みなさん、こんにちは!ブリヂストンの山田宏です。

鈴鹿8耐の興奮も冷めやらぬうちに(?)、EWCは2018-2019年シーズンが始まります。最終戦の鈴鹿8耐が終わって、1か月半で新シーズンが始まるというのは、チームや関係者にとってはかなり忙しいものとなります。更に8月28-29日には、ボルドール24時間の行われる、ポールリカールサーキットで合同テストが行われました。
全日本選手権や他のレースでは、「今シーズン終盤に入り、タイトル争いも白熱!」とか言っているのですが、EWCは「今シーズンも開幕!どんなシーズンになるか!?」なんていうので、EWCはこの区切りになって3シーズン目なのですが、まだちょっと違和感がありますね。

1.昨シーズン全体と、鈴鹿8時間レースを振り返って


昨シーズンは、何と言っても我々のサポートチームがEWCチャンピオン獲得したというのが大きかったです!初めてというのは何でも感激がありますね!勿論鈴鹿8耐13連覇という大記録更新も大きかったです。表彰台独占も7回目と、最高の成績で鈴鹿8耐と2017-2018年EWCシリーズが幕を閉じました。
我々にとって最高のシーズンとなりましたが、昨シーズンをざっと振り返ってみましょう。

昨シーズンの開幕戦は、今年と同じくボルドール24時間レースで、9月17-18日で行われました。このレースでは、予選で我々のサポートするYART-YAMAHAが2位、F.C.C. TSR Honda Franceが3位と好位置からのスタートとなりました。しかしYARTは2位を走行中2時間目に、野左根に代わったところで、マシントラブルで転倒!ピットに戻り修復し、復帰するもののその後再びマシントラブルでリタイアとなりました。F.C.C.TSR Honda Franceは残り3時間半までトップ争いをしていたものの、転倒により順位を落として6位でゴールしました。
第1戦:ボルドールレースレポートはこちら

第2戦は今年の4月に、ルマン24時間が行われました。予選ではYART-YAMAHAが2位、F.C.C.TSR Honda Franceが6位で予選を終了し、決勝日の朝にYART-YAMAHAがライダー交代をした事により、YART-YAMAHAがポールポジションに繰り上がり、好位置からのスタートとなりました。
序盤トップ争いをしていたYART-YAMAHAが、4時間半を経過した時点で、トップに立ったのですが、その後に転倒を喫し惜しくもリタイアとなりました。F.C.C.TSR Honda Franceは、確実な走りで序盤から2位に付け、レースが終盤を迎え、残り6時間となったところでトップに浮上!そのままリードを守り切り、見事にルマン初優勝を遂げました!F.C.C.TSR Honda Franceは、2戦を終えてランキングトップに浮上した。
第2戦:ルマンレースレポートはこちら

第3戦のスロバキア8時間でも、予選から我々サポートの2チームは好調。予選ではF.C.C.TSR Honda FranceとYART-YAMAHAが1-2位を獲得!レースも序盤はこの2チームが1-2体制を築き、終盤まで3チームのトップ争いが白熱する。最後はYART-YAMAHAがGMT94(DL)とのデッドヒートとなるが、YART-YAMAHAが30秒差でGMT94を抑え、ブリヂストンタイヤでの初優勝を飾った。F.C.C.TSR Honda Franceも2チームに次ぎ3位でゴール。ブリヂストンサポートチームが初のダブル表彰台となった。
第3戦:スロバキアレースレポートはこちら

第4戦はドイツオシャースレーベン8時間。このレースでは、予選2回目をYART-YAMAHAとF.C.C.TSR Honda Franceが、レースタイヤ温存の為にタイムアタックをせずに、予選はF.C.C.TSR Honda Franceが2位、YART-YAMAHAが7位からスタート。レースは序盤から2度セーフティーカーが出る波乱の展開となったが、F.C.C.TSR Honda Franceはピットタイミングを遅らせる作戦に転じ、中盤からトップに浮上。YART-YAMAHAが2位でブリヂストンサポートチームが1-2体制を築いたが、残り3時間となったところで、YART-YAMAHAがマシントラブルから転倒!ピットに戻るものの、残念ながらリタイアとなった。一方F.C.C.TSR Honda Franceはライバルより1回少ないピットインで順調にトップをキープし、見事シーズン2勝目を挙げ、2位とのポイント差を10に広げ、ランキングトップをキープし、最終戦の鈴鹿へと臨んだ。
第4戦:オシャースレーベンレースレポートはこちら

