みなさん、こんにちは!ブリヂストンの山田宏です。
今回は今月末に開催される開催される、EWC最終戦鈴鹿8耐を迎えるにあたって、EWCのこれまでを振り返ってと、鈴鹿8耐の見所についてお話をしましょう。
まず、前回6/23-25に行われた、スロバキア8時間レースを振り返ってみましょう。
1.スロバキア8時間レースを振り返って
スロバキア8時間のレースについては、我々のサポートする#7 YART-YAMAHAと#5 F.C.C. TSR Hondaの2チーム共に、抜群の速さを見せていただけに、マシントラブルでとにかく残念の一言です!HPでレポートしているのでご存じの方も多いと思いますが、もう一度下記をご覧ください。
レポート:2016-2017 FIM EWC 世界選手権 第4戦
前回の舞台スロバキアリンクは、初開催の為に火曜日、水曜日と公開練習がありました。その時から気温30℃を超え、かなり暑いコンディションとなり、我々のタイヤも非常に良く作動していました。タイム計測はされてなかったので、手元計測では#7 YARTがトップタイムだったようです。
レポートにあるように、木曜日午後の予選1回目では、好調の#7 YARTが3人共に2分04秒台に入れるタイムで暫定ポールを獲得!最後に走った野左根選手が全体のトップタイムをマークしました!#5 TSRは5番手で終了。土曜日の予選2回目では、#5 TSRはJ.フックが昨日のタイムを大幅に更新し、3番手にポジションアップ!#7 YARTはタイム更新ならなかったものの、ポールポジション獲得しました。
スロバキアでは、グリップの良い路面に高速のコースレイアウト、そして気温30℃、路面温度50℃以上という高温下では、我々のタイヤは非常に良く機能して、連続周回後のグリップダウンも少なかったので、チーム側も他社より有利とみていました。
特に#7 YARTは3人のアベレージタイムも圧倒的に速く、初優勝が期待され、#5 TSRも表彰台は確実な状況でした。
余談ですが、スロバキアのコースは、平均速度が高い高速コースの為、燃費が悪く8回ピットの作戦が多かったです。(優勝した#94 GMT94は9回ピットでした!)
レースの展開もレポートにある通り、序盤は1-2体制で順調に進みましたが、やはり耐久レースは何かが起こるのです!#5 TSRは電気系のトラブル、#7 YARTは左側のチェーンアジャスターのトラブルと、普段では起きないようなトラブルだっただけに残念です。
両チームのライダー、スタッフは、本当によく頑張ってくれました!
最終戦鈴鹿での巻き返しに期待しましょう!
第4戦終了後のポイントランキングです。
鈴鹿8耐は、EWC最終戦ということで獲得ポイントが1.5倍になります!通常8時間耐久の場合、優勝チームは30ポイントですが、鈴鹿8耐では45ポイントとなります。
タイトル争いを見てみますと、#5 TSRはトップと48点差で、残念ながらタイトルの可能性は無くなりました。
ランキング4位の#11 TEAM SRCは鈴鹿には参加しないので、タイトル争いは上位3チームに絞られました。
我々のサポートする#7 YARTが逆転タイトルの条件を見てみましょう。
#7 YARTはトップとの差が27点ですから、
#7 YARTが優勝(45点)して、#1 SERTが10位以下かつ#94 GMTが9位以下。
#7 YARTが2位(36点)だと、#1 SERTが16位以下かつ#94 GMTが15位以下。
#7 YARTが3位(31.5点)だと、#1 SERTが19位以下かつ#94 GMTが20位以下。
仮に#1 SERT,#94 GMT共に無得点に終った場合、#7 YARTが4位(28.5点)以上になれば逆転となります。
非常に厳しい条件となりましたが、上位2チームは1点差で、お互いの前でゴールする事が条件となるので、2チームの争いは激しくなり何が起こるか分かりません!
2. 今年の鈴鹿8耐について
ご存じのように、今年の鈴鹿8耐は40回記念大会となります。第1回大会が1978年に開催され、その時の優勝がヨシムラジャパンでした!
