みなさん、こんにちは!ブリヂストンの山田宏です。
今回は5/9-11に開催される、スロバキア8時間レースの見所についてお話をしましょう。
その前に、先月4/19-21に行われた、ルマン24時間レースを振り返ってみましょう。
1.ルマン24時間レースを振り返って
ルマン24時間は、昨年F.C.C.TSR Honda Franceが3年目の挑戦で見事に海外EWC初優勝、日本チームとしても初の優勝という快挙を飾ったのです!
昨年は、このルマン24時間に始まり、スロバキア8時間、オーシャスレーベン8時間、鈴鹿8耐、今シーズン開幕戦のボルドール24時間と、5レース全てを我々のサポートチームが優勝してくれました!
昨年の好結果からすると、先月のルマン24時間は本当に残念な結果となってしまいました。
結果については、HPでレポートしているのでご存じの方も多いと思いますが、もう一度下記をご覧ください。
第2戦:ルマン24時間レースレポートはこちら
予選では我々のサポートする#7 YART-YAMAHA(以下#7 YART)が僅差で2位、#1 F.C.C. TSR Honda France(以下#1 TSR)が7位のグリッドを得ました。
予選の気温/路面温度は、1回目の木曜午後が25℃/37℃、2回目の金曜午前が17~22℃/19~34℃というコンディションでした。予選から#1 TSRは決勝を見据えた取り組みをし、無理なアタックはしない状況での7位でした。予選のポジション自体は、TSRの取り組みからして気にはならなかったのですが、予選までに4回転倒したというのが、やや気になっていました。一方の#7 YARTは、予選1回目に2位、2回目は3人の平均タイムを0.7秒も上げながら、ポジションは変わらず2位を獲得しました。
決勝日も天気は良く、スタート時には気温25℃、路面温度45℃というコンディションでスタートしました。
スタートライダーは、#7 YARTがN.カネパ、#1 TSRはM.ディメリオで24時間がスタートしました。YARTがスタートやや出遅れ、YART-TSRが6-7番手辺りとなりましたが、1周目の3コーナーで転倒があり、いきなりセーフティーカーが入る波乱のスタートとなりました。
レース再開後は、3位まで順位を上げたTSRが、スタートから40分後に3コーナーでまさかの転倒!再スタートしてピットに戻るものの、マシンにはかなりのダメージで修復に17分掛かり、再スタートした時にはほぼ最後尾57位までポジションを落としました。
スタートから1時間過ぎ、全チームが最初のピットインを終えた後の順位は1位#111 Honda Endurance Racing(Ho,DL) で、#7 YARTは3位、#1 TSRは57位でした。
その後#7 YARTは2位を走行中、スタートから2時間30分を過ぎたところで、M.フリッツが転倒!すぐに再スタートして走行を続け、マシンのダメージも無いように見え3位をキープした。
4位をキープしていた#7 YARTだったが、スタートから10時間30分が過ぎたところで、突然エンジンがストップしてしまい、ピットまでマシンを押して戻って修理を始めるが、エンジンの修復は不可能との判断で、リタイヤ届けを出す事となった。
一方の#1 TSRは、順調にポジションアップし、11時間経過後には12位まで上がってきた。
レース経過順位のポイントが付く16時間経過後は、#1 TSRは8位まで上がり、3点を獲得した。
その後も順調に走行を続けていた#1 TSRであったが、残り7時間で6位まで上がった所で、F.フォレイがバックマーカーと接触し転倒!エンジンからオイルが漏れ、ピットまでマシンが運ばれて修復を試みる。マシンの修復には1時間半ほど掛かってしまい、再スタートをしたものの、順位は35位まで落ちてしまった。
その後#1 TSRは31位までポジションを上げたが、終盤再びトラブルがあり結局36位でゴール。
注目のトップ争いは、トップ#111 Honda Endurance Racingと#11 SRC KAWASAKI(Ka,PI)が同一周回で激しいトップ争いをしていたが、残り17分という所でセーフティーカーが入り、1-2位の差は縮まった。残り8分でセーフティーカー解除となると、#11 SRC KAWASAKIがトップに立ち見事に逆転優勝を飾りました。
