みなさん、こんにちは!ブリヂストンの山田宏です。
今回は6/22-24に開催される、スロバキア8時間レースの見所についてお話をしましょう。
その前に、5/18-20に行われた、オシャースレーベン8時間レースを振り返ってみましょう。

1.オシャースレーベン8時間レースを振り返って


オシャースレーベン8時間レースの結果については、HPでレポートしているのでご存じの方も多いと思いますが、もう一度下記をご覧ください。
レポート:2016-2017 FIM EWC 世界耐久選手権 第3戦


予選では我々のサポートする#7 YART-YAMAHAが僅差で2位、#5 F.C.C. TSR Hondaが6位のグリッドからスタートしました。 #7 YARTは、スタートライダーのB.パークスがスタートで失敗するものの、すぐに挽回して、17周目にトップに立ち1時間を終了。一方の#5 TSRはスタート1周目こそ3位に上がったものの、8周目にスローダウンし、9周目に緊急ピットイン!原因不明のフロントタイヤのスローパンクチャーで、フロントタイヤを交換して再開。しかしこの間に30位へと大きく順位を落としてしまった。

#7 YARTは同じヤマハの#94 GMT94 YAMAHA(DL装着)と、トップを入れ替えながら争う。平均ラップタイムでわずかに上回る#94 GMT94は、#7 YARTより1回多い8回ピット作戦である事が判明。
#5 TSRは序盤のトラブルの後は、トップグループと遜色のないラップタイムで急追!3時間経過後にはトップ10へ、折り返しの4時間経過後には何と6位まで順位を挽回します。
一方トップ争いは相変わらず白熱し、#94 GMT94と#7 YARTがピットのタイミングで順位を入れ替えます。
残り2時間を切ったところで、#94 GMT94がピット作業中の違反でピットストップのペナルティを受け、3周後に再ピットイン!この間に#7 YARTがトップに立つものの、次のピットインで再びトップを奪われる。
残り25分で#94 GMT94が最後のピットインを行い、#7 YARTがその間に再び前に出られるかと期待されたのですが、前に出る事は出来ず、結局33秒差で2位となりました。
#5 TSRは終盤一時3位を走る場面もありましたが、結局4位とは6秒差で5位となりました。

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今回も#7 YARTと#94 GMT94は終始激しいデッドヒートを繰り広げました。


2. コースについて

スロバキアリンクのあるスロバキア共和国は、東ヨーロッパで西側にはチェコとオーストリア、北側はポーランド、南はハンガリー、東はウクライナに囲まれた国です。昔はチェコスロバキアと一つの国だったのですが、1993年に分かれました。チェコはMotoGPのチェコグランプリが行われているので、我々もよく行きましたがスロバキアには行った事もなく、あまり知られていないと思います。国土は約49,000平方キロメートルの広さで、日本でいうと九州全部と隣の山口県を足した位の大きさです。
第4戦が開催されるスロバキアリンクは、オーストリアとの国境近くにある、首都のブラチスラヴァの東側郊外にあり、ウィーンから約90kmです。このコースは2008年に着工して2009年にオープンしました。当初はカーメーカーのテストコースとして作られ、全長も今より短かったのですが、4輪の国際レースFIA GT選手権やWTCCの招致に伴い、現在の6km弱に延長されました。そして2011年に最初の国際格式レースFIA GT選手権が開催され、2輪では今年のEWCが初の国際格式レースです。

全長5.922km、右7、左7ヶ所のコーナーからなっている時計回りのコースで、ベストラップ(といっても国際格式のレース開催はありませんが)での1周の平均速度は174km/hと、これまでのルマン(156km/h)、オシャースレーベン(153km/h)と比べると、かなり高速コースと言えます。
メインストレートは長く、1コーナーの後もストレートで、2コーナーは高速、そして3コーナーまでもストレートで、3コーナー後はテクニカルなパートとなります。
12コーナーを抜け最終コーナーまではまたストレートがあり、13コーナーは180度以上回り込むヘアピン状のコーナーですが、スピードは高いのでフロントタイヤの右側に負担が掛かると思います。
路面の舗装については、表面の形状は鈴鹿に近い感じがあり、欧州の平均的な路面と比べると、かなりグリップは高いと思われます。

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3. 予選、決勝の見所

今回のエントリーには、我々がサポートする2チームは、前回オシャースレーベンのメンバーと同じです。#7 YART YAMAHAは、B.パークス、M.フリッツ、野左根 航汰でのエントリー。#5 F.C.C. TSR Hondaは、B.グレッグ、D.カドリン、J.フックスです。
エントリーは30チーム。レギュラー参戦19チームに加えて、スポット参戦が11チームです。