最終戦鈴鹿8耐は、予選ではスーパーバイクチャンピオンのJ.レイを招聘した、Kawasaki Team GREENがポールポジション。4連覇を狙うヤマハファクトリーは2位となるものの、エース中須賀がフリー走行での転倒でけがを負い、不安要素を抱えてのスタートとなり、3位には復活したホンダワークスのRed Bull Honda with日本郵便が入りました。スタート前に激しい雨が降り、途中でも再び雨とセーフティーカー導入で、波乱のレースとなりましたが、上位3チームによる激しいバトルが続きましたが、ヤマハファクトリーが2位Red Bull Hondaに30秒の差をつけて見事に4連覇を達成。3位にKawasaki Team GREENが入りました。
注目のEWCタイトル争いは、ポイントリーダーのF.C.C.TSR Honda Franceは、予選12位から確実なレース運びで、ランキング2位のGMT94を常にリードし、5位でチェッカーを受け見事にEWCチャンピオンとなりました! 今年の鈴鹿は我々にとって、EWC初タイトル獲得、13連覇達成、7度目の表彰台独占と最高の結果となりました!
第5戦:鈴鹿8耐レースレポートはこちら

2.今シーズンのスケジュール、参戦チーム


今シーズンのスケジュールが、8月末に発表されました。基本的には先シーズンと同じ開催地で、全5戦も変わりません。

2018/2019年シーズンのスケジュール(レース日)
Rd.1 ボルドール 24時間  2018.9.15-16
Rd.2 ルマン 24時間  2019.4.20-21
Rd.3 スロバキア 8時間 2018.5.11
Rd.4 オシャースレーベン8時間 2018.6.8
Rd.5 鈴鹿 8時間 2018.7.28

今週のボルドール24時間には、59チームがエントリーしています。内訳はEWC:25チーム、SST:33チーム、EXP:1チームです。昨年に比べSSTクラスが増えました。
今シーズンはフル参戦の契約をしているチームが、42チームと昨年の33チームから更に増えました。(内訳はEWCクラスが18チーム、SSTクラスが24チームです。)
ブリヂストンサポートチームは、昨年同様F.C.C.TSR Honda FranceとYART-YAMAHAの2チームは変わりません。F.C.C.TSR Honda Franceは、チャンピオンゼッケン#1を付けて走ります!YART-YAMAHAは昨年と同じ#7です。この2チームもライダーのラインアップが若干変わります。F.C.C.TSR Honda Franceは昨シーズンのF.フォレイとJ.フックは変わりませんが、新たにGMT94から移籍したM.デメリオが加入。YART-YAMAHAもB.パークスとM.フリッツは昨シーズン同様ですが、やはりGMT94から移籍した、N.カネパが入りました。ちなみに一昨年のチャンピオンチームGMT94は、EWC活動を止めWSBへ参戦するようです。昨シーズンのもう一人のライダー、D.チェカはTEAM SRC KAWASAKI FRANCEに移籍しました。このチームは、R.デュプニエが継続するので、強力なライバルとなるでしょう。
ブリヂストンヨーロッパがサポートする、昨シーズンランキング5位となったMERCURY RACINGも、引き続きブリヂストンの市販タイヤV02で参戦します。今年もその他数チームがV02を履いてくれる予定です。

3.今シーズンのレギュレーションに関して


今シーズンも若干のレギュレーション変更があります。タイヤの使用本数制限の規則も変わりました。
昨シーズンまでは、予選と決勝で使えるタイヤの本数が、8時間=20本、24時間=45本となっていました。
今シーズンは、予選と決勝で別々に使用本数制限が決められました。
予選に関しては、レース時間に関わらず1チーム6本の使用が可能です。(但し2人のチームは4本)
そしてレースでの使用本数は、8時間=16本、24時間=41本となりました。
これは、予選と決勝を分けることにより、予選でタイヤを温存し決勝に回す事が出来なくなり、予選でのタイムアタックを控えるのを避ける為と思われます。8耐では8スティントが主力なので、全スティントで新品タイヤが使えるので、チームにとってはやり易くなるでしょう。24時間耐久では、昨年ボルドールでは、26回ピットが最低だったので、27スティントを41本のタイヤで走るので、引き続きかなりのタイヤを2回走行使用しなくてはなりません。但し今回のボルドールは、コース変更と全面舗装改修があったので、タイヤ使用本数制限は適用されません。
そしてポイント制度も若干変わっています。今までは無かった予選結果に対し、上位5チームにチームポイントが与えられます。1位:5点、2位:4点、3位:3点、4位:2点、5位:1点です。これで予選でも少しでも上位を目指す事になるでしょう。
他にも若干の規則変更がありますが、ここでは省略させていただきます。

