SUPER GTは間もなく、4月15日に岡山国際サーキットで開幕します。環境を配慮してカーボンニュートラルフューエル(CNF)を採用し、タイヤの持ち込みセット数を削減するなど話題の多いSUPER GT。今シーズン最初となるSUPER GT INSIGHTは、今年から新たにブリヂストンユーザーとなるドライバーを紹介します。第一弾はライバルメーカーでタイヤ開発を経験し、さらにホンダからトヨタへとマシンも、そしてチームも変わって心機一転、#37 Deloitte TOM'S GR Supraを今シーズンから走らせ、オフシーズンのストーブリーグの主役ともなった笹原右京選手に登場いただきました。

「まさに思い描いていたとおりのタイヤです!」
#37 Deloitte TOM'S GR Supra 笹原 右京選手
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ホンダからトヨタへとマシンを乗り換え、TGR TEAM Deloitte TOM'Sに移籍した笹原選手に岡山国際サーキットでの合同テストで取材敢行。昨シーズンまでライバルメーカーでタイヤ開発を担い、時に爆発的な速さで我々ブリヂストンを脅かしてきた張本人とのファーストコンタクトです。
――タイヤはもちろんですが、今年はチームもマシンもガラッと変わりましたね?
笹原:今までホンダ陣営で他社さんのタイヤを履いていましたが、今シーズンはトヨタ陣営でブリヂストンタイヤを履くことになりました。これまでずっと、ブリヂストンタイヤを履きたいと思ってきたので率直に言ってとても嬉しいです。まさに念願が叶ったという気持ちです。去年まで在籍していた無限もそうでしたし、今度のトムスも長い歴史のあるチームでとてもプロフェッショナルだと感じています。トップチームを渡り歩くことで学ぶことも多いですし、いい刺激を貰っています。雰囲気もいいですし、テストであらゆることをトライして、それらをしっかりとまとめて開幕戦に挑みます。
――移籍しての初テストは去年の12月、モビリティリゾートもてぎでしたね?
笹原:メーカーが変わってマシンもエンジンもタイヤも変わり、とても新鮮で率直に言ってめちゃくちゃ感動しました。今まで「なんとしてでもブリヂストンを倒さなければ」というのを目標にがんばってきましたが、いつも頭の中にタイヤの動き方とか、ゴムはこうあって欲しいとか、タイヤに対するイメージがありました。ブリヂストンのタイヤは走り出した途端に「やっぱりこうだよね」と納得できる、まさに思い描いていたとおりのタイヤでした。よく、タイヤが変わると最初は慣れが必要だという話もありますが、僕としてはタイヤの動きも、グリップの出方も、ゴムの潰れ方も、すべてがずっと求めていたものでした。ライバルとして外から見て、ブリヂストンのタイヤというのはこういう風に動いているんだろうと考えていたことが一気に噛み合った感じで、「やっとコイツを手に入れたぞ」という気持ちです。ブリヂストンのタイヤは何よりも懐が深く、その結果としてロングランでは圧倒的に強い。去年までライバルの一員として、ショートランでの一発のアタックであれば「なんとかなるかな」という部分もありましたが、ロングランではどうしても追いつくことができず、そこが最後まで切り崩すことができなかったです。



