「できる準備をすべて整えてブリヂストンユーザーの2年連続タイトルを目指す」

国内でもっとも人気の高いSUPER GT。今シーズンの最終戦は11月11~12日にツインリンクもてぎで開催されます。ブリヂストンユーザーチームはこれまで、GT500クラスで7戦中6勝をマークしシリーズランキング1位、2位を堅持。2年連続のシリーズチャンピオン獲得を目標に万全の準備を整えています。期待の高まる最終戦の見どころをタイヤエンジニアが解説します。

LEXUS+BS勢が強さを見せた前半戦

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 今シーズンのSUPER GT500クラスでは、ブリヂストンユーザーチームが7戦中6勝と圧倒的な速さ・強さを見せています。特に序盤3レースでは毎回ブリヂストンユーザーチームが表彰台を独占。とりわけLEXUS LC500とBSタイヤの組み合わせが、ライバルを寄せ付けない速さを見せました。現場でタイヤサポートに携わる松本(MSタイヤ開発部ユニットリーダー)はLEXUS好調の要因について「オフシーズンの早い段階からLEXUSと共に開発を重ねてきた結果です。シーズンオフの間からテストを繰り返し実施し、しっかりと時間をかけてタイヤの評価を重ねてきたことが戦績に繋がっています」と説明しました。

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ブリヂストンはLEXUS LC500、Honda NSX-GT、NISSAN GT-R NISMO GT500と3車種にタイヤを供給していますが、タイヤの開発は3車種とも同じベースのタイヤからスタートします。もちろん車種に合わせて作り込んでいくので、開発が進むにつれ結果的に“別物のタイヤ”になることもあります。ただし「最終的には各車両に合わせるように開発しているので特定の車種に合う、合わないというのはありません。LEXUS LC500の場合、やはり早い段階からマシンの仕上がりが良かったというのが大きな要因でしょう。Honda NSX-GTもシーズン中盤から調子を上げてきていることからも明らかでしょう」と松本は車種に限定されることのない開発姿勢を強調しています。

「どんなに良いタイヤでも負けたらダメ」

 ブリヂストンは今年、SUPER GT500クラス9台、GT300クラス4台にタイヤを供給しています。毎戦厳しい戦いが繰り広げられるSUPER GTですが、レース活動の目的として松本は「F1に参戦していた頃から変わりありませんが」と前置きした上で、「コンペティティブな環境でしっかり勝ち続けることで、タイヤの良さをアピールすること。そしてレースという極限の世界で磨いた技術を一般の市販車用製品に生かすことで技術を底上げしていくこと」と語っています。

 GT500に参戦する3車種すべて、15台中9台をサポートするブリヂストン。一方で、特定の車種に特化してタイヤ開発を進めるライバルメーカーもありますが、「多くのメーカーや車種に合わせて開発するからこそ見えてくることもあります」と松本はメリットを強調。「限られたクルマだけで評価していると、色々なコンディションでの結果を判断しにくいことがあります。あの時のテストは良かったのに、なぜ今回は? といったケースがどうしても出てくる。でも、どの車種でも良い結果が得られたら、それはタイヤが良いからだと判断できますし自信を持ってレースに投入できます。幅広くタイヤ供給していることが、確実に優れたタイヤ開発に繋がっていると思います」

 では、ブリヂストンが追求する理想のレーシングタイヤとはどんなタイヤなのか。この問いに松本は「漠然とした言葉になりますが、速いタイヤ、壊れないタイヤです」と答えています。「レースに勝つことが目的であり、そういう意味ではスイートスポットが狭かったりするとなかなか勝てません。レースウイークの間、走行時間帯や天候など、様々にコンディションが変化する中でコンスタントに速いタイヤ。難しいことですが、ある程度の外乱の変化にも対応しつつ、きっちりと速いタイヤを供給することを心がけています。モータースポーツは勝つか負けるか。負けていたらどんなに良いタイヤでも認めてもらえません。タイヤだけで勝つわけではありませんが、マシンとのパッケージで勝てるようなタイヤを作っていきたいですね」

 この理想とするレーシングタイヤ開発の姿勢は、POTENZAなど市販用タイヤにも生かされています。「(レースと公道では状況が異なるので)直接的にレース用の技術そのものが使われることはなくても、いかにグリップさせるかという命題は共通です。開発の手法、考え方、あるいはコンパウンドの一つの要素、といった部分でレースで培った技術が生きているのです」と松本は力説。特にブリヂストンがF1時代から築いてきた評価技術ULTIMAT EYEは、タイヤが転がっているときの接地面挙動を計測・予測・可視化することで精度の高い解析や性能確認を行うことが可能であり、タイヤ開発の大きな支えとなっています。

最終戦はいきなり“冬”。気温が鍵となる

 今、最終戦に向け準備に余念がないのはレーシングチームだけではありません。ブリヂストンも同じように今、最終戦に持ち込むタイヤの準備を進めているのです。ここで気になるのはレースウイークの天候です。7月のSUGOから10月のタイまで「夏場のレース」が続いてきたところに、いきなり晩秋のツインリンクもてぎが舞台となるため、気候に合わせた事前テストなしに現場に向かうことになるからです。

 松本は「例年、ツインリンクもてぎは気温が低く、シーズンの中でもダントツに寒いレースになります。夏場に良かった我々のタイヤが同じようにグリップするのか、より低い温度に合わせてどう調整するのか。レースウイークの天候や気温、路面温度を想定しながら準備を進めています」と、気温の変化への対応の重要性を強調します。

「優れたタイヤを用意するのは最低条件ですが、揃えたスペックの中から週末の天気、そしてレース展開まで考えて、最終的に持ち込むタイヤを決定します。現在ブリヂストンのユーザーチームがラインキング1、2位とシリーズチャンピオンに最も近いところにいます。去年も最終戦で逆転チャンピオンを決めていますし、今年もこれまで良いタイヤを作ってきたという自負もあります。GT300は首位のチームとのポイント差が少し開いていますが、こちらもまだ可能性は残っています。しっかりいいレースを戦ってもらい、あとはライバルの結果次第。レース前にこうしておけばよかったとか、あれを準備しておけばよかったということがないように、やれることは全部やります。その結果、タイヤがうまく機能して、結果的にタイトル獲得に貢献したいですね。抜かりなく、慢心することなく、最大限の準備を整えていきます」




03.JPG 第7戦タイで優勝を飾りランキング首位を奪い返した#37 KeePer TOM'S LC500。ウェットコンディションからドライへと変化する難しいレースで、幅広いコンディションに対応するBSタイヤの性能を証明するかのように上位7台をBSユーザーチームが独占しました。




04.JPG 今シーズン、優勝こそないものの着実にポイントを重ねシリーズランキング2位につける#6 WAKO'S 4CR LC500。最終戦で優勝に期待が寄せられます。




05.JPG 第7戦タイで優勝し、GT300クラスでシリーズランキング2位につける#51 JMS P.MU LMcorsa RC F GT3。9点差で#4 GOODSMILE RACING & TeamUKYOを追う。




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