みなさん、SUPER GTの開幕戦はいかがでしたか? おかげさまでGT500クラスでは当社タイヤ装着チームが1-2フィニッシュし、取材班もまずは一安心。それにしても表彰台にはトヨタ、ホンダ、ニッサンの3メーカーが勢ぞろいし、第2戦以降も接戦の気配が濃厚です。GT300クラスでも#65 LEON PYRAMID AMGが3位入賞。第2スティントを受け持った(新婚の!)蒲生尚弥選手が、最後まで安定したハイペースで見事な追い上げを披露してくれました。その開幕戦のパドックで、今年からPOTENZA RACING TIREを履く4名のドライバーに、ブリヂストンタイヤの印象をお伺いしてきました。ライバルメーカーとの比較やタイヤ性能の引き出し方など、興味あるお話が飛び出しました! ぜひご紹介させてください。
「ようやくブリヂストン! 心の底からうれしいです!」
#37 KeePer TOM'S GR Supra 宮田 莉朋選手いきなりこんな嬉しいコメントで取材班を迎えてくれたのが、今年から#37 KeePer TOM'S GR Supraに乗る宮田莉朋選手です。何しろ昨年、ライバルメーカーのタイヤでポールポジションを取ったり、決勝でも2位2回と散々我々を悩ませてくれた張本人。遡れば全日本カートの時代から86/BRZ Raceまで、再三我々の前に立ちはだかってきたドライバーの口から、こんな言葉が出るとは思いませんでした。ちなみにカートも86/BRZ Raceも担当してきた取材班のひとりは「宮田選手の名前を聞くと自然と体が身構える」とこぼしていたほどです。一転、今年からブリヂストンユーザーとなった宮田選手に、まずはタイヤの印象を伺ってみましょう。
宮田:何よりもまず、決勝のように長い周回数では本当に強いと思います。トラブルもありません。いちばん感動したのは、ドライバーがしっかりケアして走れば、そのケアしたとおりにちゃんともつしタイムも出る、ということです。僕はこれまで、とても繊細にタイヤを扱ってあげることが多かったし、そうして結果を残してきましたが、ダメなときはどう扱ってもダメというときもありました。
―なんだかいきなり深いお話しになりましたが、その「ケア」というのは?
宮田:予選とは違って決勝では、1スティントをずっとプッシュし続けるわけではありません。守るときもあればプッシュするときもあります。ブリヂストンタイヤはそこをきちんと分けて走ると、計算したとおりのタイムで応えてくれるんです。例えば前半にタイヤをセーブして走れば、後半の20周は1周につきコンマ何秒稼げる、といったイメージです。
―それほど緻密な計算の上で走っているのですね?
宮田:ええ。もちろんフルプッシュして走ってもタイヤはもちますし、それはそれで素晴らしいことですが、この「ドライバーがケアしたとおりに性能を発揮してくれる」というのは新鮮な驚きでした。
―ありがとうございます。とはいえ、これまでの経験があってこその今の宮田選手ですよね?
宮田:もちろんです。これまで僕が培ってきた、タイヤを繊細に扱うという技術をブリヂストンでも生かすことができると思います。それにSUPER GTでは成績によってタイヤメーカーのテスト時間が制限されますが、そういう意味では昨年まで、新しいタイヤをテストしたりクルマについて学ぶ時間がたっぷりありました。そういった経験を生かして、さらに強いタイヤを作っていきたいですね。
―その、去年まで乗っていた19号車、やっぱり気になる存在ですね?
宮田:正直、真面目に取り組みすぎて速くしちゃったかなあ、というのはあります(笑)。というのは冗談ですが、結局は人が開発するものなので、彼らが今年どこまで速いかはまったく分かりません。それよりも難しいのは、同じブリヂストンタイヤを履いているクルマが9台もいることです。共有される情報も多いので、どこか速いチームがあっても、ある程度はそこに近づくことができてしまう。真似されても、さらに一歩先を走らなければいけませんし、その部分はまだ自分でも未知数です。ただトムスは2台体制のチームなので、きっとそのメリットを生かせると思います。もちろん走らせるドライバーは人間なので好みもありますし、同じクルマと言ってもキャラクターは違う。そういう悩みが、いい意味で増えたと思います。
―今さらですがタイヤが変わるとドライビングも変わるのでしょうか?
宮田:特にはないです。強いて言えば、タイヤの温め方とか、予選で最大グリップを引き出すのは、今までより少し難しいと思います。ただ、そのための手順を踏めばいいことなのでコツを掴んでしまえば問題ありません。ブリヂストンはこれまでも素晴らしい結果を残していますし、何よりも常に安心してプッシュできるタイヤです。不安は一切ありません。逆に自分がしっかりとタイヤを生かせるのか、パフォーマンスを引き出しきれるのか、という思いが頭の中にあります。
―チームメイトのサッシャ・フェネストラズ選手とはいいライバル関係でしたし、若いフレッシュな組み合わせですね?
