2022年、2023年と最終戦までチャンピオン争いを演じ、2年連続でシリーズランキング2位を獲得してきた#3 Niterra MOTUL Zが、今年からブリヂストンタイヤを履いて新たなシーズンに挑むことに。エースドライバーとしてチームを牽引する髙星選手、そして新規加入でGT500デビューを飾る三宅選手のお二人に、目前に迫ったシーズン開幕への意気込みを伺いました。
「とことん一発の速さにこだわっていく」
高星明誠選手
「学べるものはすべて学んで速さに繋げる」
三宅淳詞選手
――お忙しい中、ありがとうございます。まずは新シーズンに向けて、現状と今のお気持ちをお聞かせください。
髙星明誠(以下、高星):去年までライバルとして戦っていた時には、まさか自分がブリヂストンタイヤを履くことになるとは思っても見ませんでした。ブリヂストンからしたらもう完全なライバルで、お互いバチバチにやりあっていたじゃないですか。もちろん観ているファンはそれを楽しみにしてくれていたと思いますし、そういう意味では、レースの魅力を見せることができたのはすごく嬉しいことですが。
三宅:3号車は2年連続でタイトル争いを演じた、それだけの実力があるクルマです。自分が速く走ることは重要ですが、僕がこれまで経験してこなかったこと、クルマやタイヤの開発という、ドライバーが速く走る以外の知識を深めていくシーズンにしたいと思っています。
――髙星選手は全日本カート選手権以来のブリヂストンですね。
髙星:僕がカートを走っていた頃はブリヂストンが最も強かった時期なので、結果を残すならブリヂストン一択という世代です。そういう意味ではブリヂストンが強いという思いはカートの時から植え付けられていましたが、4輪に上がってからは一度も履く機会がないままで、正直不利だなと感じることもありました。でも逆にブリヂストンタイヤを履けなかったことで得られたことも多く、そういう意味ではいい経験になったと思います。
三宅:カートでは自分もブリヂストンでレースしましたが、4輪の他のカテゴリーでタイヤ開発競争をする中で、一発の速さとロングランの速さを両立しているブリヂストンに苦しめられ、なかなか届かなかったという思いがあります。タイヤとして最強というか、強いイメージをずっと持っていました。
――ライバル勢の筆頭として戦ってきた髙星選手ですが、ここまでブリヂストンタイヤでテストしてきて、マシン開発やドライビングなど、どんな影響がありましたか?
髙星:少なからず影響はあります。それぞれ、タイヤメーカーが持っている強みの部分が異なります。タイヤのキャラクターと言った方が伝わりやすいかもしれませんが、その強みの部分について、去年のクルマからアジャストする部分は少なからずあって、そこはまだ十分には対応しきれていない。ドライビングでも、もっとタイヤのピークを引き出す走らせ方を学んでいかなければいけないと思っています。また、去年までは僕とパートナーの千代さんの走り方にちょっと違う部分もあって、じゃあクルマはどう仕上げるの? という時に二人の中間を取ることもあった。お互いちょっと乗りづらいかもしれないけれど、大きくかけ離れてはいないセッティングを見つけて、それをエンジニアと話し合って、間の「いい部分」を見つけていました。
――今年はその千代選手が23号車に乗り、ある意味ではライバルです。髙星選手が目指すマシン作りの方向性は?
