Vol.31 2024年シーズン NEWブリヂストンドライバー紹介 PART4 太田格之進選手

今シーズン、チームを移籍し#17 Astemo CIVIC TYPE R-GTを走らせる太田格之進選手。チームが変わり、パートナーが変わり、そして車両もNSX-GTからCIVIC TYPE R-GTへと変わって、今シーズン、どのような活躍でファンを魅了してくれるでしょうか。


「自信と冷静さを併せ持ってタイトルを取る」
太田格之進選手

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――心機一転で迎える今シーズン、まずは新しいチームの印象とここまでの仕上がり具合をお聞かせください。
太田格之進選手(以降、太田):金石勝智監督と塚越広大選手、二人共とても良くケアしてくれています。特に勝智監督は元ドライバーという立場で走る者の気持ちを分かってくれ、僕のリクエストについてエンジニアさんと共に話を聞いてくれる、そういった温かさがあります。来る前は名門だし、「リアルは厳しいチーム」だという評判も聞いていましたが、入ってみたら全然違う。ひたすらレースに対して真剣で、それでいて優しいチームです。CIVIC TYPE R-GTに関しては、まだ開幕してみないと判断できません。NSX-GTもいいクルマだったので少し残念な気持ちがある一方で、CIVIC TYPE Rは自分でも街乗りしているクルマなので愛着もあるという、複雑な両面ですね。
――ブリヂストンタイヤを履くのはカート以来ですね?
太田:はい。カートと4輪はまったく別物ですが、共通して言えるのはレースに強い、ということです。グリップの持続性、耐久性が高く、そこはライバルメーカーをリードしていると感じます。速いペースを維持して走ることができるので、例えレースのある局面でポジションが後ろだったとしても、終わってみたら前にいる、そんなタイヤです。自分のレースキャリアを振り返ってもそういうレースが多かったと思います。
――既にテストでかなり走り込んでいますが、実際にGT500で走らせての印象はいかがですか?
太田:色々と驚かされたことはありますが、いちばんは温度に対する許容度というか、温度依存の低さです。例えば路面温度が5℃変わった、10℃変わったという時にも極端にウォームアップが悪くなったりしません。タイヤの温度レンジは細かく分けられていますが、想定を少々外れても狙いどおりの温度でタイヤが作動するよう、しっかり管理されていることに感心させられました。勝つためには尖った性能のタイヤが必要だとも思いますが、逆に言うとそれって、温度などで性能を発揮できない可能性も高い。ブリヂストンのタイヤは一発のタイムも出せるし、温度に対しても許容度が高いということにいちばん驚きました。第一、ウォームアップがこんなにいいのに、2周続けてタイムアタックできてタイム落ちも少ない。そういうところがすごい。
――ありがとうございます。タイヤの特性に合わせてドライビングも多少は変わりますか?
太田:今までと比べるとベストなドライビングは違うと思います。もちろんアジャストしていますが、結構違いますね。ブリヂストンタイヤの方が、例えばステアリングの切り方にしてもアクセルやブレーキのペダル操作にしても丁寧な操作が必要です。それもブリヂストンタイヤならではの丁寧な走らせ方が必要で、それをドライバーがきちんと繊細にコントロールできるかできないかで、意外とドライバーによって差が出る可能性は高そうです。最適な操作をすることでタイヤの性能を生かし、長く維持することができると思います。

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――そういうドライビングが太田選手のスタイルに合いそうですか?
太田:合うと思います。塚越さんもそうですけれど、タイヤを縦に潰さないというか、コーナーのボトムスピードを高く保つドライビングに合っていると思います。タイヤに対して極端に負荷をかけるような、例えばコーナーの中のどこかで極端にタイヤに負荷をかけすぎない、そういう運転ですね。
――なるほど。そういったタイヤの違い、言ってみればタイヤでのコンペティションはSUPER GTの大きな魅力のひとつだと思いますが、ドライバーから見ていかがでしょう?
太田:魅力というか、タイヤコンペティションがあることでドライバーはより成長できると思います。ドライバーだけでなくタイヤメーカーもそう。コンペティションを通じて一般の方が履く市販タイヤも進化しているのは、絶対に負けたくないというメーカーの気持ちが反映されているからじゃないでしょうか。まあ、そもそもレースですから、そういう気持ちがなかったらダメだと僕は思います。他のスポーツでも同じだと思います。例えばゴルフだったら、強い選手がどこのクラブを使っているのか、気になるじゃないですか。自分も気にして見ていますよ。レースを観に来た人が、いつもGT500で勝っているタイヤってブリヂストンだよねってなったら、絶対ブリヂストンを履きたくなると思うんですよ。タイヤって、クルマの中でも最もと言っていいぐらい重要なパーツじゃないですか。命を守っているものでもあるし、レースで信頼性とパフォーマンスを両立することは確実にブランドイメージに繋がりますから。確かにブリヂストンからすれば、勝ち続けるって相当大変なことでしょうが、そうすることで高い技術と信頼を維持し続けているのはやはりすごいと思います。
――ありがとうございます!
太田:例えばゴルフボールにもそれぞれメーカーの個性が現れると思います。僕、ブリヂストンのボール好きなんですよ。他メーカーさんのボールは硬いと感じます。確かに硬いとよく飛ぶんです。ただ、飛ぶ=一発が速い、みたいなイメージ。だから1ホールだけだったらその方が良かったりもしますが、18ホールを戦う時にどうなるか。スピンのかかり方はどうだ、パターのタッチはどうだと総合的に見ると、レースと基本的には一緒で、トータルで見ないといけない。

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――とても興味深いですね! レースに話を戻しますが、リアル・レーシングで迎える開幕戦、いかがでしょう?
太田:リアル・レーシングは去年もその前の年もタイトル争いをしている素晴らしいチームですし、とても期待しています。それに自分自身も、今、すごく乗れていると実感していますから、正直、誰が来ても負ける気持ちはありません。塚越選手も速いですし、チームがちゃんと仕事をこなして、僕もちゃんと役割を果たせば必然的に前に行ける。そう思っています。シンプルに、開幕が楽しみです。
――もちろん、ブリヂストンもその一員として全力で戦います。
太田:お願いします。大きいことを言っていますが、他のチームもドライバーも皆、プロフェッショナルですから差は本当に小さい。その中でドライバーが1000分の何秒を削って、クルマでも削って、と取り組むだけです。まあこれは冗談ですが、ブリヂストンタイヤは既に十分以上の結果を残していますが、手を抜かないでね、という気持ちはあります。それに供給台数が12台と一気に増えていますが、その中でも17号車がいちばんとなるように活躍していきたいと思います。
――とても落ち着いた雰囲気の中に、しっかりとした自信を感じます。
太田:今年の目標はGT500でもスーパーフォーミュラでもチャンピオンになることです。これはやらなければいけないことだ、と自分で思っています。ただ何だろう? 気持ちばかりが高まっている感じではない。勝ちたいという自分の欲求と、仕事としてきっちり結果を残さなければという気持ち、どちらかが強すぎてもダメだと思います。抑えるところは抑えて、行くべきところは行く。自信もあるけど冷静に。決して「オラァ!」って勢いで突っ走るのではなく、普通に。そうすればきっと勝てると確信しています。