4.ポールリカールサーキットについて


このポールリカールサーキットは、南フランスに位置し、マルセイユの東約40km、地中海から15kmほど北に入った山の中にあります。コースは1970年に完成し、1971年から1990年までF1のフランスGPが開催されました。又1973年にオートバイの世界グランプリが開催され、1999年まで続いきました。(この時は現在のストレートエンドから、バックストレートに入るショートコースを使用。)1980年には、オートバイのボルドール24時間耐久レースが開催され、1999年にオーナーが変わり2001年にはトヨタと提携し、2002年にハイテク・テストトラックとして生まれ変わりました。
コースレイアウトを色々変える事が出来、全長826mから5861mまで実に167種類のコースレイアウトが取れるという。またコースへの散水設備があり、ウェット路面でのテストも可能。我々も2004年あたりに、MotoGPのウェットタイヤ開発テストを行ったこともあります。
2009年に一般にオープンとなり、2015年にEWCのボルドール24時間耐久レースとして復活しました。
EWCで使うコースは全長5.791kmで、ストレートが1.8kmあります。MotoGP開催コースも含めて、最もストレートが長いコースです。今年初めにコースの一部が変わり、全長も5.673kmへと118m短くなりました。
右8、左5のコーナー数は一緒ですが、具体的には12コーナーが大きく手前に来てRが大きくなり、又下図の4か所のコーナーで、コース幅が広くなりました。同時に路面も全面改修されました。改修後にF1も開催されているのですが、改修された路面はかなり荒い舗装となっています。しかしすでにコーナーの多くの箇所に、補修のためのパッチが貼られており、そのパッチの表面はスムースで、滑り易いようです。
8月末に行われた合同テストでは、EWCのレコードタイム1'57.253(2015年予選時。平均速度は177.8km/h)を大きく上回る1'55.03というタイムを、YART-YAMAHAが出しました。このコースは高速サーキットで、レース中の最高速度は、昨年340km/hを記録しています!ちなみにレース中の最高速度は鈴鹿でも通常は290km/h程度なので、その速さがわかるでしょう。
またベストラップでの平均速度を比べると、ポールリカールの次に速いのがスロバキアリンクで171.7km/h、以下鈴鹿166.3km/h、ルマン157.4km/h、オシャースレーベン153.2km/hとなります。
下図はコースの改修された場所です。

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上記4か所のコーナーのコース幅が広くなり、12コーナーが赤線のライン使用となりました。

5.予選、決勝の見所


タイムスケジュールは昨年と同様で、木曜日の午前中に2時間のプラクティスがあり、午後15:40から各ライダー20分ずつの予選1回目が行われます。そして20:30から1時間のナイトプラクティスがあります。
金曜日は9:40から予選2回目が各ライダー20分ずつ行われ、グリッドが決定します。24時間レースでは、3名のライダーに、1名のリザーブライダーの登録が認められており、予選はこのリザーブライダーも含め4組の予選が行われます。ライダーは色分けされた腕章を付け、青-黄-赤-緑(リザーブ)の順で行われます。
今回は、昨年から路面改修が行われているので、タイヤ使用本数制限が適用されません。予選でも各ライダー各予選でタイヤを交換しながら2回はタイムアタックをするでしょう。

レースに関しても、今年はタイヤ使用本数規制が適用されないので、上位チームはピットイン毎にタイヤ交換を行う事になるでしょう。その為タイヤ本数規制が適用された昨年と比べ、レースでの平均ラップタイムは上がると思われます。このコースは最高速が速いのと、平均速度も高い高速コースなので、エンジン(マシン)にも厳しく、24時間ノートラブルで走り切る事と、26-28回行われる通常のピット作業の速さと確実さ、そして何よりライダーは転倒リスクを抑えてマージンを持ち、かつ速さと体力を維持出来るかが、上位入賞のポイントです!1スティント25~27周すると思われるので、1周で0.5秒の差があると1スティントで10秒以上の差が付いてしまいます。またこのコースでの夜間照明は、鈴鹿やルマンと比べて暗いという話です。深夜~明け方でも、優勝チームは、ラップタイムの低下は1秒程度です!疲労も溜り、暗い深夜でも遅いマシンをスムースに抜きながら安全に走れるかも大きいと思います。
又昨年もそうでしたが、セーフティーカー導入時や、雨が降って来た時のピットインのタイミング等が勝敗を分ける可能性もあります。
我々タイヤサポート側としては、各スティントでタイヤを替えるにしても、昼夜での気温/路面温度の変化と、路面状況も刻々と変化して行くなか、状況やライダーのコメントを聞きながら、常に最適なスペックを供給できるかが重要です。又雨が降ってきた時、そこから路面が乾いてきた時等のデータはまだまだ不足しているので、そのような状況になった時もチームに的確なアドバイスが出来るかが問われます。