髙星:僕は一発の速さをすごく大事にしています。SUPER GTを戦う上でロングランが大切だというのは分かっていますが、やはり前のグリッドからスタートすれば自分たちの望む形でレースを組み立てることができるので、予選で前に行くことを常に意識していますし、そこには強いこだわりがある。これは僕がNDDPの育成ドライバーだった時から、当時の監督であった長谷見昌弘さんに教えられたことです。「速さにこだわれ。人は速さについてくる」と。ただ、その自分のこだわりを強く表に出してアピールすることはしませんし、そういう情熱を表に出さないこと、これも自分のこだわりです。
――三宅選手はスーパーフォーミュラでの活躍はもちろんですが、GT300で走り、これまでGT500の戦いを外から間近に見てきました。今シーズンGT500という舞台で、ご自身の速さをどう発揮するのか、あるいはチームの中でどういった役割を果たしていこうと思われているのかお聞かせください。
三宅:ブリヂストンはGT300でも去年タイトルを取っていますし、ライバルとして見てもロングランが速く強敵でした。そう言った自分が見て得た情報も、人から聞く情報もたくさんありますが、自分が意識しているのは「変な先入観を持たない」ということです。学ぶべきことがたくさんあるので、フレッシュな気持ちで臨んで、チームに有益なフィードバックをできるようになりたいですね。
――毎年、新たにブリヂストンタイヤを履くことになったドライバーの方々にお伺いしているのですが、タイヤが変わって走りも変わりましたか?
髙星:確実に変わります。正直、まだすべてを掴みきれたというところには至っていませんが、最後のコンマ1秒という領域に入ったら明確に違いが感じられると思います。僕たちはまだそのレベルに達していないので、早くその領域に行きたいというのが率直な気持ちです。
三宅:まったく同じです。それに、髙星選手には「去年はこうだった」という経験がありますが、僕にはそれがない。だからこそ先入観を持たずにすべて勉強だと思っています。
――ありがとうございます。そう言った状況の中で、現時点で特に意識している、開幕までに優先順位の高い課題は何でしょうか?
髙星:タイヤを知る、知っていくという部分がまだまだ全然足りていません。一発のタイムの出し方もそうですし、ロングランでの走らせ方もそう。そういう経験が足りない部分を、レースを戦いながら早い段階で身に着けることでしょうか。その上で、じゃあ自分たちがどうクルマを走らせるのか、どうセッティングするのか、と課題を振り分けていかなければなりません。どれだけ早くその領域に到達できるか。それがタイトル争いに大きく関わってくるポイントだと思います。三宅:もう開幕戦まであまり時間はありませんが、一発のピークであれロングランであれ、タイヤの性能を引き出すためのドライビングをより早く習得するほどチャンスは広がります。序盤から、あるいは開幕戦からスタートダッシュできるようにしたいですね。速く走るためにはドライビングテクニックはもちろんですが、やはり物理ですから、同じ技量のドライバー同士であっても、クルマの知識を把握している方が強い。そう言った知識を身につけ、引き出しを増やして行かなければと思います。
――ありがとうございます。最後にシーズンへの意気込み、私たちブリヂストンへの期待など、お聞かせください。
髙星:タイヤメーカーが変わりましたから、喫緊の課題は早くそれに慣れることです。ドライビングもクルマのセットアップも。そうすることで早く結果を出し、タイトル争いに絡むことが第一の目標です。もちろん、優勝もできないでタイトルが取れるわけないと思っているので、まずは勝てるパフォーマンスを手に入れ1勝を掴む。それがいちばんに考えていることです。タイヤメーカーは変わりましたが、ブリヂストンの方々とのコミュニケーションは当然重要ですし、そのコミュニケーションから得られるものすべてをひっくるめて、タイヤの知識を増やしていきたい。そして、僕たちだけにブリヂストンタイヤの秘密をこそっと教えてほしい!ここは強く、太字で書いてください!
――熱いメッセージ、しかと受け止めました。でも、とても難しいリクエストです。
高星:そうですよね。でも真面目な話、今年は12台ものクルマがブリヂストンタイヤを履きます。どこがライバルだとか、どこを意識するとかではなく、全車イコールで同じスタートラインに立つライバルです。そこからポイントを取ったクルマ、取れなかったクルマでどんどん淘汰されていくので、現段階では自分たち以外の14台すべてがライバルで、そこから抜け出すのは容易ではありません。
三宅:自分は1年目ですから、知識量を増やし、ドライビングにしてもクルマの扱い方や開発にしても短期間で身に着けて、開幕戦からしっかり戦いたいですね。GT300の攻略にしてもロスなく、接触なく。そういう部分もしっかり勉強していきたいと思います。