我々ブリヂストンユーザーの初優勝は、2006年のF.C.C. TSR(辻村猛、伊藤真一組)でした。
その初優勝から、昨年まで何と11年連続で、ブリヂストンユーザーが優勝していて、今年は12連覇を狙います。
ブリヂストンユーザーでの優勝したチームの内訳を見ると、F.C.C. TSRが3回(2006,2011,2012年)、MuSASHI RTハルク・プロが3回(2010,2013,2014)、ヨシムラスズキが2回(2007,2009年)、ヤマハファクトリーRTが2回(2015,2016年)、DREAM HONDA RT(ホンダファクトリー)が1回(2008年)となっています。
今年の有力、話題チームをざっと挙げてみましょう。(詳しくはチーム紹介をご覧ください。)
メーカー別に見てみると、まずはホンダ勢。今年はCBR1000がニューマシンとなりポテンシャルがアップしています。しかしまだ各チームマシンを煮詰める時間が不足しているという感じです。ホンダ勢では、F.C.C. TSRとMuSASHI RT ハルクプロの2チームは、ワークスマシンが貸与されます。ハルクプロの高橋選手が、全日本開幕戦からマシンの熟成を担い、開幕2連勝で現在ランキング3位です。そのハルクプロには、Moto2から中上貴晶選手、MotoGPからJ.ミラー選手が加わりました。
F.C.C. TSRのライダーは、WSBからS.ブラドル選手、Moto2からD.エガーター選手に加え、何とEWCでカワサキに乗っていた元MotoGPライダーのR.ドゥプニエ選手が加わることになりました。
そして#104 Honda Dream Racingから、全日本ではTOHOレーシングとして経験のあるチーム、ライダー山口選手が参戦し、ライダーは世界GPの経験もある小山選手と、若手でJ-GP2で活躍中の岩戸亮介選手です。
#79 Team SuP Dream Hondaという新チームが立ち上がりました。これはホンダのサプライヤー17社が協力して、3年後に優勝を目指すという事で、エースライダーには8耐4回の優勝経験のある、伊藤真一選手が選ばれ、チームメイトには今年F.C.C. TSRでEWCを戦っている、J.フック、G.ブラック選手が参戦します。
他社タイヤのユーザーでは、モリワキが久しぶりに鈴鹿8耐に復活し、5度の優勝経験のある清成選手と、高橋裕紀選手が、ピレリタイヤで戦います。
ヤマハは、2年連続優勝を果たしている#21 ヤマハファクトリーRTは、エース中須賀選手を中心に、WSB参戦の2人、昨年の優勝メンバーA.ロウズ選手と、ホンダから移籍して、ハルクプロで2度の優勝経験のあるM.vd.マーク選手が加わります。 今年はファクトリー2チーム体制という事で、EWCを戦っている#7 YARTがそのままファクトリー体制で磐石の態勢を築きます。そしてEWCタイトル争いをしている、#94 GMT94 YAMAHA。過去に3位の実績もあるチームです。
スズキ勢は、第1回の勝者#12ヨシムラスズキが、40回記念大会も2009年ぶりの優勝を狙います。エースの津田選手に加え、WSBチャンピオン経験のある、S.ギュントーリ選手と、BSB参戦のJ.ブルックス選手です。マシンは新型のGSXR1000。津田選手が全日本で開発を進めていて、現在ランキングトップ!7月5,6日のメーカーテストで、2分7秒台に入れるトップタイムを出しました。
#03 MotoMapSUPPLY FutureAccessは昨年型の熟成されたマシンを使い、ライダーは昨年と同じ、今野、青木、J.ウォーターズの3人です。昨年終盤まで#7 YARTと4位争いをして5位となりました。我々の17インチタイヤの開発を長くやってくれているチームです。
#95 エスパルスドリームレーシングは、J-GP2で活躍している生形選手が作ったチームで、Jリーグの清水エスパルスとコラボしています。もう一人のライダーは、現在Moto2を走っているシュロッター選手。最初のテストでも、素晴らしい適応力を見せていました。
