今年からPOTENZA を履くSUPER GTドライバーにブリヂストンタイヤの印象をお伺いするPOTENZA RACING TIRE インプレッション、今回は開幕戦岡山で3位表彰台獲得となった#65 LEON PYRAMID AMGを走らせる篠原拓朗選手の登場です。今回は相方の蒲生尚弥選手にも一緒にお話を伺いました。2014年からLEON RACINGで走り、2018年にはGT300クラスチャンピオンを獲得している蒲生選手は、時にタイヤ無交換作戦でレースを制すなど、ブリヂストンタイヤを知り尽くした安定した速さが持ち味。一方の篠原選手は、マシンをAUDIからAMGにスイッチし活躍が注目されるドライバーです。
#65 LEON PYRAMID AMG
「走り出しからの速さが表彰台に繋がりました」 蒲生 尚弥選手
「タイヤの”芯”を生かして走るとものすごく速い」 篠原 拓朗選手
ーーお忙しいところありがとうございます。まず、3位に入った開幕戦岡山について。早々にピットインして残りのほぼ3分の2を蒲生選手が走り切りましたね?
蒲生:岡山は比較的得意というか、予選から上位につけて決勝でもいい順位でフィニッシュできることが多いですね。今年もそういう展開を望んでいたのですが、いざ本番が始まると結構予選で苦戦をしたというか、ライバルが想定外に速くて予選で中段に沈んでしまった。そこから自分達にできることを精一杯やった結果、あのピットインタイミングになり、そこからクリアな位置でハイペースを維持でき、ラッキーな面もあって3位になれたと思います。
ーータイヤはQ1、Q2、決勝とどんなスペックだったんでしょう?
蒲生:全部一緒です。戦略としてピットインを利用して順位を上げるにはあの作戦しかないというか、セーフティーカーが入った時のリスクとかも考えると、ミニマムでピットに入ってセカンドスティントを長くするのが基本戦略なので、岡山でもその作戦を取りました。
ーー第2スティントでレース距離の3分の2を走ったわけですが、タイヤはどうでしたか?
蒲生:他のクルマと比べてもウォームアップがとても良くてアウトラップのタイムを稼ぐことができたことが結果的に3位入賞に繋がりました。ウォームアップだけでなく、スティントを通じてラップタイムが全く落ちずに最後まで同じペースで走ることができたので、安定性という意味ではものすごく優れていると思います。
ーー篠原選手はファーストスティントの担当でしたが、クルマもタイヤも変わっての初戦はいかがでしたか?
篠原:昨年までと比べてエンジンの搭載位置も含めクルマが違うものになり、タイヤも今年からブリヂストンさんになりました。実はQ1を走るのは人生で初めてのことだったんですが、かなり緊張はしましたがぎりぎりでなんとか突破できホットしました。またロングランもテストで経験していましたが、実際に決勝を走るのは初めてで、GT500にラインを譲ったときに少しピックアップを拾ってしまうこともありました。走らせ方を変えるなど工夫して対応は出来ましたが順位を上げて帰ってくることができなかったのは反省点。ちょっと悔しい気持ちです。
ーー昨年も第7戦のツインリンクもてぎで優勝していますし、ドライバーとしての実績は十分だと思います。それでもがクルマとタイヤが変わると、合わせ込みに多少は時間が掛かるのでしょうか?
篠原:いや。そういうことはないと思います。每戦勉強だとは思っていますが、乗ってすぐにちゃんと使いこなすのがプロドライバーならば、そうしなければいけません。ただ、接戦になった時にクルマとタイヤの強みをもう少し生かせるようになればレースの走りも少し違うのかな、と思いますね。
ーー去年までライバルとして見ていたブリヂストンタイヤの印象と、今年実際に履いてみての印象をお聞かせください。
篠原:去年まではなんというか憧れのタイヤというか、予選も決勝も速いですし、そういった意味では本当に今年履かせていただくのが楽しみでした。詳しく説明するのは難しいですが、初めてブリヂストンを履いた時のフィーリングはやはり他のメーカーとは違う部分があるのにとても走りやすい。自分がGT500に抜かれる時にミスしなければ、おそらく決勝ペースもずっと問題なかったと思います。ロングは本当に扱いやすかったです。
ーーこれまでのレースでブリヂストンを履いたことは?
