みなさん、こんにちは!ブリヂストンの山田宏です。
先週8耐公開テストが終わりました。8耐レース前の最後のテストが終わった段階で、メンバーもほぼ決まったので、テストの結果も踏まえて今年の鈴鹿8耐を占ってみましょう。

公開テストのダイジェスト版動画をご覧下さい。(動画再生時には音が出ますので音量にご注意ください)

1.公開テストの状況、結果

8耐公開テストは、7月11日から13日の3日間行われました。実はその1週間前にも、4メーカー合同テストと、タイヤメーカー合同テストが、1日ずつ2日間行われたので、メーカー契約チームなどは計5日間のテストを行った事になります。

今年の一つの話題は、ホンダとスズキが新型マシンになったという事です。ホンダのワークスマシンに関しては、#634 MuSASHi RT HARC-PRO.Honda(ハルクプロ)と、#5 F.C.C. TSR Honda(TSR)の2チームが使用します。スズキに関しては、#12 ヨシムラスズキMOTULレーシング(ヨシムラ)と#71 Team KAGAYAMAの2チームがワークスマシンの使用です。
公開テストはレース前最後のオフィシャルテストなので、EWCレギュラーチームも含めて約60チームが参加しました。
テストは30チームずつA,Bグループに分けられました。多くのチームがスペアマシンと2台準備して、3人のライダーがいるので、常に2台ずつが走行しているという感じです。ワークス系のチームでは、3台4台のマシンを準備しているところもありました。
ファクトリーマシン使用のチームは、前週のメーカーテストがマシンのシェイクダウンというチームが多かったです。全日本のJSB1000では既に走らせているとはいえ、8耐マシンはかなり違うようなので、まずきちんと走ってある程度のタイムが出る為に、足回りとエンジンのセッティングに時間が掛かります。

初日は午後からの走行で、各グループ45分と75分の走行と、18:45からの夜間走行が70分間ありました。初日から気温30℃、路面温度53℃とかなり暑い状況でした。が 2、3日目は同じタイムスケジュールで、9時からスタートして午前中は40分が2回、午後には90分が1回という走行でした。8耐では1スティント1時間走るので、タイヤも含めたロングランテストをするには、1時間以上の走行枠が必要なのです。
その2日目には、3時前から激しい雷雨となり、一時走行中断。その後はウェット路面でのテストも行えました。3日目は曇りながら、終日ドライでピークでも気温30℃、路面温度50℃でしたが、テストには良いコンディションでした。

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初日の総合では、#634ハルクプロが唯一7秒台に入れる2'07.783でトップタイムをマーク。#21 ヤマハファクトリーが2'08.126、#12ヨシムラが2'08.179と続きました。
ちなみにナイトセッションでも#634 ハルクプロが2'08.502でトップ、#21 ヤマハファクトリーが2'08.526で2番手となりました。
2日目は#5 TSRが2'07.70でD.エガーターがトップタイムをマーク。#12 ヨシムラも7秒台に入れる2'07.954で2番手となりました。#21 ヤマハファクトリーが2'08.039で続きます。2日目の午後にはロングランテストを予定していたチームが多かったですが、雷雨で中断となってしまいました。
3日目は天気も安定した中、最終セッションに#19 モリワキ(Ho、PI装着)が2'07.346の全体としてもトップタイムを出しました!一発のタイムでしたが、マシン、タイヤ共に仕上がってきたと思われます。
最終日で圧巻だったのは、#21 ヤマハファクトリーです!午後にマイケルとアレックスの二人が27周のロングランを実施。序盤2分8秒台で、最後まで9秒中盤くらいで走りきりました!
現状ではロングランで最も速く安定していたと思います。このチームのベストタイムは、3日目の午前中に中須賀選手が出した2'07.603で全体の3位でした。
全体の2位は#634 ハルクプロで、最終日の午後に出した2'07.592というタイムです。
ベストタイムは勿論大事ですが、レースでは安定して速いラップタイムが刻めるかが重要です。
新型車になったチームの話を聞いてみると、燃費のデータも無いのでそのデータもしっかり取って、7回ピットで走れるようにする必要があるとの事。全日本の結果を見ても分かるように、新型車(ホンダ、スズキ)の最高速度は速くなっています。単純に高回転でパワーが出ていると思われるので、燃費は悪くなる筈!全日本のセミ耐久でもデータを取っていると思いますが、燃費と性能は相反する部分があり、この辺りをどんな仕様でテストして出たタイムかは分かりません。
またライダーの乗り方によっても燃費の差が出るので、初めてのライダーはこの辺りのデータもとる必要があります。
この辺りのデータも3日間でしっかり取る必要があったと思いますが、各チームの状況はどうだったでしょうか?
そして公開テストでは、ライダー、マシンのテストだけではありません。チームスタッフによるピット作業の練習風景もかなり見られました。ライダーも交代の時の乗り方や、操作しなければならないスイッチ等を教わり、練習をしていました。

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合同テスト3日間各日と、総合のタイム結果です。

2.公開テストを終えた段階での戦力分析

公開テストが終わった段階で、私の私見ではありますが、優勝争いをすると思われるチームの戦力分析をしてみましょう。
#21 ヤマハファクトリー:マシン、タイヤは昨年の実績あるパッケージで、安定度はNo.1と言えるでしょう。ライダーも中須賀選手を軸に、昨年の優勝者A.ロウズと、ホンダで8耐2勝の経験がある、M.vd.マーク選手。このチームの強みは、中須賀選手のセッティングを一切変えずに外人に乗ってもらい、その状態でもタイムの出せるライダーと組める事でしょう。マイケルは長身な為、少しだけハンドルポジションを変えてもらえたそうです!