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――イメージしていたタイヤの動きとマッチしていたとのことですが、ドライビングスタイルの変化ありましたか?
笹原:もちろんドライバーですから、「もっとこうしたい、ああしたい」というのは常にありますが、自分がこうあって欲しいと思っていた特性が既にブリヂストンにあったので、自分としては最初からフィットしていると思います。あとはタイヤの温め方であるとか、決勝のロングスティントでどうタイヤをケアし、どうやってコンスタントに走るのかなど、タイヤのパフォーマンスを最大限に引き出すことが求められますが、これまで自分が積み重ねてきたドライビングにちゃんとタイヤが反応し、フィードバックに現れるので、これは強いタイヤだぞと感じています。
――ドライバーが予測しているとおりにタイヤが反応する、ということでしょうか?
笹原:走っているときのごくわずかな自分の操作が、ちゃんとタイヤに反映されます。長い距離、周回を重ねる中で、毎コーナー毎コーナー常に感じますし、ストレートでもそう。色々なフィードバックが伝わってくるのがすごいと思います。僕がいちばん思い描いていたとおりだと感じるのは、ブレーキングからコーナーミッドまでの区間です。コーナリングは、そこでどれだけタイムを削れるか、早くクルマの向きを変えられるかに集約されますが、そこを速く走れない時は何をやっても出口でクルマの姿勢を作れない。この、短時間で一気に減速しつつクルマの向きを変えようとする時にタイヤ4輪のグリップ力をリニアに感じ取れることに驚きました。イコール、ブレーキングで攻めやすい。ブレーキをリリースしていく、減速とターンインが組み合わさるところの反応がとてもニュートラルなんです。最初にタイヤが動く感触はありますが、その先でしっかりと動きを支えるということがタイヤから伝わってくるから、そこは気にならない。大事なのはリニアリティで、「ああ、今こういう風になっているんだな」というのが手に取るようにわかる。僕はこのリニアリティをクルマにもタイヤにも強く求めるタイプなので。
――それはSUPER GTのタイヤというよりも、メーカーによるタイヤのキャラクターの違いでしょうか?
笹原:ジュニアカート時代にブリヂストンタイヤを履いていた時期があリますが、他メーカーのタイヤで走った時にいつも「どうしたらブリヂストンみたいな動きが出せるんだろう?」と思っていました。実はこの感覚は市販のスタッドレスタイヤとかエコタイヤも同じです。実家の自動車整備の手伝いで数多くの車を走らせる機会がありましたが、レースタイヤにも市販タイヤにも共通してメーカーの癖というか特徴があると思います。





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――ありがとうございます。その上で、今シーズンここまでの調子はいかがでしょうか?
笹原:今のところでは、車両とタイヤの合わせこみを重点的に探っていています。関わるスタッフ全員がコミュニケーションを取って、クルマ側でできる伸び代、タイヤ側でできる伸び代を合わせてトータルで底上げを図り、最終的にどのラウンドでも強かったよねと言われるような形を残したいですね。タイヤについては、突き詰めて言えば一発のタイムもとんでもなく速く、レースでもその性能を維持して最後まで全然タイムが変わらないという、もう完全に相反する性能の両立が永遠のテーマです。そのためにはクルマの進化ももちろん必要ですが、そうなったらもう、誰も太刀打ちできない存在になれるでしょうね。レースは生ものというか、刻々と、下手すると毎周毎コーナーという勢いで状況は変化していきます。ブリヂストンのタイヤは常にその変化に対するレンジが広く、対応力の広さを感じます。グリップを発揮しつつ、カバーできる領域といった部分を、クルマと合わせてさらに広げていきたいですね。ウェット、ドライ、ダンプといった路面状況に関係なく、どのタイヤを履いてもいけちゃいますというのが理想です。その点、僕のイメージではブリヂストンは既に一歩抜き出ている存在だと思いますが、もっともっと突き抜けて欲しい(笑)
――対応力の広さはレーシングタイヤが常に追い求めるものだと思います。半面、ライバルが一点突破を突いてくることもあるかもしれません。
笹原:2020年にSUPERR GTデビューした時は、予選一発でもいい、そうすればレースでは何が起こるかわからないからとリスクを承知で戦う覚悟はありました。レースですから自分が前に出たら絶対に相手を抑えようという気持ちもありましたが、基本、気持ちは「抑えよう」という方向にしかならなかったし、「どこまで抑えられるか」という戦いでした。もちろんそこで気持ちがクサることはなく、自分たちに何が足りないのかを、クルマのセッティングも含めてトータルで考えていました。ブリヂストンを履いているチームが常に上位にいるのを見ながら、どうやったらそこに近づけるのか、それこそ四六時中そればかり考えていましたね。
――シーズン開幕に向けていろいろと秘策を考えてるんですね?
笹原:先ほども言いましたがトムスは昔からトヨタのトップチームとして名門であり、歴史もあります。一緒にテストを進める中で、とてもプロフェッショナルだと感じています。一方、SUPER GTで現在のホンダとトヨタの双方を知っているのは自分くらいですから、自分からの提案でさらにを進化させられることもあるかもしれない。既にいくつか思い浮かんでいるアイデアもあるので、それも踏まえてTRDとも試行錯誤しています。すごくいい雰囲気の中、これまでになくチャレンジしていこうという感じが強く、積み重ねてきたデータや先入観を一回リセットして、新たなものを作ろうという雰囲気があります。それが身を結べばさらに一段高い、次のステップにいけるという手応えを感じています。

