今シーズン、SUPER GT300クラスに初フル参戦する平良響選手。TGR-DCドライバーとして2020年のFIA-F4選手権では12戦中10勝という圧倒的な速さでチャンピオンに輝き、2021年からは全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権でも活躍する逸材です。昨年この企画でも登場していただいた堤優威選手とのコンビネーションとなり、#2 muta Racing GR86 GTでどんな戦いを演じてくれるのか、早くも活躍が期待されています。
「GR86 GTとブリヂストンのパッケージで、初年度からタイトルを狙っていく」
#2 muta Racing GR86 GT 平良 響選手
――オフシーズンテスト、ここまでの流れはいかがですか?
平良:チームメイトの堤優威選手が本当に速いので、クルマの走らせ方とかタイヤに合わせたドライビングスキルについて、多くの学びがあります。自分がレベルアップすべきポイントが明確にわかるので、とてもいい環境だと思います。またGR86 GTはGTA-GT300規定なのでクルマを開発していく部分もあり、セッティングの幅が広くなります。クルマを速くするためにドライバーに求められることも多く、チームへのフィードバックではコメント力も必要になりますから、そういう面でもとても勉強になります。
――これまでは主にフォーミュラが主戦場でしたが、クルマが大きく変わっての印象はいかがでしょう?
平良:マシンが違えば走りも違うというのはある意味そのとおりですが、基本的なドライビングは一緒ですし、やはり速いクルマを作ることが非常に重要になってくるカテゴリーです。タイヤはもちろんですが、クルマをセッティングする幅も広いので、クルマを速くする技術が大切になります。もちろんフォーミュラでもそこは大事ですが、やはりスペシャルに開発されたタイヤを使っている点が大きいですね。それにレース距離が長く路面の変化も大きいので、フォーミュラと比べてタイヤへの影響が大きくなり、そこまで予想しながら「こうなるだろうな、だからこうしよう」と考えながらクルマ作りを進めていく必要があります。
――先ほど堤選手のことを「本当に速い」とおっしゃいましたが、印象的なこと、学びのあるところを具体的にお聞かせください。
平良:僕は初めてブリヂストンタイヤを履くので、タイヤを温めてアタックすることについては、なかなかタイヤに合わせきれない部分がありました。それについては堤選手の車載映像やデータロガー、ラップタイムから色々と勉強しました。
――去年の第5戦鈴鹿では、30号車のGR86 GTで3位に入っています。その時はライバルメーカーのタイヤを履いて、ブリヂストンタイヤと戦ったわけですが?
平良:戦う相手として、やはり持ちの良い、ロングランでの速さが印象的で、それについてはブリヂストンを目指せという雰囲気がありました。一発のタイムやアウトラップでは勝負できますが、ロングランでどう戦うかはめちゃめちゃ研究させられました。
――そういう流れで、今年ブリヂストンタイヤで走っての印象はいかがでしょう?
平良:(岡山合同テストで)ロングランのテストをしましたが、やはり予想していたとおりに強いですね。タイムの落ちも全然ありませんでした。反面、アウトラップはやはりすごく滑りやすく、それは初体験でしたが、堤選手にアウトラップの走り方を教えてもらいましたから、そこも対応できていると思います。
――具体的に、どのようにタイヤを温めるのでしょう?
平良: 1周目、アウトラップではシフトアップした瞬間にリヤが出てクラッシュ、というのもありがちな話です。とても難しいのですが、シフトアップする時もコーナーの中ではアクセル全開にはしないとか、ピットロードの速度リミッターを切るタイミングではアクセルを全開にしないとか、そういう細かいところです。タイヤのウォームアップについてはデータロガーを見て、ウェービングの仕方とかを色々確認しました。ウェービングのやり方にも色々あって……これは言ってもいいのかな?
――ぜひお願いします。
平良:例えば左右に荷重をかけながら、じわーっとステアリングを切るような暖め方と、結構早めに小刻みにステアリングを切ってクイクイとフロントを動かすような温め方とがあるんですけど、それもタイヤによって変わってきます。僕はトヨタの育成ドライバーなので、これは講師である先輩ドライバーに聞いてきたことでもあります。タイヤの温め方に限らず何か疑問がある時に、ある程度自分の中で想定しておいて「どんな感じですか?」と質問すると答えが返って来るので、「あっ、自分と一致してるな。じゃあ試してみよう」といった感じです。
――そこで、想定外に印象が異なるようなことは?
平良:うーん。ないです。
――先ほどロングランが強いと言いましたが、さらにこうして欲しいことなど、リクエストはありませんか?
平良:今はまだ用意されているのに試せていないタイヤがあります。そういうタイヤを試していく中で、あれが欲しい、これが欲しい、という意見が出てくると思いますが、現段階では「あれが欲しい」というのはありません。欲を言うならば、色々なタイヤを履きたいです。あとは、ロングランはすごく持ちますが、一発のアタックとなるとウォームアップしてアタックに入る時のピークグリップがちょっとわかりにくい面があります。それでも堤選手のようにタイヤを温めることができれば、ドーンとアタックできるので、そうやってしっかりとタイヤを温めて、ドンドンッ!とタイムを出すことを勉強中です。
――チームでの役割りや、そこで自分の力をどう発揮していこうかといったイメージをお聞かせください。
平良:堤選手の方がマシンに慣れているというのはありますが、まずは追いつけ追い越せです。切磋琢磨、チームメイト同士で競い合いながら上を目指していけばチャンピオンも取れると思っています。色々なチームからも「2号車、調子いいよな」とか「今年は2号車がチャンピオンだな」と警戒している声が聞こえてくるので、まわりからもそう思われている存在だと実感しています。
――クルマに速さはあっても、SUPER GTにはサクセスウェイトがありますがそこについては?
平良:調子がいい時って勝てちゃうじゃないですか。ダメな時、調子が悪い時こそ踏んばってポイントを取ることが大事なので、そういう時にこそ一つでも順位を上げられるようにがんばらないと。去年スーパー耐久ST-2クラスで6戦5勝しタイトルを取りましたが、やはりウェイトがどんどん積まれていく中で、セッティングもどんどん変わっていった。重くなるほどクルマが変わっていく中で、どうにか踏んばって勝てたという感じですから、ウェイトにも対応していけると思っています。
――ますます楽しみになりました。最後に、今シーズンの意気込みをお聞かせください。
平良:GT300クラスは車両パッケージによるクルマの特徴に注目されることが多いですが、ドライバーにももっと注目して欲しいと思います。例えばポールポジションを取ったとしたら、それはもちろんクルマのおかげであり、タイヤのおかげでもありますが、やはりもっとドライバーにフォーカスして欲しいと思っています。
――既にポールポジションも優勝も視野に入っているわけですね?
平良:もちろん。当たり前です。このパッケージならできる、とずっと思っています。正直、これまで乗ってきたフォーミュラと比べても、GTA-GT300は乗り方もそっくりなんですよ。GT3はもう少しハコっぽいというか、動きもモッサリしてフォーミュラとはちょっと違うんですけれど、GTA-GT300はフォーミュラドライバーには乗りやすいクルマだと思います。GTA-GT300とブリヂストンタイヤの組み合わせはみんなが羨ましがるコンビネーションですから、本当にチャンスだと思っています。
昨年の堤選手に続き頼もしいドライバーが加入となったmuta Racing GR86 GT。フレッシュなコンビが今シーズンどのような戦いを見せてくれるか注目です!