジ組が暫定トップとなり、2位以下にリードを広げていた。そして32周して最後にピットインしてドライバー交代してトップでコースに復帰した。しかし、アウトラップでタイヤがまだウォームアップされていない状況で野尻/松下組の猛追を受けることとなった。テールtoノーズの状態でも笹原/アレジ組は、トップの座を死守。タイヤに熱が入り出すと徐々に2位との差を広げていった。ピットイン後、平峰/バゲット組は3位に、塚越/小出組が4位にポジションアップ。9番手からスタートした第2戦優勝の石浦宏明/大湯都史樹(KeePer CERMO GR Supra/BS)とQ1で敗退してしまい11番手から追い上げていた山本尚貴/牧野任祐(STANLEY CIVIC TYPE R-GT/BS)が6位争いをしている際に山本/牧野組に危険走行行為があったとして結果に10秒加算のペナルティを受けてしまった。山本/牧野組は、その後もハイペースで順位アップし、3番手でゴールラインを切ったがペナルティによって6位となった。笹原/アレジ組は、昨年の第6戦以来、今季初勝利。ポイントリーダーでサクセスウエイト70キロ(燃料リストリクター2段階)の坪井翔/山下健太(au TOM’S GR Supra/BS)は、8番手から決勝をスタートして1周目に接触を受けてクラス最後尾まで順位を落としてしまったが、こちらもオーバーカット作戦で終わってみれば、7位フィニッシュしてポイントを獲得。ランキング首位の座は変わらない。
<優勝ドライバーのコメント>
笹原右京選手「序盤は結構接近戦が多い中でタイヤと燃費をセーブしながらトップ2台についていくのがギリギリで、僕らも彼らと同じ早めのタイミングでピットに入ろうかと悩みました。でも、チームとタイヤ、マシンを信じて、やっぱり当初の予定どおり引っ張って行こうという作戦に切り替え、そうしたらやっぱりタイヤグリップが戻ってくれました。チームは素晴らしいクルマを用意してくれましたし、タイヤも最高でした。ピットイン前最後の5、6周は、自分のなかでは人生をかけていた……じゃないですけど、“もうここしかない!”と思ってすべてを振り絞ってプッシュして。そこがトップで戻れるかどうかの瀬戸際だったので、うまくやり切れたのかなと思います。いつものようにチームのピットストップ作業は完璧で、ミスなく送り出してくれました。ジュリアーノもすごくアウトラップで頑張ってくれて勝つことができました」
ジュリアーノ・アレジ選手「素晴らしいレースでした。右京選手からバトンタッチしてアウトラップが一番苦戦するだろうなと思っていました。というのも、僕たちが選んだタイヤのコンパウンドが結構硬い感じのものだったので、アウトラップのウォームアップが大事になるなと思い、とにかく自分自身ベストを尽くしてがんばりました。14コーナーあたりで野尻選手がかなり近づいてきたのですが、なんとか逃げることができました。右京選手に大変感謝です。彼の素晴らしいファーストスティントがあっての今日の優勝だと思います」
<ブリヂストン MSタイヤ開発マネージャー:山本貴彦のコメント>
「予選では他メーカーにポールポジションを獲得されましたが、決勝では挽回する自信はありました。ウインターテストの結果を踏まえ、今回持ち込んだタイヤは、各チームさんに大きな違いはなく、安定したパフォーマンスを発揮できるものでした。どのチームさんでも優勝したチームと同じくレースの3分の2まで全く問題なく引っ張れるライフを持ったタイヤを供給しました。ショートスティントもロングも作戦を立てることができるものでした。結果として表彰台には3メーカーさんが立っていただくことができました」
決勝
- 開催日:2025/06/28
- 天候:Cloudy
- 路面:Dry
- 路面温度:42°〜35°
- 決勝出走:15
- 完走:14
- (5.543km x 55laps = 304.865km)
順位 | No | ドライバー | タイヤ | チーム | マシン | シャシー | エンジン | 周回数 | Delay(Lap) | ベストタイム | ベストラップ | タイム |
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1 | 37 | 笹原 右京 /G.アレジ |
BS
![]() |
Deloitte TOM'S GR Supra | 55 | 1:48'01.698 | ||||||
2 | 8 | 野尻 智紀 /松下 信治 |
BS
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ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8 | 55 | 1:48'20.744 | ||||||
3 | 12 | 平峰 一貴 /B.バゲット |
BS
![]() |
TRS IMPUL with SDG Z | 55 | 1:48'25.280 | ||||||
4 | 17 | 塚越 広大 /小出 峻 |
BS
![]() |
Astemo CIVIC TYPE R-GT | 55 | 1:48'26.805 | ||||||
5 | 19 | 国本 雄資 /阪口 晴南 | YH | WedsSport ADVAN GR Supra | 55 | 1:48'32.905 | ||||||
6 | 100 | 山本 尚貴 /牧野 任祐 |
BS
![]() |
STANLEY CIVIC TYPE R-GT | 55 | 1:48'33.108 | ||||||
7 | 1 | 坪井 翔 /山下 健太 |
BS
![]() |
au TOM'S GR Supra | 55 | 1:48'33.937 | ||||||
8 | 38 | 石浦 宏明 /大湯 都史樹 |
BS
![]() |
KeePer CERUMO GR Supra | 55 | 1:48'40.904 | ||||||
9 | 14 | 大嶋 和也 /福住 仁嶺 |
BS
![]() |
ENEOS X PRIME GR Supra | 55 | 1:48'40.931 | ||||||
10 | 64 | 伊沢 拓也 /大草 りき | DL | Modulo CIVIC TYPE R-GT | 55 | 1:48'43.414 | ||||||
11 | 3 | 佐々木 大樹 /三宅 淳詞 |
BS
![]() |
Niterra MOTUL Z | 55 | 1:48'53.813 | ||||||
12 | 16 | 大津 弘樹 /佐藤 蓮 |
BS
![]() |
ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16 | 55 | 1:48'54.101 | ||||||
13 | 23 | 千代 勝正 /高星 明誠 |
BS
![]() |
MOTUL AUTECH Z | 55 | 1:48'57.636 | ||||||
14 | 39 | 関口 雄飛 /S.フェネストラズ |
BS
![]() |
DENSO KOBELCO SARD GR Supra | 55 | 1:49'24.420 | ||||||
- | 24 | 松田 次生 /名取 鉄平 | YH | リアライズコーポレーションADVAN Z | DNS |