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昨年のスタートシーン。#5F.C.C. TSR Honda Franceと#7YART-YAMAHAは好スタートを切りました。

6.タイヤ


ポールリカールでは、8月末に2日間の合同テストが行われました。路面の全面改修、コースレイアウトの変更により、レースに向けての良いテストとなりました。2日間天気は良く、我々のサポートするYART、TSRも参加して、タイム的にはYARTがトップタイム、TSRが5位で終了しました。この時は勿論昼間だけのテストで、気温は23~27°C、路面温度は32~51°Cと良いコンディションでのテストでした。昨年のレースでは、最高がスタート時で気温22°C、路面温度34°Cで、夜中は気温、路面共に10°Cと、かなり寒くなる状況でした。今回のテスト結果で、新舗装によってタイヤの摩耗肌がかなり悪く荒れる事が確認されました。新舗装によくある現象で、通常時間が経つと良くなるのですが、このコースは2月に改修しているので時間は十分経っているので、レースウィークに入って変化するのかどうかは分かりません。
しかし摩耗肌が悪くなると、当然グリップも低下するので、当初の予定と違うスペックも用意します。通常ハードコンパウンドにすれば摩耗肌は良くなるのですが、明け方の気温10°Cと寒い中でもウォームアップ性を確保しなければならず、相反するところが多く難しいです。
ドライ用約350本、ウェット用約150本の合計約700本のタイヤを搬入します。
週末の天気予報は、今の所それほど悪くなさそうです。予選1回目の木曜日は、雨/雷雨となっていて悪いのですが、金曜日から3日間は曇り/晴れという感じで、気温は最低16°C、最高27°Cという所です。朝晩は寒そうですが、昨年は最低気温10°Cだったので、昨年よりは気温は良さそうです。天気予報も見るサイトによって違うし、あまりあてにならないので、レース中は雨が降らないで欲しいですね!

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7.タイムスケジュール


今年も火曜日に練習走行があります。そして公式スケジュールは木曜日の午前9:30から2時間のフリー走行。午後15:40から予選1回目があり、20:30からナイトプラクティスが1時間あります。
金曜日は、9:40から予選2回目が行われ、午後はほかのサポートレースのスケジュールとなります。
土曜日の15:00が決勝レーススタートとなりますが、11:30から45分間のウォームアップ走行があります。
そしてゴールは日曜日の15:00です。日本との時差は7時間なので、日本時間では9/15(土)の22時スタート、9/16(日)の22時ゴールです。
今シーズンから、日テレが契約して、いよいよEWCがTVで見られるようになります!MotoGPと同じく日テレG+でも放映されます。
日テレG+では、10/7(日)の19:30から1時間、ボルドールのハイライト。その前18:30から19:30までは今年の鈴鹿8耐のハイライトを放映するようです。その後10/12、10/15、10/31にも再放送があります。
日テレジータス(公式サイト)

また日テレ系の動画配信サービスHulu(フールー)では、ライブで見られるようです!有料ですが2週間のお試し期間は無料なので、お試しに今週のボルドール24時間を見て下さい!英語解説のみという事ですが、土曜日スタート前の現地14:30(日本時間21:30)から、日曜日のゴール後現地15:30(日本時間22:30)までライブ放映という事です。HuruのHPでは、現在情報がありませんが、9/12か13日にリリースを出して、立ち上げるとの事です。Huruでは2018-19年EWC全戦でライブ放映する予定です。ちなみにHuruではMotoGPもライブで見られます。下記HPに9/13には情報が載るはずです。
Hulu(公式サイト)

今週のレースも、FIM EWC公式ホームページでライブタイミング(順位とラップタイムが分かります)は見られますのでチェックして下さい。
EWC(公式サイト)

またブリヂストンモータースポーツのHPでは、現地から速報をお届けしますので、下記をご覧ください。
EWC/鈴鹿8時間耐久ロードレース 速報

今週末も、ブリヂストンタイヤ装着チームの活躍に期待し、応援よろしくお願いします。