#1 F.C.C. TSR Honda Franceは序盤に転倒し、ほぼ最後尾からの追い上げから6位まで挽回したものの、終盤再び転倒し36位に終わった。
2.コースについて
スロバキアリンクのあるスロバキア共和国は、東ヨーロッパで西側にはチェコとオーストリア、北側はポーランド、南はハンガリー、東はウクライナに囲まれた国です。昔はチェコスロバキアと一つの国だったのですが、1993年に分かれました。チェコはMotoGPのチェコグランプリが行われているので、我々もよく行きましたがスロバキアには一昨年まで行った事もなく、あまり知られていないと思います。国土は約49,000平方キロメートルの広さで、日本でいうと九州全部と隣の山口県を足した位の大きさです。
第3戦が開催されるスロバキアリンクは、オーストリアとの国境近くにある、首都のブラチスラヴァの東側郊外にあり、ウィーンから約90kmです。このコースは2008年に着工して2009年にオープンしました。当初はカーメーカーのテストコースとして作られ、全長も今より短かったのですが、4輪の国際レースFIA GT選手権やWTCCの招致に伴い、現在の6km弱に延長されました。そして2011年に最初の国際格式レースFIA GT選手権が開催され、2輪では2017年のEWCが初の国際格式レースで、今年がEWC3回目の開催です。
全長5.922km、右7、左7ヶ所のコーナーからなっている時計回りのコースで、昨年レースでのベストラップ(2'04.185)での1周の平均速度は172km/hと、これまでのルマン(156km/h)、オシャースレーベン(153km/h)と比べると、かなり高速コースと言えます。
メインストレートは長く、1コーナーの後もストレートで、2コーナーは高速、そして3コーナーまでもストレートで、3コーナー後はテクニカルなパートとなります。
12コーナーを抜け最終コーナーまではまたストレートがあり、13コーナーは180度以上回り込むヘアピン状のコーナーですが、スピードは高いのでフロントタイヤの右側に負担が掛かります。
路面の舗装については、表面の形状は鈴鹿に近い感じがあり、欧州の平均的な路面と比べると、グリップは高くタイヤへの負担は大きいです。
3.タイムスケジュール
今回のエントリーは、32チーム。今年のこのレースでの変化と言えば、4輪のツーリングカーの世界選手権(WTCR)が併催されるという点です。その為タイムスケジュールも若干変わっています。
まず火曜日に1日(10時間)テスト走行が行われ、木曜日の朝2時間のフリープラクティスの後、13:00から18:40までの時間で、予選2回を行ってしまいます。そして金曜日は丸一日WTCRの練習走行、予選が行われ、EWCの走行はありません。(今回は日没前の20時ゴールの為、ナイトプラクティスも無し)
土曜日の朝45分のウォームアップ走行があり、12:00スタート、20:00ゴールです。
日本との時差は7時間なので、日本時間は土曜日19:00スタート、日曜日に日付が変わった深夜3時ゴールです。
4.予選、決勝の見所
今回は4輪のWTCRと併催という事で、路面コンディションがどうなるか分かりません。通常日本で2&4レース開催時は、4輪のタイヤのゴムが路面に付くために、2輪にとってはグリップが下がるという結果になっています。但し今回は我々も経験の無い路面と 4輪のタイヤの組み合わせで、どの程度の変化となるか分かりません。予選前にはWTCRの走行は無いので、予選時には特に問題は無いでしょう。予選後の金曜日には、WTCRの走行が一日中あるので、決勝の土曜日に、どの様な路面状況になっているか、土曜日の朝のウォームアップで確認するしかありません。
予選は今回通常と違い、木曜日の午後に1日で行ってしまいます。1回目開始が13:00で2回目開始が17:20という事で、昨年までの経験では、路面温度のピークは14~15時なので、予選2回目のコンディションが良くなる事が予想されます。
予選では使えるタイヤの本数は6本なので、3人のライダーでどう使うかがポイントとなるでしょう。