#11 チームグリーン:昨年ヤマハと同一周回で2位となり、マシンも改良が施されています。ライダーは昨年も活躍した、L.ハスラム選手と、今年の全日本でエースに抜擢された渡辺一馬選手。3人目はアジア選手権参戦の、アズラン選手。彼は8耐の経験はあるものの、ファクトリーマシンでは初めてなので未知数です。渡辺選手は、今年全日本でも2度の表彰台を獲得し、テストでもハスラム選手とほぼ同じタイムをマークしていました。アズラン選手の仕上がりと、起用方法がカギとなるかもしれません。

#12 ヨシムラ:新型GSX-R1000の仕上がり具合がポイントとなるでしょう。テストでは仕様の違う3台を持ち込み、全日本で出ている課題に対して改良バージョンをテストしていました。昨年3位となった、エース津田選手と、J.ブルックス選手は変わらず、新たにS.ギュントーリ選手が加わりました。彼は8耐初参戦ながら、2014年にWSBタイトル獲得や、MotoGPの経験もありかなりマシンのセッティング能力もあるようです。このチームの強みは、何といっても伝統のあるチームワーク。マシンの高いポテンシャルを引き出し、安定させる事が出来れば、5回目の優勝が可能でしょう。

#5 TSR:EWCフル参戦2年目で、鈴鹿8耐3勝の実績を持つ。この鈴鹿テストから、それまでEWCを戦っていたマシンとライダーを一新した。マシンはワークスマシンで、ライダーも3人目に何とEWCでカワサキに乗っている R.デュプニエと発表された!ランディはMotoGPの経験もあり、速さは抜群。鈴鹿8耐でも2014年にヨシムラで走り2位になっている。今年のルマン24時間でも、かなりタフな所を見せていた。S.ブラドルは初の鈴鹿で、公開テスト2日目からの参加だったが、すぐに8秒台はマーク。D.エガータも8耐の経験豊富で表彰台にも立っている。今のところ順調に仕上がっていると言えますが、更にレベルアップをするために一新されたマシン、ライダーをどうまとめていくかがポイントでしょう。

#634 ハルクプロ:この2年はトップ争いをしながら、不運なトラブルに見舞われている。今年は新型マシンを全日本開幕戦から開発しているので、かなりポテンシャルアップをしている。タイム的にはすぐに良いタイムが出せるので、それを安定して維持出来るかに掛かっている。ライダーは、今年MotoGPからJ.ミラー選手とMoto2から中上選手を招聘。中上選手はハルクプロ出身で、8耐は2010年以来だが、すぐにマシンは乗りこなしていた。J.ミラー選手も初の鈴鹿であったが、流石にMotoGPライダーだけあって、ポテンシャルの高さを見せていた。このチームもピットワークには定評があるが、新型マシンの安定度と、8耐のレース経験の無い二人(中上選手は2010年レースでは走らず)が、レースで安定して走れるかがポイントでしょう。

#7 YART:昨年鈴鹿8耐で4位になり、EWCで今年のルマンからタイヤをブリヂストンにスイッチ。ルマン、ドイツと2位になり、現在ランキング3位で、僅かながらタイトルの可能性も残っている。マシンは#21ヤマハファクトリーと同じで、タイヤはEWCで使っている17インチを使用。(#21ヤマハは昨年と同じ16.5インチ使用) 今年からこのチームに入っている野左根選手は、EWCに参戦してかなり成長しているので、鈴鹿での活躍も期待できる。M.フリッツ選手は初の鈴鹿ながら、若いので順応性の高さを見せている。エースB.パークスは心身共にタフで、昨年も競り合いの強さを見せた。今回のテストでは一発の速さはないものの、EWCレギュラーチームとして、コンスタントな走りが期待出来る。

私の予想では、優勝の可能性のあるのはズバリ上記6チームです!
と言っても8耐では、ちょっとしたトラブルやミスがあるだけで、優勝は難しくなってしまいます。まして近年では転倒して優勝などの例はないので、ライダーにとっても混雑した中いかに転倒のリスクを避けて速いラップタイムを維持できるか?がポイントです。使用するタイヤに関しては、上記6チームのうち、#21ヤマハ、#11チームグリーン、#12ヨシムラが、昨年使用した16.5インチ、#634ハルクプロ、#5TSR、#7YARTが17インチと分かれています。この辺りもタイヤの性能をどう引き出せるかがポイントとなるでしょう。

今年我々のサポートするチームや、タイヤの詳細については、また後日このスペシャルコンテンツで紹介していくので楽しみにして下さい。

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