篠原:多分初めてです。もしかしたら何かイベントとかで履いたことはあったかもしれませんが。
蒲生:赤い帽子を被ったの、初めてらしいですよ。
篠原:はい(笑)。 人生で初めてです。
ーーそのタイヤの使い方ですが、やはり性能を生かす走り方やタイヤを生かすクルマの作り方は異なるのでしょうか? もちろん蒲生選手がこれまでチームと共に築き上げてきたクルマでもありますが。
蒲生:それは難しい質問ですね。
篠原:去年までのことは分かりませんが、今年このチームに加入させていただいて、黒澤治樹監督と蒲生選手が築き上げてきたもの、歴史と言う言葉が適切かどうか分かりませんが、そう言ったことの重要性を強く感じています。
蒲生:歴史とは大袈裟な(笑)
ーー蒲生さんはパートナーに何を求めていますか?
蒲生:速いのは当たり前だし、もちろんそれは大事だと思いますが僕はレースは絶対にチェッカーを受けなければ意味がないと思っているので、どんな状況であれ絶対に帰ってくること。僕自身、それを一番に心がけているのでその考えを共有でき、理解してくれる人がいいと思います。
ーーここまでの篠原選手を見て、いかがですか?
蒲生:今は謙遜してコメントしていますが、最初からめちゃくちゃ速かったですし何も問題ないですよ。なんなら僕も篠原選手の速いところを勉強して、お互いに切磋琢磨していこうという状況ですし、とてもいい雰囲気だと思います。
ーーちなみにQ1とQ2はどういう割り振りなんでしょう?
蒲生:ジャンケンです(笑)
篠原:いやいや、それは(笑)
蒲生:朝のフリー走行を走って、自分達のポジションと他の順位をみて、エンジニアと監督が決めるので。指名されたらいくだけです。
篠原:そうですね。
蒲生:ドライバーに選択権はありません(笑)
ーー先ほどのタイヤメーカーが変わってドライビングで変わったことや、ブリヂストンタイヤを使いこなすために感じたことをもう少しお伺いしたのですが?
篠原:リア駆動であることは一緒ですけれどエンジンの搭載位置が違うので、そもそもの走らせ方が違います。僕がここ最近感じているのは、特に決勝でロングを走っている時に、もちろん抜くことも心がけますが、抜かれないこともレースでは大事だと思うんです。特に集団になっている時に。その時の自由度というか、走らせ方の幅が広いのを強く感じます。キャパシティが広いので余計な負荷をかけずに無理をしなくて済む。タイヤマネジメントしながらきちんと考えて走ることができます。
蒲生:ピーキーじゃない、ということですかね。クルマとタイヤの特性がマイルドというか。
篠原:やはりミドシップだと一度リアが動き始めるとずっとそのまま動いてしまう時間が長くなるんですけれど、そういうのがあまりなくてしっかり止まってくれる。多少リアが出ても無理せずに走らせられる幅が広いと思います。
ーー元々の車体の特性もあるでしょうが、蒲生選手は決勝で一つでも上のポジションでフィニッシュするためにどういうクルマ作りを目指していますか? タイヤ無交換作戦を視野に入れてクルマを仕上げているイメージがあります。
蒲生:どのチームも変わらないと思いますが、決勝でリアがルーズになってくると安定して走るのが難しくなるのでなるべく弱アンダーに。絶対にリアが流れない程度に仕上げることを意識しています。
ーーこれまでのコンビでもずっとそう?
蒲生:ドライバーの好みももちろんありますが、大事なのは二人で走るレースなので、その二人が納得して、二人が平均して速く走ることができることを意識しますね。
ーー先ほど蒲生選手が篠原選手について「いきなり速かったし、自分も学ぶ部分がある」と言っていましたが、逆にチームに入って一緒に走って、蒲生選手の印象は?
篠原:どういったコンディションでも引き出しが多いというのと、「その速さはどこから出てくるんですか?」と聞きたくなるほど速い。岡山の予選でもそう思いましたが、本当にすごい。
ーーそういう場合、蒲生選手のロガーを見たりして、直接話しも聞いて吸収しようと?