決勝で使えるタイヤは16本です。又昨年のレースでは、このコースは燃費に厳しい事もあり、ピット回数は上位3チームが8回か9回で、7回ピットが定石の鈴鹿8耐より多くのピット回数となりました。昨年優勝の#7 YARTと3位だった#1 TSRは8回ピットでした。という事は、8回ピットの場合9スティントですから、毎回新品のタイヤを使う事はできません。レースでのタイヤの使い方も戦略上かなり重要になります。
ルマンでもそうであったように、通常フロントを2スティント通して、リアは出来るだけ新品を使う事になると思います。その場合フロント7本リア9本で、フロント2本を2スティント使う事になります。
但しこのコースはタイヤに厳しく、路面温度も昨年は50℃近くまで上がりました。更に今年はWTCRの走行の後にレースが行われるので、路面コンディションが読みづらく、タイヤスペックの選定と使い方も難しくなるでしょう。
昨年のレースでは、1-3位と好結果だったし、タイヤも耐久性に関して、我々のタイヤはライバルより多少有利にあったと思います。
昨年のレースでは、#1 TSRがポールポジション、#7 YARTが予選2位からスタートして、序盤は#7 YART―の#1 TSRが1-2体制を築きます。中盤から#94 GMT94(Ya,DL)が2位に浮上。終盤#7 YARTとトップ争いをして、トップに立つ場面もあったが、ピット回数が1回多かった為#7 YARTが優勝、#1 TSRが3位となった。
このコースと社品の相性は良いと思うので、今年もダブル表彰台を期待しましょう!
下表は第2戦終了後、現在のポイントランキングです。
順位 | チーム | マシン | ポイント | タイヤ | |
---|---|---|---|---|---|
1 | #11 TEAM SRC KAWASAKI FRANCE | Ka | ZX-10R | 102 | PI |
2 | #2 Suzuki Endurance RT. | Su | GSX-R1000 | 86 | DL |
3 | #13 WEPOL Racing | Ya | YZF-R1 | 80 | DL |
4 | #8 Bolliger Team Switerland | Ka | ZX-10R | 68 | PI |
5 | #111 Honda Endurance Racing | Ho | CBR1000 | 60 | DL |
6 | #1 F.C.C. TSR Honda France | Ho | CBR1000 | 54 | BS |
7 | #7 YART-YAMAHA | Ya | YZF-R1 | 52 | BS |
8時間耐久レースでは、1位:30点、2位:24点、3位21点、4位19点、5位17点、6位:15点で、以下1点ずつ少なくなり20位までにポイントが与えられます。
5.タイヤ
上記にも書きましたがスロバキアリンクはタイヤにシビアです。タイヤの発熱についても特に右側の発熱が高くなります。気温も上がる事も予想されるので、先月のルマンよりハード目のコンパウンドを準備します。
しかし前にも書きましたが、4輪WTCRの走行により、路面に4輪のラバーが乗るとグリップが変化する事も予想され、タイヤのスペックも変わる事も考えられます。
今回準備するタイヤは、ウェットも含め合計約650本のタイヤを搬入します。前回の結果から、更に通常より多いタイヤを準備して万全を喫しています!
今週末の天気予報は、予選が始まる木曜日は天気が不安定で、降水確率90%!気温は最低8℃最高14℃とかなり寒いようです!レースの行われる土曜日は、降水確率50%、気温は最低が9℃、最高は22℃と、朝晩は涼しく、昼はまずまず暑くなりそうです。
今週のレースは、日テレG+での生放送は無く、後日のダイジェスト放送になる模様です。FIM EWC公式ホームページでライブタイミング(順位とラップタイムが分かります)は見られますのでチェックして下さい。
EWC(公式サイト)
ままたブリヂストンモータースポーツのHPでは、現地から速報をお届けしますので、下記をご覧ください。
EWC/鈴鹿8時間耐久ロードレース 速報
今週末も、ブリヂストンタイヤ装着チームの活躍に期待し、応援よろしくお願いします。