9/21-22に決勝レースが行われる2019-2020シーズン EWC 第1戦 ボルドール24時間耐久レース。 開幕まで数日となりましたが、新しいシーズンとなってレギュレーションが変更された項目が有りますので一部紹介します。 また昨年までのボルドール24時間の結果を交えて、レースで勝つ為に考える、タイヤ戦略の考え方を簡単に紹介したいと思います。

2019-2020シーズン FIM EWCレギュレーション変更

ブリヂストンにとってレギュレーションが変更される場合、当たり前ですがタイヤに関する変更点に最も注目します。
新シーズンでタイヤに関する変更点は2つ。
① 決勝レースでのタイヤ使用本数
昨年までは決勝レースではチームに配布されるステッカーをドライタイヤ1本につき1枚を貼付。各チーム40枚(24時間レース)や16枚(8時間レース)を限度としたタイヤ本数制限がありました。但し新開催のサーキットや新舗装のサーキットではタイヤ本数制限はありません。しかし新シーズンではこのステッカーによる管理が廃止。つまり決勝で使用出来るタイヤは全レース無制限になります。8時間レースでは鈴鹿の場合、8スティントが基本なので16本使用と従来と変わらないと思われますが、24時間レースでは24スティントで走行した場合、毎回タイヤを新品に交換できることになります。
② 予選でのタイヤ使用本数
昨シーズン、予選ではステッカー6枚(ライダー3人の場合)や4枚(ライダー2人の場合)と制限がありましたが、新シーズンではステッカー7枚(ライダー3人の場合)、5枚(ライダー2人の場合)と1枚増となりました。ただし新サーキットもしくは新舗装のサーキットではこの制限は適用されません。

予選での本数制限等のレギュレーションはドライタイヤのみに適用され、ウェットタイヤやインターミディエイトには適用されません。

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2019-2020シーズンでは予選のみタイヤ使用本数制限が適用されます。

タイヤ以外のレギュレーションでは予選通過基準タイムが変更になり、翌2020-2021シーズンでは更に厳しい予選通過基準タイムに変更される予定です。

予選通過基準タイム
各グループの予選で最速ライダーのラップタイムの109%が予選通過最低基準タイムだったが、2019-2020シーズンは108%に変更。翌2020-2021年は107%に変更されます。

例:鈴鹿サーキット予選トップが2分6秒0の場合

2019 (109%) 2020 (108%) 2021 (107%)
トップタイム 2'06.000(126.000sec)
最低通過タイム 2'17.340(137.340sec) 2'16.080(136.080sec) 2'14.820(134.820sec)

その他、燃料が単独サプライヤーになったり、ヘルメットやマシンのFIM公認リストが発表になり、リストに載っているものしか使用出来なくなっています。

レギュレーションの変更点は下記EWC公式サイトで確認出来ます。
URL:https://www.fimewc.com/whats-new-at-the-2019-2020-fim-ewc/

ボルドール24時間耐久でのタイヤ戦略

2016年にF.C.C. TSR Hondaが初めてポールリカールで開催されたボルドール24時間に参戦した時はまだ16.5インチのタイヤが使用されていました。 ブリヂストンは24時間耐久の経験が少なく、全日本ロードレースやMotoGPの経験からスペックを決定し投入。しかしポールリカールの特徴である長いストレート2本の影響でピットアウト時にタイヤが十分温まる前に長いストレートで冷えてしまい、コースイン後3周で大幅に差を付けられてしまう状況でした。 この時の経験を教訓にし、低温作動性とグリップの両立を求めたタイヤ開発を行い、ボルドール24時間参戦3度目となった昨年はF.C.C. TSR Honda FranceとYART-Yamahaの1-2フィニッシュを果たす事が出来ました。

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一般的に、新路面となったサーキットではリアタイヤの摩耗肌悪化の懸念があり、特に低温時にはかなり悪化する傾向です。レースで低温となる夜間走行時のタイヤ状況が重要ですので、しっかりタイヤを観察してレースで使用するタイヤを選択する必要があります。ちなみに昨年は夜間低温時、ライバル対比速いラップタイムで周回出来ていました。 レースで使用するタイヤは本数制限がありませんが、1スティント走行後のタイヤ使用状況やラップタイムの安定性をしっかり確認し、タイヤ交換無しで2スティント走行可能と判断出来れば、ピットイン時にタイヤ交換無しでライダー交代と燃料補強だけにするとピット作業時間を短縮する事が出来るので、状況を確認しながら素早く判断する必要があります。 今年の鈴鹿8耐では耐久レースとは思えないような接戦でのトップ争いが最後まで繰り広げられましたが、24時間耐久でも同じ傾向にあり、近年は20時間以上経過した時点で複数のチームが同一周回で数秒差のレースになる事もありますので、このような状況も想定してチームと共にタイヤ選択やピット作業進行を考えておかなければなりません。 気温や路面温度、走行後のタイヤ摩耗状況、ラップタイムとグリップ持続性の両立、タイヤの扱いやすさ等、チームとライダーにとって最適な性能のタイヤを準備してレースに挑みたいと思います。

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タイヤエンジニアは常にライダーのフィーリングを確認します。
チームスタッフと共にレースで使用するスペックを決定していく。

2019-2020 EWC Race Preview Rd.1ボルドール24時間 Vol.3では9/3-4に行われた事前テストの状況を確認しながら、今年のレース状況を予想し、見所をお伝えします。