Vol.30 2024年シーズン NEWブリヂストンドライバー紹介 PART3 佐藤蓮選手

2021年にGT300を戦った古巣ARTAに復帰し、大津弘樹選手とのコンビでGT500デビューを果たす佐藤蓮選手。新車CIVIC TYPE R-GTを得た今、シーズンオフのテストからここまでの流れと、GT500での戦いに向けての意気込みを伺いました。


「眠れないほどの緊張感の中で、勝利の達成感を味わいたい」
佐藤 蓮選手

_E0A1141.JPG

――佐藤選手は2021年のGT300以来、3年ぶりのSUPER GT復帰です。チームはGT300の時と同じARTAですが、GT500は初参戦。ここまでの仕上がり具合を教えてください。
佐藤 蓮選手(以降、佐藤):鈴木亜久里さんのチームですし、メンテナンスの無限ともスーパーフォーミュラで一緒に仕事させていただいたことがあるので、チームにはすぐに馴染むことができています。相方の大津選手も、スクール時代から講師として色々教えていただいた関係です。GT500では自分もまだまだ教えてもらうことが多い状況ですが、たくさんのことを吸収しています。クルマは今年から新車のCIVIC TYPE R-GTになりましたが、ドライバーとしは開幕に向けて準備は進んでいると思っています。
――とはいえ、かつて走ったGT300とGT500では相当の違いも?
佐藤:それはもう、まったく別物です。GT500はフォーミュラっぽい動きを見せる一方で、反面、ハコ車的な反応を見せる部分もあります。そこが難しいところでもあり、慣れるのに少し、苦労しました。
――佐藤選手はGT300もそうですし、カート時代にも1年ブリヂストンタイヤを履いていました。
佐藤:全日本カート選手権OK部門ではダンロップ、ヨコハマ、そして最後にブリヂストンと3メーカー共履きましたが、やはり各社それぞれ特徴がありました。SUPER GTでも似たような特性があり、それに関してはやはり各メーカーの特徴が表れるので興味深いですね。ブリヂストンは一発のタイムはもちろんですが、とにかくレースで強い。これはカート時代から変わらぬ印象です。GT500で走っても、やはりコンスタントにタイムを維持できるという特徴に変わりはありませんでした。あれだけ重量のあるクルマで、これだけロングラン性能が安定しているのはすごいと思います。

_E0A0772.JPG

――GT500を戦う上で、そのロングラン性能をさらに生かすクルマの仕上げも必要ですね。
佐藤:はい。レーシングカーは基本リヤ駆動ですから、どうしてもリヤタイヤの摩耗が厳しくなる。ドライバーとしては、いかにそれをアクセルワークでケアできるかが重要だと思います。僕はカートの時からずっと、リヤタイヤを守っての走りを得意としてきたので、そこは自信を持って開幕を迎えられる部分です。気になる点としてはSUPER GTは混走なので、GT300車両との兼ね合いが課題になるかもしれません。
――その、リヤタイヤを労わるドライビングについて、もう少しお聞かせいただけますか?
佐藤:単純な話です。横に荷重がかかっている時にアクセルを踏んでいくと摩耗も進んでいく。ですからタイヤをしっかり縦に使うということです。本当にそれだけ。
――しかしレーシングドライバーは競い合いの中で、誰もが相手より少しでも早くアクセルを踏みたくなってしまいますよね?
佐藤:ホイールスピンがいちばん良くないですね。ですからドライバーの右足、つまりトラクションコントロールがどれだけ優れているか、です。僕は元々あまりタイヤを横には使わないドライビングで、逆に4輪に上がってしばらくは横を使い切れていない面があって悩んだりもしました。今はそこも改善して、ちゃんと使い分けています。これはどのタイヤメーカーでも同じですが、ホイールスピンさせるとタイヤの表面温度が上がってしまい、一度表面温度が上がってしまうとなかなか戻らないので、摩耗もそうですが、とにかく表面温度を上げないことが重要です。

_76A2765.JPG

――タイヤに優しいということは、新たに導入された予選フォーマットや決勝にもプラスになりそうですね。
佐藤:予選はQ1とQ2で同じタイヤを履きますから、まずQ1でのアタックはQ2にどれだけタイヤを残せるか、という部分を考えなければいけません。またユーズドタイヤで走るQ2ですが、自分としてはユーズドのアタックも結構得意な部分です。Q1でもQ2でも、どちらでも行けるので予選フォーマットの変更は少なくとも自分にとっては向かい風ではないですね。決勝は、いちばん懸念しているのはGT300との混走の中でいかにして順位を上げていくかです。これは慎重に、慣れながら学んでいきたいと思います。
――興味深いお話をありがとうございます。得意とする武器を生かして、佐藤選手が16号車でどんな活躍を見せてくれるのか、今からとても楽しみです。
佐藤:タイヤに優しいということは、それだけ戦略の幅を広げることに繋がると思います。チームとしては今年CIVIC TYPE R-GTが初年度ですから、まだまだ開発を進めていかなければならない部分も多いと思いますが、そのためのフィードバックなど、できる限り早くチームに貢献できればと思います。できるだけ早く、まずは1勝を挙げたい。そして、取りこぼしなくシーズンを戦うこと。毎戦、1ポイントでも取れるように堅実な走りをしていきたいと思います。ブリヂストンも新しいパターンのウェットタイヤをテストするなど、開発の手を緩めずにチームを支えてくれていますから、これからも様々なテストを通じて共にチャレンジしていきたいですね。
僕はレースウイークに入ると眠れなくなるほど緊張しますし、それだけレースに没入しています。自分からレースがなくなったら、それこそ魂が抜けたようになってしまうのではと怖いぐらい。でも、眠れなくなるほどの緊張感の中での勝利には、とてつもない充実感と達成感があります。その高揚感を味わうためにレースをしていると言っても過言ではありません。