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――新しいパートナーであるジュリアーノ・アレジ選手とのコンビはいかがでしょう?
笹原:率直な印象は思っていた以上に日本人だな、と(笑) 僕より彼の方がずっと日本人っぽい。もちろんそれはいい面でもありますが、彼もF2とか海外のレースを経験していますから、本来彼が持っているものを引き出すことができれば、さらに一段高いステップを上がるかもしれないと期待しています。去年は少し戸惑いや焦りがあったように見えますが、今年はリラックスしていますし、連携は取れてきていると思います。
――SUPER GTに限らず、昨年はスーパーフォーミュラで2勝を挙げるなど、これまで様々なカテゴリーで結果を残してきています。ドライバーとしての強さと、その上で今シーズンの目標をお聞かせください。
笹原:基本的にはコンディション悪い時とかアウトラップとかに自信があります。SUPER GTに参戦してからもコンディションが悪い時とか荒れている時に、なんだかんだとそこで結果を残してきました。逆にいうとそういう時にしかチャンスがなかったとも言えますが、チャンスを手繰り寄せられるように、常に準備と努力はしているつもりです。また、幸いにも色々なクルマやタイヤを経験し理解している部分はあるので、それを踏まえてみんなでさらにもう一歩前に進みたいですね。SUPER GTではポールポジションと表彰台は取ったことありますが、一度も優勝したことがありません。早く表彰台に上がってブリヂストンの赤いキャップを被りたい。そのためには一戦一戦、クルマもタイヤもあるものをすべて出し切るレースをしたいですね。全部出し切った先に、これは良かった、あれは悪かった、もっとこうできるかもしれない、というのが絶対にあるはずなので、そこをさらに伸ばしていけたらと思います。その結果最終的にタイトル争いに絡むことができればもちろん嬉しいですが、とにかく一戦一戦を出し切りたい。そして勝ちたい。
――同じチームの36号車が最大のライバルでしょうか?
笹原: 2台でデータを共有できるのはメリットですが、今の所あまり意識していません。というよりも37号車以外はみんなライバルとして意識しています。隣のマシンを変に意識するのではなく、もっとちゃんと全体を俯瞰して広い視野で何をしなければいけないとかを冷静に見られるように。そう、冷静に。特に今年は長いレースが多いので、なおのことブリヂストの強みを活かせるように努力しなければいけないし、そのためにもみんなでフラットに、リスペクトしながらなんでも言い合えるような環境を作りたい。それが今年のざっくりした目標です。SUPER GTではドライバーに限らず、チーム、エンジニア、もちろんタイヤメーカーもみんな素晴らしいプロフェッショナルが集まって戦っています。それをもっともっと知ってもらい、モータースポーツが他のスポーツと肩を並べられるようになって欲しいですね。自動車は日本を代表する国の産業です。ちょうど今、ワールドベースボールクラシック(岡山公式テスト期間中に取材しています)で日本中が盛り上がっていますが、モータースポーツもみんなに「おおっ!」と言われるような価値のあるスポーツになって欲しいです。


インタビューが始まって開口いちばん、理想のタイヤについて熱い言葉が飛び出した笹原選手ですが、思い描くモータースポーツ界の将来像もとても印象的でした。新しいマシン、新しいチーム、新しいパートナーと共に、きっと素晴らしい戦いを演じてくれるはず。私たちブリヂストンも、常に最高のパフォーマンスでその走りを支えます。