国内モータースポーツの最高峰として高い人気を集めるSUPER GT。トヨタ、日産、ホンダの3メーカーが凌ぎを削るGT500、バラエティ豊かなマシンが競い合うGT300、どちらのクラスも毎戦ハイレベルな接近戦が繰り広げられています。LEXUS TEAM LEMANS WAKO'Sの監督としてSUPER GTに参戦するだけでなく、TOYOTA GAZOO Racingのアンバサダーを務め、広くモータースポーツの振興に取り組んでいる脇阪寿一氏に、SUPER GTの魅力を語っていただきました。

vol.7 脇阪寿一氏、SUPER GTの魅力を語る


「SUPER GTの魅力は、まずは車種バラエティが豊富だということです。自動車メーカーを始め関連するパーツメーカーが凌ぎを削り合う、SUPER GTは世界で唯一のレースだと思います。もちろんタイヤメーカーもその重要なポジションを担っています。ファンの方の目には見えにくいかもしれませんが、モノづくりを行うメーカーにとって、レースは重要な開発の場であり戦いの場です。その開発の結果としてクルマやドライビングに個性や特性が生まれ、それがSUPER GTの人気に繋がっているのだと思います。」


「クルマはもちろん、そこに集まる人々もSUPER GTの魅力ですね。個性あふれるトップドライバーが名を連ね、往年の名ドライバーが監督やチームオーナーとして関わるなど、多彩な人々がSUPER GTを構成しています。もちろんレースクイーンにもファンの方がいますし、そういう人々が毎戦毎戦サーキットに集まって独特な雰囲気を織りなしているので予備知識なく初めてサーキットに来た人もきっと驚くと思います。僕自身、モータースポーツをメジャーなスポーツにしたいという思いで各界の著名人をサーキットにお招きすることも多いのですが、皆さん口々に『これだけ盛り上がっているイベントは他にはないし、十分にメジャーでしょう?』とおっしゃってくれます。それでも僕はもっともっと盛り上げたいと思っていますし、そういう意味でも今現在サーキットに来てくれているファンの方々に、まずは感謝したいという気持ちです。」



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華やかな舞台とそれを支える人々。その中でもメーカー同士の技術開発競争は、SUPER GTの大きな特徴です。特にF1をはじめとする多くのレースがワンメイクタイヤを採用している中で、複数のタイヤメーカーが参戦するSUPER GTは、世界的に見ても特殊な存在と言えます。




「レーシングカーの三大要素はシャシーとエンジン、そしてタイヤです。中でもタイヤはクルマの中で唯一路面と接しているパーツで、本当に大切な要素です。例えば靴だって使われ方に応じて適したモデルがありますよね?スニーカーでアイススケートリンクの上を走ろうと思ってもまともに走れないのと一緒です。SUPER GTは本当に主要タイヤメーカーが凌ぎを削っている戦場です。だからこそ世界中のレースシーン、レーシングドライバー、レース関係者からも注目されている。」


「特に我々日本のドライバーは、昔からブリヂストン、ダンロップ、ヨコハマさんがタイヤ競争を続けてきてくれたことによって、若い頃から当然のようにタイヤ開発と関わって成長してきました。僕もレーシングカートの時代からブリヂストンのタイヤ開発に関わらせてもらってきましたが、これは世界的に見れば特殊な環境だと思いますし、そういった意味ではSUPER GTでのタイヤ開発がいかに重要かがわかります。何よりもタイヤメーカーとチーム、そしてドライバーがテストを繰り返し、徹底的に意見交換してタイヤを創り上げる、そのプロセスが大切なんです。僕もブリヂストンのスタッフの方々とタイヤ開発の現場にいて、本当にワクワクしたものです。ある意味、古き良き日本のモノづくりというか、職人のような、神髄のようなものに触れることができたと思います」





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タイヤの開発にはドライバーからのフィードバックも重要な役割を担っています。ドライバーと技術者が密に連携しながら開発するという意味では、レーシングタイヤは一種共同作業の賜物と言えるでしょう。




「先ほどもシャシー、エンジン、タイヤがレーシングカーを速く走らせるための三大要素と言いましたが、実はその中でも特に大きな役割を担うのがタイヤなんです。エンジンの馬力が例え10馬力少なくても、タイヤがズバ抜けて優れていればレースで勝てる。そういう意味では、タイヤ開発がどれだけ重要かということは本当に身に染みています。ドライバーとエンジニアが同じ言語で意見を交わしながらタイヤの方向性を見極め開発できるというのは本当に恵まれた環境だと思います。だからこそ世界中のどのレースに持って行っても恥ずかしくないタイヤを作りたい、作らなければいけないと身の引き締まる思いですし、とてもいい仕事をさせていただいていると思います。」