篠原:はい。そうです。
ーードライビング等で特徴的な違いはありますか?
篠原:ブレーキの残し方ですね。去年1年間の経験で残ってしまった癖というか、元々TCRの時からの癖でもあるんですけれど、その癖が残った状態だったので岡山のテストでは苦労しました。他の選手とデータを比較させてもらって学んでから開幕戦に向かいました。
ーーブレーキの残し方、どう違ったのですか?
蒲生:僕は見てないので、拓朗くんに訊いてください(笑)
篠原:僕の方が結構ブレーキを勢いよくポンと抜く。TCRの時は特に意図的にマシンを強く放り込む走り方をしていたので、それで2年間走っていたからかどうしても最初の踏力は僕の方が強いのに途中で脱いちゃうというのが多くて。蒲生選手は最初はあまり踏力は掛かっていなくてもしっかりずっと残しているので余計なピッチングがないと思います。フロントにしっかり荷重が掛かったまま旋回しているのでコーナーのクリップまでが速くて、さらに向きが変わっているから出口でアクセルも踏めている。最初の岡山テストではそこに気がつかなくて、僕は強く踏力を掛けるし、すぐ抜いちゃうしで、クルマの姿勢変化が大きくなり、そこでコーナリングスピードに多少違いが出ていたと思います。
ーー旋回性でボトムスピードも上がっているし、アクセルも穏やかに開けられるので決勝のような長い時にはタイヤの持ちに効いてくる?
蒲生:そうですね。なるべくタイヤの縦をうまくツブして走るようなイメージです。まあ、無意識に走っていますけれど。
ーーその違いは、やはりロガーを見て気づくのでしょうか?
篠原:はい。それにオンボード映像を見ていても、ステアリングの最大舵角の位置がずれていたり、あるいは最大舵角が僕の方が大きくなっていたり。それって結局、早くブレーキを抜いちゃってるから荷重が残っていなくて、タイヤの・・・ええと、詳しく話してもいいんですかね?
ーーどうぞどうぞ!企業秘密に触れなければ問題ありません。
篠原:ブリヂストンのタイヤで走った感触としてはブレーキを踏んで旋回するときにタイヤが捻れたところの真ん中に芯を感じるんです。その芯が反発したところで立ち上がりのトラクションも生まれているのかなと感じます。多分、最初はタイヤの捻れるところを使う前にハンドルで曲がろうとしていたので、そこを生かせなかったんだと思います。ブレーキを残してしっかり芯を使うことができると、自分が思っているよりも全然曲がるし、立ち上がりのトラクションも生かせる。先ほど決勝の走りの幅と言ったのも、そこをしっかりと生かして走ると立ち上がりで後続を引き離せるので抜かれにくくなる、というイメージです。
ーーなるほど。お話がクリアに見えてきました。
蒲生:早く言えってことですね(笑)
篠原:すみません。どこまでお話しすればいいか迷ってしまって。これからはもっとストレートに話します(笑)
ーーありがとうございます。最後に今後のレース、今シーズンに向けての意気込みをお聞かせください。
蒲生:このクルマとはとても長いですし、その間、アップデートされている訳ではないので正直、他と比べて頭打ち感みたいなものもありますが、その中でも諦めずにコツコツと積み上げていくことが大切だと考えています。岡山でも、新たに良さそうなことが少しずつ見つかってきているので、変な先入観を持たずに試していくつもりです。そういう意味では篠原選手みたいに初めて乗る人の意見も聞いて、柔軟に発想して、少しでもクルマを速くしていくことができたら、これまでとは違う、いい1年になると思っています。そういうつもりで一戦一戦頑張っていきます。
篠原:蒲生選手はじめ、チーム力をすごく感じていますし、少しでもチームの力になれるようにと意識しています。最初にも言いましたが、いち早く、クルマもタイヤもしっかり理解し、走りの幅を広げて、チームの戦力として頑張ります。
漆黒のチームカラーに相応しいイケメンコンビのLEON PYRAMID AMG。シリーズを盛り上げる存在として、ますますの活躍が期待されるお二人でした。