宮田:彼とはライバルでしたが今年チームメイトとなり、すばらしい機会をいただいていると思います。しかもトムスからの参戦ですから、しっかりと期待に応えるレースをしたいと思います。ようやくブリヂストンタイヤを履くことになり、心の底から嬉しいですし、SUPER GTを含め去年までの成績を見て期待していただいていると思いますから、その期待に応えられるようにがんばります。
宮田選手、ありがとうございました!
さて次は、GT300クラスで#2 muta Racing GR86 GTに乗る堤優威選手の登場です。2018年の86/BRZ Raceでは強豪プロドライバーが名を連ねるプロフェッショナルシリーズで参戦2戦目にしていきなりの優勝! 「あいつ何者だ?」と一躍注目を集めました。2019年にはシリーズ3位に入る活躍を見せ、2020年の第7戦ツインリンクもてぎでブリヂストンタイヤを使ってSUPER GTデビュー。昨年は他メーカータイヤ装着チームでGT300に出場し、1勝を挙げました。
「86/BRZ raceとGT300。レベルは違ってもタイヤの使い方は同じでした」
#2 muta Racing GR86 GT 堤 優威選手
「86/BRZ Raceでプロフェッショナルシリーズに出るときにブリヂストンタイヤを履かせてもらい、デビューイヤーに優勝することもできました。以来、ブリヂストンさんにはお世話になっています」と丁寧な口調と爽やかな笑顔で取材班を迎えてくれた堤選手。話は86/BRZ Raceから始まりました。
堤:86/BRZ Race プロフェッショナルシリーズで使われているPOTENZA RE-07Dは、ドライでもウェットでも走れるタイヤです。SUPER GTはドライ・ウェットでタイヤが分かれますが、86/BRZ Raceはそのような区別はなく市販タイヤでレースが行われていますので、ドライ・ウェットのどちらかに特化することなく、どのようなコンディションでも戦闘力の高いタイヤが求められます。
―ワンメイクレースながら、実はタイヤ開発競争が厳しい86/BRZ Race。毎年のように新しいタイヤが投入され、コースレコードも更新されますね。
堤:開発する側は大変だとは思いますが、メーカー同士で高め合うのはいいことだと思います。開発競争はドライバーとしても成長に繋がりますし、開発したデータを一般ユーザーにも反映することができますから。
―86/BRZ Raceへの強い思いを語ってくれましたね。では、そろそろ話題をSUPER GTに移していきましょう。
堤:マシンが出来上がったのが富士スピードウェイの公式テストなので開幕戦岡山は実質2回目の走行でしたが、ラップタイムの落ちがないのは2020年に走ったときの印象と変わりませんでした。一方で予選などの一発タイムを出すには、どのタイミングでグリップのピークが来るのかちょっと分かりにくい。去年履いていたタイヤは、そこをドライバーが感じやすく、一発のタイムを出しやすかった。例えばジェントルマンドライバーにとっても、アタックのタイミングを掴みやすいタイヤでした。ただその分グリップが落ちるのも早いので、そこをどう使うかがポイントになります。僕は去年、それをコントロールして走る術を身につけましたが、ブリヂストンのタイヤでは無用のテクニックかもしれません(笑)。
―他メーカーで1年を過ごし戻ってきても、ブリヂストンらしさは変わらなかった?
堤:はい。ブリヂストンのタイヤの作り方って、どのカテゴリーでも基本的な考え方は一緒だと感じます。走らせ方も僕がずっと86/BRZ Raceでやってきたものと似ている。そこは良かったと思います。
―86/BRZ Race用のPOTENZA RE-07DとGT300のタイヤ、共通しているところはありますか?
堤:グリップそのものは大きく違いますが、ブリヂストンのタイヤって他社と比べて基本、縦が強いので、その縦グリップを使いながら曲がるとすごく速い。逆に去年までのタイヤは横グリップの粘りが強いというか、走らせ方でどうにでもなる。ブリヂストンはグリップが来るのを待たずに走ろうとするとアンダーだと感じやすいのですが、ちょっと切って待つとタイヤがたわんだ先にグリップ感を感じることができます。構造の芯の中にグリップがあり、それを使わないとうまくいかない。86/BRZ Raceでもタイヤを路面に押し付けてツブすようなセッティングにしないとグリップしない、曲がらないってなってしまいます。これはGT300も一緒だと感じています。
―最後に今シーズンの目標をお願いします!
まだまだクルマを煮詰める部分はあるので、チームと共に開発していけばすごいクルマになると思います。今はまだデータ不足ですが、一戦一戦しっかりと完走を重ねて、どこかでまず1勝できればいいと思っています。
―あれっ?目標はチャンピオンじゃないんですか?
堤:あ、いや。もちろんタイトルは狙っています。まずは経験を積んで、さらに強くなるぞ、という意味です(笑)。
―ありがとうございます!
堤選手もありがとうございました。
少し長くなりましたが前半はここまで。後半は#55 ARTA NSX GT3に乗る武藤英紀選手と木村偉織選手。ベテランとニューカマーの組み合わせでお送りします。どうぞお楽しみに!