今回は第4戦という事で、このレースを終えると最終戦鈴鹿8耐を残すのみ。

タイトル争いも佳境に入って来たので、今回のレース結果は非常に重要といえます。
ちなみに第3戦終了後のランキングは下記となっています。

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現在3位のTEAM SRC KAWASAKIは、24時間レースのみの参戦で、タイトル争いからは外れるので、我々のライバルは、#1 Suzuki Endurance Racing Teamと#94 GMT94 YAMAHAの2チームに絞られました。

今回のレースは初開催サーキットの為に、タイヤの本数制限はありません。したがって予選では、ベストタイム向上を狙って、各ライダー2回の予選で新品タイヤを何セットでも使う事は可能です。しかし予選ポジションより、決勝で速いタイムを安定して刻めるセッティングとタイヤ選択が重要なので、レースに使うコンパウンドで、ある程度周回数をこなしたタイヤでのセッティングも必要です。この辺り予選ではどんなタイヤでベストタイムを出したのか?が、レースを占う意味で重要なのです。この辺りはラップ毎の走行記録を見ないと分からないのですが、その意味では予選結果は参考程度という所でしょう。

レースでは、やはり7回か8回のピットストップが上位入賞の条件になるでしょう。
コースの特徴から、燃費に厳しいか?もポイントとなります。高速コースなので燃費が悪い要素もあるのですが、その点も考慮してエンジンパワーをフルに発揮する仕様にしてラップタイムを稼ぎ、8回ピットが良い可能性もあります。今回はタイヤ本数規制がないので、9スティントにしても毎回新品が使えるので、その点も8回ピットが有利な点です。ピットイン-アウトに掛かる時間と、平均ラップタイムの差で、ピット回数を決めるものと思われます。
鈴鹿8耐同様に、1スティントを1セットのタイヤで約1時間走るのですが、このコースのタイヤに対するシビアさが、まだデータとしてはありません。コースの特徴で書いたように、このコースの平均速度は高く、高速サーキットなのでタイヤに厳しい事も予想されます。
この辺りをフリープラクティスと、予選でタイヤの選択をするのですが、グリップダウンの少ないハード目を選ぶのか、走行前半でタイムの出るソフト目を選ぶのか等、タイヤの性能と選択が重要となるでしょう。

今回の結果がタイトル争いには重要となるので、どのライダーも転倒は避けなければなりません。全長5.9kmと長いコースで30台の走行なので、コースの混雑度はほかよりも少ないのですが、パッシングには注意が必要です。
又平均速度が高い事より、エンジンやその他パーツへの負担も大きくなる可能性もあり、マシントラブルを出さないようにする必要があります。

8時間耐久レースでは、1位:30点、2位:24点、3位21点、4位19点、5位17点、6位:15点で、以下1点ずつ少なくなり20位までにポイントが与えられます。
我々のサポートする#5 F.C.C. TSR Honda と#7 YART-YAMAHAには、取りこぼしがなく上位とのポイント差を詰めて欲しいですね!

4. タイヤ

スロバキアリンクでは、5月にYARTがテストに行ったので、タイヤもテストしました。気温20~27℃、路面温度23~43℃とまずまずの条件でテストが行え、我々もある程度最適スペックの判断が出来ました。
上記コースについてにも書きましたが、右側の発熱が高く、摩耗にも厳しいので、この2戦よりハード目のコンパウンドを準備します。
また気温が高くなる事も予想されるので、コンパウンドはハード側も多く持って行きます。
準備するタイヤ本数は、前回同様ウェットも含め合計約370本のタイヤを搬入します。
今週末の天気予報は、予選が始まる木曜日から晴れ/曇りで雨の心配は無さそうです。気温は最低が18~19℃、最高は31~33℃とかなり暑くなりそうです。

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5. タイムスケジュール

今回は新サーキットなので、火曜日と水曜日に練習走行があります。火曜日は9:00から18:00の間の8時間。水曜日は午前中に4時間と十分な走行時間があります。
公式スケジュールは、今回も土曜日が決勝レースとなりますので、6/22木曜日の午前中に2時間のフリープラクティス、午後と6/23金曜日の午前中に20分間の予選が1回ずつあり、決勝は6/24土曜日14時にスタートして、22時にゴールです。日本との時差は7時間なので、日本時間では5/21の明け方5時ゴールです。

今週のレースも、テレビ放送では見られないのですが、FIM EWC公式ホームページでライブタイミング(順位とラップタイムが分かります)は見られますのでチェックして下さい。
http://www.fimewc.com/live-timing/

またブリヂストンモータースポーツのHPでは、現地から速報をお届けしますので、下記をご覧ください。
速報はこちら

今週末も、ブリヂストンタイヤ装着チームの活躍に期待し、応援よろしくお願いします。