カワサキは#11 チームグリーンは、ファクトリー参戦3年目で、昨年の2位を上回る優勝を狙って来ます。今年エースライダーに抜擢されたのは、渡辺一馬選手。今年の全日本では、既に2回の表彰台を経験しました。そしてBSBから昨年に引き続きL.ハスラム選手が乗ります。昨年の8耐では激しいバトルを見せてくれ、全日本最終戦鈴鹿でも、素晴らしい走りを見せてくれました。3人目はアジア選手権から、SS600チャンピオンの経験もあるA.カマルザマン選手を抜擢しました。
異色のチームとしては、#87チーム阪神ライディングスクールが、カワサキ契約の柳川選手と、ルーキーの松崎選手を起用し、ベテラン西嶋選手と組んで、SSTクラス優勝を狙います。
BMWでは#39 Motorad スタンダードベースのマシンに、今年はドイツ本社のサポートも受け、ポテンシャルアップが期待できます。オーナー兼ライダーの酒井選手は、2009年にヨシムラスズキで優勝経験があります!今年はBMWの経験ある外人ライダー二人を迎えて表彰台を狙います。
3. 昨年の鈴鹿8耐を振り返って
昨年はヤマハファクトリーが8耐2連覇を果たしました。2位は唯一同一周回数となった、チームグリーン(Ka、BS装着)でした。昨年はレース中雨も振らず、セーフティーカー導入もなかったので、優勝チームは218周を走行し、現在のコースレイアウトになってからの最多周回数を記録しました。
レースは序盤から波乱が起きます。優勝候補の一角#5 F.C.C. TSRがトップグループ走行中に転倒!その後#21 ヤマハファクトリーがリードし、後続を少しずつ離して行きます。2時間を過ぎた時点では、#21 ヤマハファクトリー-#634 ハルクプロ-#12 ヨシムラ-#87 チームグリーンの順で、1-2位の差は1分以上に開きました。
3時間目に入ろうとした時、2位走行中の#634 ハルクプロのマシンがストップ!マシントラブルでリタイヤとなってしまいます。
代わって2位に上がったのは、#87 チームグリーンでしたが、その後#12 ヨシムラとの激しい2位争いが繰り広げられます。中盤から終盤に掛けてもタイム差は大きく広がらず、残り1時間の時には6秒の差!
その後#12 ヨシムラにややトラブルが発生し、遅れてしまいました。
終始トップをキープした#21 ヤマハファクトリーが、現在のコースでの最多となる218周を走り切り優勝。同一周回数で#87チームグリーンが2位。#12 ヨシムラが3位となって、ブリヂストンユーザーの表彰台独占という結果に終りました。
昨年は珍しく途中降雨や、セーフティーカー導入もなかった為に、現コースでの最多周回数となりました。
勿論上位は7回ピットの8スティント走行でしたが、優勝した#21 ヤマハファクトリーは、ピットイン、ピットアウトの周回を除く、全周回の平均ラップタイムは2分10秒28でした。勿論夜間の最終セッションは、2分11秒~12秒とかに落ちますから、特に前半は9秒コンスタントという感じです。
ちなみに2位の#87 チームグリーンは、同様のタイムが2分10秒90でした。3位のヨシムラは2分10秒91とかなり僅差でした。
昨年の予選トップタイムは2分6秒258でしたが、そのタイムからするとレースでの2分10秒はかなり遅いと思われるかもしれませんが、コース上に70台ものマシンがいて、遅いマシンを縫う様にして抜きながら走るのです!8耐ではバックマーカーを、いかにタイムを落とさずにしかもリスクを少なく上手く抜いて走れるかが大事なポイントです。一瞬のミスが命取りとなってしまうのです!
ですからマシンにしても、タイヤにしてもラインの自由度や、楽に乗れるマシンに仕上げる事も大事なのです。
今年はマシンのポテンシャルも上がっています。昨年の優勝218周の記録が破れるかも注目です。(勿論雨が降らない事と、セーフティーカーが入らない事が条件ですが。)
8耐公開テストも終了し、各チーム後はレースウィークを迎えるのみとなりました。
今年の8耐はどんなドラマが待っているのでしょうか?
またブリヂストンモータースポーツのHPでは、現地から速報をお届けしますので、下記をご覧ください。
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