「中でもブリヂストンはトップであることが使命です。もちろんレースですから時には負けることもありますが、負けた後のスタッフの顔つきを見ていると、ひしひしとその使命を感じます。僕もブリヂストンとずっと一緒にやらせてもらっていますが、これはすなわちトップを見続けているということですから貴重な経験でありとても感謝しています。」


「自動車メーカーだけでなくタイヤメーカーが開発競争を続けてきた結果、SUPER GTは世界で最速のGTカーレースになっています。SUPER GTは今、ドイツのDTMと一緒に開催する方向で話が進んでいますが、両車が一緒に走ったらぶっちぎりでSUPER GTの方が速いと思いますよ。それこそ1周のラップタイムで数秒は確実で、下手したら5秒、10秒違うこともあるかもしれない。これはもうタイヤの違いです。SUPER GTのハイレベルなタイヤ開発競争というのは、他のどのレースとも次元が違います。確かにWECやル・マンにも複数のタイヤメーカーが参戦していますが、まったく別物なんです」





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日本国内で独自の進化を続けているSUPER GTには、海外の自動車メーカーはもちろん外国人ドライバーも多く参戦しています。特に昨年は元F1チャンピオンドライバーであるジェンソン・バトン選手が参戦し注目を集めました。


「ジェンソン・バトンはSUPER GTに来て、『日本にこんなに楽しいレースがあったんだ!』と、その魅力を世界に訴えてくれています。今年からレース中継の世界配信が始まりましたが、それだけ世界中のファンの熱い視線を集めているということなんです。ジェンソンに限らず、レクサスにはヘイキ・コバライネンがいますけど、F1で優勝しているドライバーが、たまたまいろんなきっかけでテストしてみたらもうビックリして、笑顔で日本にこんなレースがあるのかと言って、それで彼らの口からSUPER GTの魅力がヨーロッパに伝わっている。これからですよ。今はこのぐらいで済んでいますが、これからますますヨーロッパの選手たちが日本に入ってくると思います。なぜならここには自動車メーカー、さらにタイヤメーカーの開発競争があるからです」





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タイヤ開発に自らの身を置いてきた経験を踏まえてSUPER GTの魅力を熱く語る脇阪氏。LEXUS TEAM LEMANS WAKO'Sは今シーズン、大嶋和也選手のパートナーに山下健太選手を迎え、新たなラインアップでの活躍が期待されています。




「去年はチームに不幸があり難しい状況でシーズンを戦いました。僕は監督になって今年4年目になりますが、1年目にシリーズランキング2位となっています。2年目はチームとしては進化しつつも順位的には3位。3年目となった昨年は難しい状況でしたので、4年目である今年を3年目として位置づけてチームを改革してきました。去年やりたかったこと、本当にしたかったことに着手し、開幕までのテストでもコンスタントに上位につけてきました。SUPER GTの場合、3メーカーのポテンシャルというのがまずあって、それがどこにあるかでタイトルを争える、争えないという状況になるんですけれど、我々は常にレクサス勢の中で上位にいると思っています。そういった意味ではとにかくレクサスの中で上位を狙います。その結果、レクサスのポテンシャルが3メーカーの中でトップにあるならタイトル、という形で戦っています。」


「また、モータースポーツを盛り上げる上でSUPER GTに監督として関わらせていただいていることを本当に感謝しています。日本でいちばん、ぶっちぎりで人気のあるレースの監督ですよ!監督としてどれだけ成績に繋げられるかによって自分の立ち位置も変わってくると思います。僕は若い頃から常に自分のためにどうクルマを仕上げていくか、どうやってチーム員をこっちに向けるかを意識してレースしてきました。そうやって経験を重ねる中で、運転することが不得意になってきたと感じて監督になったわけですが、その不得意になってきた部分を今は若い優秀なドライバーが担っています。大嶋と山下がしっかりと走ってくれていますから、自分の現役最後の頃よりも仕事はスムーズにできていると思いますよ。ただ、いまいち成績がに繋がっていない部分があるのでとにかく1回優勝したいですね。そうすれば色々なことが変わると思うのでまずは1勝。SUPER GTを通じてモータースポーツを盛り上げていくことが僕の使命です」